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小説 (イケメン絶滅世界線)

第一話  絶滅


イケメン
すなわちイケてるメンズのことである
成績優秀スポーツ万能
ルックス完璧
もうとにかく色々イケてる
そんな男のことを
世見はイケメンと呼ぶのである
しかしこの世界では
そんなもんはいない!!!!
いるのは俗に言うブサイクやモブ
イケメンとは真反対の男しかいないのだ!
なぜそうなってしまったのか
これは遡ること50年前
科学者 部佐山「ぶさやま」博士の妻がイケメンと
浮気したことにはじまる
部佐山博士は世間からも愛妻家と
言われておりとにかく妻を愛していた
そんな妻がイケメンと浮気をしている
ことを知った時それはとてつもない
ショックを受けたようだ
そして部佐山は妻に聞いた
「私の何がいけなかったんだ」
妻は言った
「あなたがすごく愛してくれていたことは知っているわ、けれど私は辛かったの、あなたと街を歩くたび、周りの人は嘲笑うように私たちを見て来たわ
あの女の隣の男は誰だ?って
ひそひそと話す声も聞こえたわ」
「なぜそんなことを周りが話す必要があるんだ?」
部佐山は妻に問いかけた
妻は、恐る恐る口を開いた
「その、、あなたの顔がとても醜いからなの、、、ごめんなさい、、、」
部佐山はまるで稲妻に撃たれたかのように固まった。
確かに部佐山の顔はお世辞にも
整っているとは言えなかった
細い一重の小さな目
大きな団子鼻
ガタついた歯並び
そしておまけに最近は運動もしていなかったため、体はいわゆるメタボ体型
になりつつあった
確かに自分はイケメンではないと言う
自覚は部佐山自身にもあったのだ。
だがしかし!
こんな自分を好きになってくれた。
この世でたった一人の信じていた妻
の口から浮気した理由が顔だと言う
そんなことが飛び出たことが
部佐山にとって何よりもショックだった。
「わかった、君を信じていた私が
馬鹿だったようだ」
震える声で部佐山は言った
目は、赤く充血し今にも涙が溢れそうであった
「あなた、、、ごめんなさい」
妻は俯きながら、か細い声でそう言った
「今さら、謝罪しても何にもならんだろう、、わかっているだろうが
私たちはもう終わりだ。
離婚しよう、、、さようなら」
「、、、」妻は何も言わなかった
後日離婚届を提出し
あっけなく部佐山夫妻の夫婦生活は
終わった
しかし、そのあっけなく終わった
出来事の裏で部佐山は怒り狂っていた
「この世にイケメンなど存在しなければ
私は裏切られることなどなかったのだ、、この世にイケメンなど存在しなければよかったのだ、、イケメンなんて、、イケメンなんて、、、、、、、
この世から消し去ってやる」
部佐山は心の中で固く誓った
それから5年がすぎた頃
突如として、原因不明の心肺停止による死亡事故が、世界中で大流行したのであった、しかもその心肺停止は
比較的顔が整った男性に限定して
発症するのであった。こうして
世界中からいけてるメンズ
通称イケメンが世界から一人
また一人と消滅していったのであった
このイケメンが消えていく事件を人々は、「イケメン絶滅事件」となんとも
率直すぎる名前をつけた。
一体この時世界で何が起こったのか
誰かによる人工的なものなのか
あるいは自然現象によるものなのか
それは誰にもわからないのであった
そして部佐山博士はどうなったのか
それは誰にもわからないのであった

第二話   衝撃

そして時は、流れ50年後の世界
世界にイケメンはいなくなっていた
世の中の女性は、イケメンなどと言う
ものはおとぎ話だと自分に言い聞かせ
イケメンとキャッキャウフフな付き合いなんてできないのだと
すでに割り切っていた
こうしてこの世界の男社会では
ブサメンたちが天下を取っていたのであった!
