また夏に乾杯
「俺は来年は上から皆の乾杯を見てるから!!」
盆に我が家に集まる伯父の言葉だ。食事…というより飲みの終盤に焼酎の水割りを片手に言うお約束の言葉。
要は、来年の盆までにはお亡くなりになってるってことなのだけど。
でも10年前から毎年言ってる。
大体、若輩の僕あたりが「お酒飲みながらその言葉を言っているうちは大丈夫ですよ。」と流す。
しかし、そんな伯父ももう70後半となり冗談に聞こえなくなってきた。
今年はお盆の集まりはコロナにより中止である。
コロナでの死者の8割以上が70歳以上なので当然の流れだ。
かと言って来年集まれるかどうかもわからない状況でもある。
伯父から見たら僕達甥・姪たちも大きくなり、一時期はそれぞれ叔父、伯母夫婦が集まるくらいであった。
しかし、ここ数年は甥・姪・その配偶者と孫を引き連れてあつまるので、20人近くの集まりとなっていた。
なんだか子供の頃、いとこと遊んでいたような姿を、はしゃぐ我が子たちに重ねる。
「おいおい、頼むからはしゃぎすぎて窓ガラス割ってくれるなよ・・・」
なんてお酒を飲みながら、いとこと笑って話す。そう、僕たちは窓ガラス毎年割ってた。勿論わざとじゃないけど、もう少し落ち着けとあの頃の僕に言いたい。
「あんまり怒られなかったのは、父親たちも割ってたのかな?」
そんなことを話していると、親でもあるが、少しだけ子供の頃に帰る。
ああそうか、昔、何で大人は遊ばないでただ飲み食いしてるのにあんな楽しそうなんだろうって思ってたけど、こういうことだったのか。
子供たちが遊んでいる姿を自分の少年少女時代と重ね合わせて話すだけで、気持ちが遊んでたあの頃に戻れるんだ。
老若男女、歳も性別も違えば趣味も違う、仕事も出身もなんもかんもバラバラな人たちが、ただ血がつながっているというだけで同じ席につき、乾杯をする。
それだけですぐ打ち解けられる。
ご先祖様の贈り物なのかもしれないな。
大人になってまた別のお盆の楽しさが分かった。
人生の先輩方にはもうひと踏ん張りしてもらって、僕の息子からのお酌を受けてほしいもんだ。
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