2輪ロードレースチラシの裏

2輪ロードレース(MotoGP、WSBK、EWC等)についてちょっとマニアックなことを…

2輪ロードレースチラシの裏

2輪ロードレース(MotoGP、WSBK、EWC等)についてちょっとマニアックなことを書いていこうと思います。 偉そうなことを書いていますが何分素人なので至らぬ点はご容赦ください。間違いがあればご指摘いただけると幸いです。

最近の記事

WSBKドニントンラウンド

 WSBKドニントン大会が終了しました。またしてもトプラク・ラズガットリオグルが3レース全てを制し、アッセンレース2以来これで7連勝です。特にレース1ではラズガットリオグルが2位のアレックス・ロウズに11秒もの大差を付ける独走劇でした。これに危機感を覚えたのか、ドゥカティはレース1の後FIMに対しBMWが使用している座面を低くしたシートがレギュレーションに抵触しないのか説明を求めたそうです。これはレギュレーション上のいわばグレーゾーンで違反とは言えないものなのですが、これを受

    • 2024鈴鹿8耐プレビュー

       鈴鹿8時間耐久ロードレースが目前に迫ってきましたので、遅ればせながら6月19日、20日の2日間で行われた鈴鹿8耐の事前テストを中心に鈴鹿8耐のプレビューを行いたいと思います。  今年の鈴鹿8耐はWSBKのモスト大会と日程が被っているため、WSBKライダーは参加できませんが、MotoGPとは日程が被っておらず、久々に現役のGPライダーが参加します。ホンダのワークスチームであるHRCにLCRホンダのヨハン・ザルコが、オートレース宇部レーシングチームにMoto2のバリー・バルタス

      • WSBK 不合理で不可解なホンダの選択

         2020年の開幕戦でマルク・マルケスが怪我で長期欠場してからというものホンダはMotoGPでずっと低迷を続けていますが、WSBKでの低迷はそれ以前から続いています。ホンダがWSBKで最後に勝利したのは2016年第6戦セパンサーキット雨のレース2、故ニッキー・ヘイデンが最後でした。今年2024年が未勝利に終われば丸8年間未勝利で、これはWSBKの歴史上ワースト記録です。ドライコンディションでの勝利は2014年の第8戦ポルティマオ、レース2のジョナサン・レイにまで遡り、実に10

        • WSBKの不確実な未来

           ミサノのレースウィークの金曜にMSMA(Motorcycle Sport Manufacturers Association、モーターサイクルスポーツ製造者協会)の会合が開かれており、その会合において2027年からWSBKとEWCを統合、年10戦をスプリント、3戦を耐久レースの複合選手権にするというアイデアが出たそうです。これだけ聞くと実に突拍子もない話なのですが、実は現在ドルナスポーツが主催しているWSBKを、EWCを主催しているディスカバリースポーツに売却する話がかなり

        WSBKドニントンラウンド

          WSBKミサノラウンド

           WSBK2024年の第4戦、ミサノ・サーキット・マルコ・シモンチェリが終了しました。BMWのトプラク・ラズガットリオグルが3つのレース全てを勝利、ハットトリックを決めてランキングトップを奪うどころかライバル勢を更に突き放すというまさかの結末でした。  5月末に同じミサノで行われた事前テストではラズガットリオグルが一番時計を叩き出していたのでこうなる可能性は十分にあったとも言えるのですが、近年ミサノではドゥカティとアルバロ・バウティスタの強さが際立っており、レースウィーク中

          スズキCNチャレンジとEWCエクスペリメンタルクラス

           2024年3月22日、スズキが「スズキCNチャレンジ」と題して鈴鹿8時間耐久ロードレース(以下、鈴鹿8耐)に参戦することが発表されました。参戦クラスはエクスペリメンタルクラスで燃料にサステナブル燃料を、車体やタイヤに再生素材を使用するということです。「CN」は”Carbon Neutral”の略のようです。  今回は、EWCエクスペリメンタルクラスのレギュレーションからこのスズキCNチャレンジの車両がどのような車両なのか考察したいと思います。 レース活動存続へ起死回生の奇

          スズキCNチャレンジとEWCエクスペリメンタルクラス

          MotoGPが電動化される日は来るのか?

           近年世の中は脱炭素が声高に叫ばれ、各国政府も企業も自動車のEV化を進めており、2030年代に新車販売を全面的にEVへ移行するのを目標に掲げている国やメーカーもあります(最近になって若干トーンダウンしているようですが)。モータースポーツでも4輪はフォーミュラE、2輪にはMotoEというカテゴリーが新設され、MotoEは今年で6年目を迎えています。これは将来の脱炭素に向けた可能性を探る目的もあると思いますが、MotoGPの各クラスが電動車両に置き換わる日は来るのでしょうか?今回

          MotoGPが電動化される日は来るのか?