そしてまた、この学校もそんなブサメン天下状態になった 
その一つ 私立 「喪手無位高校」
「もてない高校」
ここにはある一人のJ Kがいた
黒髪ロングの中に、
ピンクのメッシュが入った髪をまとめ
流れるようなポニーテールが美しい
制服シャツの上に灰色のゆるっとした
カーディガン
白く長めのルーズソックス
顔立ちは整い、大きな目、白く透き通る肌、スッと通る鼻筋、
うっすらとした唇から
わずかに覗く八重歯が彼女の魅力を引き立てている、そう、彼女は美少女であった、しかしただの美少女ではない
ギャルの美少女なのであった、、、
説明が遅れたが、この世界では
男だけにイケメンがいないため
女性の中には普通に整った顔立ちの人たちは沢山いるのであった
このギャル美少女もその一人である
この美少女の名前は桃園由美香
「ももぞのゆみか」
スクールカーストでいう陽キャの方の人である
彼女は刺激不足であった
男女問わずモテるものの
声をかけてくる男はブサメンばかり
たとえカースト上位でもやっぱり
ブサメンはブサメンなのだ
どうしてもテンションは上がらない
だからといって女子にモテても
あいにく彼女にそっちの趣味はないのであった
そんな刺激不足な毎日に飽き飽きしていたある夏の日、事件は起こった
ミーンミーンミンミンミーン
「うるさい」心の中でゆみかはそう
つぶやいた、
夏のうだるようなこの暑さの中、
窓から入り込む騒がしい蝉の鳴き声は、余計に暑さを増してくる。
こんな暑さの中でも
彼女はカーディガンを脱ぎはしない
これは彼女のシンボルであり
ギャルとしての彼女なりの魂でもある
僅かにでも涼しさを得ようと
彼女は机に突っ伏した
だが太陽にさらされた、彼女の机の表面は、まるで熱い鉄板のようだった
「アッチ!チッ、窓側の席なんて取るんじゃなかったわ」
舌打ちしながら彼女はそうつぶやいた
彼女に取って席替えは、つまらないものだ、大体は窓側最後列のこの席に決まっている。
理由は単純だ、みんなが勝手に譲ってくれるからだ、それぐらい彼女の美貌は凄まじかったのだ。
それに伴い彼女の学校における権力は強いものであった、別に彼女は、悪い気もしていなかったが、自分だけ綺麗だからという理由で特別扱いされるのは、それはそれで心地悪いのであった
そんな簡単に入ったいい席にも
一つだけ悪いところがある
ガラッと教室のドアが開き
1人の男子校生が入ってきた
男子校生は由美香の隣の席の
椅子を引きながら細々とした声で
「お、、、おはよ、、う、、桃園さん」
と言った
「声ちっさ!なんなんのこいつほんとに!ウジウジしすぎ、まじニガテなんですけど」心の中で由美香は、そう思った。そう由美香に取ってこの席の一番悪いこと、それは、隣の席がこの男
模武山 ソウタ「もぶやま」になってしまったことなのであった。
模武山ソウタ通称モブ太
なんの特徴もないthe普通の男
まるでゲームに出てくるモブキャラのような存在のため学校では、そう言われているのであった。
長く伸びた前髪は目元を隠し
彼の暗さを強調している
強いていいところといえばほんの少し
背が高いことである
そんな彼を由美香は、好んではいなかった。
最初のうちこそ、優しく話しかけていたのだが、彼の自信のない挙動不審な
返事や仕草にもう嫌気がしていたのであった。
だが挨拶をされたのだ
返さないわけにはいかない
「オッハ〜モブ太」
由美香は突っ伏したまま返事をした
(はぁ〜朝からこいつと教室で2人とか、早く学校来て損したかも)
それからは無言の時間が続いた
そのなんともいえない空気に
うずうずとしてきた、
由美香は思わず声をかけた
「そ、そういばさ〜モブ太って
前髪めっちゃ長いよね」
(あぁ〜私なんでこんな奴に話しかけちゃってんの〜)
「そ、そうですかね」
少し照れたのかモブ太は俯きながら
由美香の方を向く
「そうそう、なんかさーちょっと長すぎて暗く見えるからさ、よければ私
切ってあげよか?」
(え、私何言ってんの本当に)
「嫌です」
「え?」
その時モブ太はハッとする
「あ、あ、ああ、あのごめんなさい!
こんな、そのキッパリいうつもりじゃなかったんです」
あのモブ太が自分の意見をこんなにもはっきり言うことに由美香は驚いていた
(え〜何よこいつ〜普通にはっきりもの言えんじゃん、ちょっとおもしろそだからもうちょい、いじちゃっお〜と)
由美香は、ハサミを手にし自分の席を立った、そしてスッとモブ太に近づいた
「え〜でもさ、そんなこと言わないで
まかしてみろって〜私結構友達のやつ切ってるしわりかし自信あんだよね」
「え、でも、ほんとそれだけは
やめてください、お願いです」
少し由美香はイラッとした
(何!?そこまで嫌がるなよ)
「あーだいじょぶだいじょぶー
ほんと任せてみなって!!」
そして由美香がモブ太の前髪に手を伸ばした時だった。
「やめてください!!」
モブ太は激しく、由美香の手を振り払った
突然起きたこの出来事に由美香は凍りついた。(え、何、今の?)
