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「北海道を南下する」

誰かの記憶の誰かのはなし 4

日本最北端宗谷岬に、2005年6月22日に着いたポップとバザー。 

大関のCDを直接人に届けたいと走り売りする、日本縦断がスタートした。 

北海道をほぼ下に降りていくルート。 

稚内⇨名寄⇨旭川⇨札幌⇨小樽⇨札幌⇨千歳⇨苫小牧⇨室蘭⇨フェリー🚢直線距離で500キロ弱。 
関東から関西くらいか。やっぱり広いですね。 

1ヶ月以上かけて北海道を後にする。 

そもそも彼らの生活費は、出発前に貯めたバイト代プラスCDを売った売上の一部になる。売らないと生活出来ないのである。 

我ながら、何ともすごい企画である。 

また、当時を思い出すのなら連絡はガラケー。日常の更新は、ちょっとしたブログのみである。 

さて、バザーについて少し話そう。 

僕らが、旅を終えて15年以上経過している現在。
僕らの中で一番成長し、変化したのがバザーである。 

もともと、走るのが好きだった彼は、無口であまり、物事をうまくやり込めるタイプではなかった。 

僕らと遊ぶ時も「少し走ってから行く」とかでトレーニングを優先するような感じだった。 

彼は、箱根駅伝で有名な大学に進学していた。 

昔、酔っている時に少し聞いた事を覚えている。 

全国から優秀なランナーが集まる大学で、もちろんタイム的にも厳しくて、監督にはっきりと
入部しても走れないぞって言われたと。 

僕も挫折ばかりの人生だ。 

彼のそういう気持ちは、深く聞かなくても理解出来た。ただ、僕達は、彼の走っている姿を見てきて、走る事に関してやってみようと思わされたのも事実である。 

バザーが何を想い、どういう決心で日本縦断にチャレンジしたか、わからないし、別に聞かない。 

ただ、僕の企画に乗った。
そして北海道で休学届けを出した。 

その事実だけでいいのである。 

僕とポップが少しおかしい奴だとしたら、
バザーは、本当にまともだったのだろう。 

この時は。 

北海道では、走る事で距離を稼いで、バランスを取ろうとしたのか、スケジュールと道順などは、ポップに任せて、バザーはやる気になっていた。 

意外とそういう男で、背中で語るタイプである。 

そして、見事に初日の稚内までの1人20キロランで足を痛めるのである🎊 

ここから、ほぼほぼポップが頑張るのである🤣 

初日に、宗谷岬で出会った観光客にCDを販売し、幸先いいスタートでの活躍に東京の僕はドキドキしていた。 

ああ、始まったんだ。

彼らのブログと携帯での会話で僕は、先に何があるのか調べて連絡していた。 

直接人に届けるには、聴いてもらうしかない。
稚内にあるコミュニティFM局で、出演を試みる。 

生放送中のブースの前でチラシを掲げて小躍りした。 

DJが、面白がって出てきてくれて、初出演を果たす。 



そのまま、スタッフの年が近い青年と意気投合し、彼の家などでお世話になる。 

野宿で耐え忍んでいく覚悟だったポップは、見ず知らずの人を宿泊させるという、自分では考えられない行動にふれ、この国の安全さと優しさに不意を打たれたらしい。 

ポップの涙腺は、これよりゴールまで人の優しさに触れる度にゆるゆるになる。

優しさバロメーターの誕生である。 

バザーは、泣いている時などは背中を向けて泣いていた。 

張り詰めている緊張感は、人の優しさに触れると涙で溢れるものと、2人は知った。 

そして、さらに彼の番組でゴールまで毎週電話連絡することになった。 

レギュラー番組である。 

稚内を後にしてすぐに、初めての野宿を迎える。
トンネルの中で、車がビュンビュンスピードを出して通り過ぎて行くような所だ。 



ポップが意外と初野宿にビビっていた。 

そりゃそうだろうな。なんて、報告を聞きながら現実が現実でないような感覚になっていた。 

稚内を出て数日後、バザーはお医者さんに足を診てもらう。事情を話したら無料だった。 



人は優しさを分けてくれる。 

復活したバザーは、再び走り出す。
箱根駅伝のイメージなのか。テンションは高かった。 

途中のお風呂は、噴水だ。 

名寄の駅で初ライブを開催する。 

お客は、ゼロ。 

バザーは、路上ライブなど出来るようなタイプではなく、このストリートライブが一番キツかったらしい。 

ポップは、1人で歌い、演奏し、お客がいないのに
MCもしていたそうである。 

これを見てバザーは、改めてポップのおかしいメンタルにビックリした。 



ただ、2人に音楽的な才能など何もなく、初ライブにしてこの先、ライブでCDを売るのは難しいと悟った。 

この辺りでした会話を覚えている。 

「TAWA。売れ売れなんて、言うけどな」 

「なんだよ」 

「真っ直ぐな道で人がいないんだよ」 

そうです。想像を簡単に越える広さの北海道は、
移動だけでもしんどいのに人に会えないという。
ダブルの精神攻撃を仕掛けて来た。 

僕はもちろんこう慰めた。 

「だったら面白い写真撮れ」 

決して僕らは馴れ合いな関係ではなかった。
面白いか、面白くないかが、常に判断の基準である。 

札幌に着いた時に、ポップから興奮の電話が鳴った。 

「夕方の天気の番組‼️それに見切れるから‼️
写るから今すぐテレビ見て‼️」 

「俺は関東だけど」 

「見てる気持ちになって‼️」 

ポップとは天然である。



道民の皆さん。これは、何の番組ですか? 

そして、小樽でイベントがあることを知った彼らは、札幌から一度小樽へ向かう。 

なんのはなしですか

旅は続くよどこまでものはなし。 

小樽にて、素敵な出会いが起こる。 

その頃TAWAは2人がいない寂しさを、お金を払えば紛らわせる事を知り、夜の街へと日々消える。

全ては2022年へ繋ぐ








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