          2027年からのMotoGP新レギュレーション

           去る6月5日、FIMより2027年から施行されるMotoGPクラスの新レギュレーションの変更内容が発表されました。今回はこのMotoGPの新レギュレーションについて取り上げたいと思います。 新レギュレーションの主な変更内容  2027年以降のレギュレーションの主な変更内容は以下のとおりです。 排気量縮小。1000cc→850cc。最大ボア縮小。81mm→75mm エンジン使用数削減。7基〜8基→6基〜7基(コンセッションランクD以外) GPSデータの公開。 変速

          2027年からのMotoGP新レギュレーション

          WSBKのレブリミット規制を振り返る その3

          レブリミット規制の問題点 ドルナとFIMは今年、2024年を最後にWSBKのレブリミット規制を終了し、代わりに来年2025年より燃料流量制限を導入する予定です。過去2回に渡りレブリミット規制導入の経緯と経過について扱ってきました。その1で取り上げた通り、このレブリミット規制には当時のWSBKが抱えていた様々な問題を解決する目的がありましたが、結果としてその目的は十分に果たせたとは言えず、かえって新たな問題を生み出してしまいました。3回目はこのレブリミット規制の問題点について考

          WSBKのレブリミット規制を振り返る その3

          ビモータのWSBK復帰の意味するもの

           4月24日、カワサキレーシングチームのHPからビモータが2025年にWSBKに復帰するというプレスリリースがありました。  これの意味するものは一体何なのでしょうか。今回は予定を変更してビモータの復帰とそれに伴ってカワサキのスーパーバイク参戦がどう変わるのか考察してみたいと思います。  現時点ではリリースに書かれている以上の情報は無く、ネット上にはそれを元にした様々な憶測が飛んでいる状態です。リリースに書かれているのは、来年からビモータがWSBKに復帰を予定していること

          ビモータのWSBK復帰の意味するもの

          WSBKのレブリミット規制を振り返る その2

           今回は各社の参戦車両に適用されたレブリミットの推移について取り上げていきたいと思います。  今年の開幕時点で各社に適用されたレブリミットは以下のとおりです。 ドゥカティ 16,100rpm ホンダ 15,600rpm BMW 15,500rpm ヤマハ 15,200rpm カワサキ 15,100rpm  これらの数値がどのような理由で決められたのか、メーカー(車種)毎に追っていきましょう。 ドゥカティ ドゥカティはレブリミット規制が導入された2018年までは2

          WSBKのレブリミット規制を振り返る その2

          WSBKのレブリミット規制を振り返る その1

           WSBKにレブリミット規制が導入されたのは2018年の事でした。導入の目的はコストダウンやメーカーおよびチーム間の戦力格差を縮小するというものでしたが、FIMはこのレブリミット規制を今年2024年限りで廃止し、これに替えて2025年からは燃料流量制限を導入する予定です。今回から今年で最後となるであろうレブリミット規制について取り上げていきたいと思います。初回はWSBKのレブリミットの導入の経緯と各社に課せられたレブリミットについてです。 レブリミットとは  一般的に、レ

          WSBKのレブリミット規制を振り返る その1

          WSBKカタルニアラウンド

           WSBK2024年の第2戦、カタルニアが終了しました。今回はこのカタルニアで行われたレースを取り上げたいと思います。  開幕戦の行われたフィリップアイランドは非常に路面グリップの高いサーキットですが、カタルニアは逆に非常に路面グリップの低いサーキットです。路面グリップは対極のサーキットですが、共にタイヤライフに非常に厳しいサーキットです。フィリップアイランドでは再舗装によってタイヤへの攻撃性が更に高まり安全性のためタイヤ交換が義務付けられましたが、カタルニアでは安全性は問

          WSBKカタルニアラウンド

          WSBKカタルニア公式テスト

           3月14日と15日の2日間、WSBKの第2戦の行われるカタルニア・サーキットで公式テストが行われました。 今回はこの公式テストについて取り上げたいと思います。 まずは2日間の総合順位を見てみましょう https://resources.worldsbk.com/newsdesk/2024/Tests/Catalunya/90_Classification_Combined.pdf  このリザルト表はライダー毎ではなく、車両毎に記載されておりでちょっとわかりにくいのでこれをラ

          WSBKカタルニア公式テスト

          2024年のレギュレーション変更点とその影響について。メーカー毎の考察その2

          前回に続き、今回はBMWとドゥカティ、ホンダについて取り上げます。 BMW  昨年、トプラク・ラズガットリオグルがBMWへの移籍を発表したことは驚きをもって受け止められました。BMWは2019年にワークス参戦を再開して以来、5年間でわずか1勝しかできておらず、ホンダとともに「負け組」の印象が強いメーカーで、なぜわざわざ勝てないメーカーに移籍するのかとその判断を疑問視する意見が多く見られました。  ラズガットリオグルがヤマハを離れたのはやはり、ドゥカティのバウティスタに対し

          2024年のレギュレーション変更点とその影響について。メーカー毎の考察その2

          2024年のレギュレーション変更点とその影響について。メーカー毎の考察その1

           前回は今年変更されたレギュレーションがどのようなもので、それがどの様に影響を与えたかを考察してみましたが、今回は各メーカー毎に具体的にどのように影響していたかを考察してみたいと思います。  今回はレギュレーションの変更点だけではなく、コンセッションも含めての考察になります。そのためWSBKのコンセッションルールについて知っておいていただいた方がわかりやすいと思いますので先に説明しておきます。ただ、WSBKのコンセッションルールは複雑かつ難解で細かく説明すると長くなりすぎてし

          2024年のレギュレーション変更点とその影響について。メーカー毎の考察その1