およそ10秒程沈黙が続いた 
その凍りついた由美香の表情に気づいたのか、モブ太は突如立ち上がり
「あ、え、あ、こんなつもりじゃ、
ほんと、ほんとごめんなさい〜!」
裏返った声を出しながら
モブ太はそのまま教室を出て行った
その後取り残された由美香は
しばらくの間凍りついていたのであった。ある夏の朝の出来事であった。

第3話    夢

「ゆみかオッハ〜〜、、、ってえ?
なんでどうしたのそんなぽかんとしたまま固まっちゃってさ!?」 
モブタが教室を飛び出ていって
約3分後
入れ替わりで黒髪ショートの
可愛らしい女の子が由美香の教室に入ってきた
彼女は黒川のぞみ
由美香の小学生以来の親友であり
彼女もまた学校で評判の美少女である
しっかりと着こなした制服を見れば
一見真面目な生徒に見えるのだが
手元を見るとマニキュアが塗ってあったりと、俗に言う清楚系ギャルというものだろう、そう彼女と由美香はギャル友でもあり、親友でもあるのだ
そんな長年の付き合いの
のぞみからしてみても
今日朝イチで見た親友の姿は
あまりに衝撃的であった
口をぽかんと開けたまま
ずっと隣の席を見つめたまま固まっている
(こんな間抜けな由美香は見たことない、何があったの!?)
そうして彼女がおろおろとしていると
由美香はゆっくりと彼女に気づいた
「あ、あぁ〜、のぞみんおっは〜」
間の抜けたような声だった
「ちょ!?ちょいちょい!どうしたのゆみか!あのいつもの美少女っぷりどこいったん!?今ゆみかめっちゃ間抜けな顔だよ!?」
そう言われ由美香はハッと我に帰る
「だって!だって!聞いてよ!
モブ太が、あのモブ太が〜」
そうして、しばらく由美香から
何があったのか聞いたのぞみ
「ぇ〜でもなんかそれさ
ゆみかも悪くない?無理やり人に嫌がることやっちゃってるわけだしさ」
「でも、なんか悔しくない?モブ太だよ?あのモブ太なんだよ?」
「あぁ〜はいはい、まあ落ち着きなって、暑さでイライラしてるのもあるんじゃない?そんな怒ることでもないからさ」
「でもぉーでもぉー」
「あぁ、もう!ゆみかちょいしつこいって〜暑苦しくなってきたわ!」 
「ちょっ!のぞみん〜それはひどいって〜」
「もーう!こうなったらもういいわ
放課後プール忍び込んじゃお!
ね?また侵入作戦しちゃお!」
「でも、そんなことしてもイライラ
収まんないよ」
「いいからこい!!夏の暑さなんて吹っ飛ばしちゃお!」
「むーーー!ほんとさ!なんで私の隣はモブ太なわけ〜!?どうせなら
横にイケメンおいて欲しいよー」
「あんたさーそれ昔っから言ってるよね〜小学生の時それでクラスの男子にいじられて泣いてたっかね?ふふっ
なつかしぃ〜」
「ちょっ!そんなん忘れたし!
でもいいじゃん!憧れるじゃん!
イケメンって!どんなもんなのかわかんないしさ、逆にのぞみんは気にならないの!?」
「んーあんま気になんないかな、
イケメンなんて50年前にいなくなっちゃってるし、もういるわけないし
私はもう割り切っちゃってるの」
「夢がないなーのぞみんってば
私は絶対いつか、イケメンが迎えにきてくれるって信じてるんだから!!」
「うわーでたねーその話題
小学生の時から言ってんじゃん
私は夢がないんじゃなくてさ
ゆみかが夢見すぎなの!」
のぞみはペシっと由美香を叩く
「ふん!見てなさい!のぞみん!
私は絶対イケメンを見つけ出してやるからね!」
「あぁ〜そーでーすーかー
わーかりましたー」
「もーー!全然聞いてないじゃん!」
「聞いてた聞いてた、てか、そろそろ始業のベルなりそうだし、私クラス戻るよ?」
「えぇ!もうちょい付き合ってよ〜」
「もう十分付き合った〜んじゃ、
放課後ラインするから学校のプールの更衣室集合で!」
そういってのぞみはまるで忍者の
ように、由美香の教室を後にした
「あぁ〜!のぞみん!逃げるなー!」
(もうーのぞみんってば信じてくれないんだから!、、、
でも本当に、イケメンなんているの?
今まで生きてきた中で一度もそんな人に会ったことないし、、、のぞみんのいう通りいないのかもしれない
、、ダメダメ!何、弱気になってんの!桃園由美香!意地でも探してやるんだから!絶滅したイケメンを!)
そう、桃園由美香はギャルで美少女である、しかし、ただの美少女ではない
絶滅したイケメンに出会えることを夢見る、美少女である
きっかけは、家の倉庫に埃をかぶっていた、少女漫画を見つけたことがきっかけだった、そこに書かれていたのは
この世界では見ることができない
イケメンと言われる男たちが
1人のヒロインを大切にするといった内容であった
当時、小学3年生の由美香は
そこで初めてイケメンという概念を知ったのであった!
それからというもの、趣味で
今では珍しい少女漫画を影で集めるほどの
超がつくほどのイケメンオタクになっていたのであった。
しかし、世間ではイケメンなんてどこを探してもいるわけがないため
彼女のその趣味は、あまり人に言えないものであった、実際この趣味は
親友である、のぞみにしか話してこなかったのであった
その、のぞみが去っていった後
始業のベル1分前ほどになって
モブ太がソロソロと戻ってきた
由美香はハッとして窓のほうを見て
モブ太と目が合わないようにした
モブ太は、チラチラと、由美香を確認した後、申し訳なさそうに自分の席に着いた
(ふん!座るならもっとパッと座りなさいよ!、、、謝った方がいいのかな?、、でもなんかこの空気謝りずらい!)そんなことを考えているうちに
時間はそのままあっという間に過ぎていった
始業のベルから気付けばあっという間に時間はたち
終業のベルが鳴り響いた


第4話    発見

放課後になり、教室からはいっせいに人が出ていった、部活に行く人もいれば、友達と一緒に帰る人もいる、
モブ太もいつの間にか教室からは、
いなくなっていた
(モブ太帰ったんだ、、、
って!何、気にしてんの私!)
そんなことを考えているとラインが鳴る
由美香はスマホを開いた
(あ、そっか、のぞみんとプールか、)
スッとスマホをポケットにしまい
荷物を持って、由美香は教室を出た
プールに向かう道中、
「おい、桃園ー」
大柄な男に声をかけられた、同じクラスの
熊山 権太(くまやまごんた)だった、通称クマゴン
そのあだ名の通り彼はとてもガタイがいい、そしてそれに伴い態度がでかい
声もでかい、ついでにやっぱりブサイクである、
由美香は彼をあまり好んではいない
しかし彼はというとどうやら由美香をすいているらしく、これまで何度も何度も、由美香にしつこくアプローチしてきているのだ
「この前の告白の返事
まだもらってねぇーぜー?
早くしてくれよな、俺だってそんな
長く待てるわけじゃねぇんだからよ」
「誰があんたなんかと付き合うかっての!本当しつこいわ!」
「へっへっへ、その強気な態度
痺れるね、お前が俺のものになったら
たっぷり可愛がってやるからな」
クマゴンは舌なめずりをしながらそういった
由美香は背中に何か冷たいものが滑り落ちた気がした
「ほんっと!きもい!もう私行くから
二度と話しかけないで!」
「まぁ、そういうなって
今からお茶でも、、、」
そうクマゴンが言いかけた時
「おい岸山、きてくれ」
通りかかった先生がクマゴンを呼んだ
「チッ!タイミング悪りぃーなぁ!
空気読めってんだ、、」
(先生ないっスゥー!マジでタイミング神!今のうちに逃げようっと)
由美香はその場から急いで離れた
「あ!おいーー!桃園!待てよー
チクショウ!」
遠くからクマゴンが呼んできている気がするが無視だ
由美香はとにかくプールに向かって走った
ようやくプールに着く頃には
息も途切れ体中汗まみれになった
「ゼーハーゼーハー、、ほんっとあいつ気持ち悪い、自分のことかっこいいって思ってんのかしらあの顔と性格で」
由美香は息を切らしながらそう呟いた
(汗かきすぎちゃったな、ベタつく
のぞみんまだきてないけど
先に入っちゃおうかな〜)
そう思った由美香は
1人更衣室を出て制服のままプールに向かった
プールサイドに出るとそこには意外な人物がいた
そう、由美香の苦手ランキング二番手
モブ太であった(ちなみに一位クマゴン!)
「はぁー〜!?なんでモブ太ここにいんの?」
思わず大きな声を出してしまった由美香
「え、あ!えっとさっき体育の先生から、プールサイドの雑草抜き頼まれてて、、それでここにいます、」
モブ太はアタフタしながらそう言った
「ふーん」
(はぁー〜ーーー今日は本当なんて日なの、苦手ランキングトップツーの2人と2人きりの状態になるだなんて
しかも、モブ太とは、2回もだよ
ほんっとついてない)
由美香は心の中でそう思っていた
するとモブ太が恐る恐る口を開いた
「あ、あの、朝はすいませんでした
その自分、あんまり女性に近ずれたこととかなくて、気が動転してたのもあって、その、桃園さんがせっかく
気にかけてくれたのに、突き放すようなことしちゃって、ほんとに!
本当にすいませんでしたぁぁ!」
(うわ、モブ太お辞儀めっちゃ綺麗じゃん、完璧90度、、
でも、こんな真剣に謝ってくれてんのに、私謝んないのやばいな
そもそも別にモブ太は悪くないんだから、、変なプライドなんて捨てよう
素直に謝ろう、、よし!)
「顔あげてよ、モブ太、
その、私の方もモブ太の気持ち
わかってなかったし、そんな嫌なんだって分からず無理矢理嫌なことしちゃったし、その、なんていうかさ
本当にごめん!私の方こそ!
モブ太は、何にも悪くない!
本当ごめん!」
由美香は頭を下げ一言一言はっきりと言った
「え、あ!え、だめですよ!桃園さんこそ頭あ、あ、あげてくださいよ!
なんだか申し訳なくなってしまいます、、」
「クスッ」
由美香は思わず笑ってしまった
「え?」
モブ太は驚いて由美香の顔を見た
「え、あ、いやーごめんごめん
モブ太めっちゃ必死なんだもん
なんか面白くてさ」
「そ、そうですかね」
モブ太はぽりぽりとほおをかきながら
恥ずかしそうに言った
「私さ、正直、今までモブ太苦手だったんだよ、、なんかすっごいウジウジしてて、」
「あはは、よく言われます、、」
「でも、今日こうやって、あんたのはっきりしたとことか見てわかった
あんたがウジウジしちゃうのは
多分人一倍優しいから言葉を選んじゃうからなんだよね、だから言葉に詰まっちゃうんだって、」
「そ、そうなんですかね」
「うんうん!そう思う!」
「そうやって、桃園さんに言っていただけるととっても嬉しいですね」
モブ太はそう言って微笑んだ
目は相変わらず前髪がかかっていて見えないが
きっと微笑んでいるのだろう
「てかさ!なんなら雑草抜き手伝うよ!今日のお詫びも兼ねてさ!」
由美香は本心からそう言った
「ええ、あ、えっとそこまでしたいただくわけには、、、」
モブ太は戸惑いながら言った
「いいのいいの!気にしないで!
こうでもしないと気が済まないから!」
「で、ですけどー、、」
「もーう!モブ太!こういう時はさ
ドンと私に任しときなって!」
ドンっ!由美香は軽く背中を押すつもりがかなり強い力でモブ太を押してしまった。
「えっ!うわ、うわぁ〜!!」
そのままバランスを崩したモブ太は
プールに落っこちてしまった
水面から上がった水飛沫が
由美香のカーディガンを少し濡らした
「え!?嘘!ごめんモブ太!こんなつもりじゃなかったの!軽く押したつもりだったのに!」
「ブハァ!!」水面からモブ太が出てきた
前髪は濡れて貞子のようになっていた
「ゲッホ!ゴッホ!ば、ばいびょうぶれふ!気にしないでください」
水を飲んだのか咳き込みながら
話していた
「うわー本当ごめん、ほら、モブ太
手貸すから掴んでよ、ホラ!」
由美香はスッと手を伸ばした
「あ、ありがとうございます」
モブ太がその手を掴む
「よーし引っ張るよ!
1、2のサン!」
その瞬間だった
不意にモブ太が前髪をかき上げた
「え?」
由美香はそれを見て思わず手を離した
「うわぁ!」
ザブンとまたモブ太はプールに沈んだ
そしてまた上がってくると
「ひ、ひどいです!2回も落とすなんてー!」
モブ太がパッと由美香の方を見る
「ま、も、モブ太、あ、あ、あんたその顔、、嘘でしょ?」
由美香は震えていた
声だけでなく手や足全てに力が入っていなかった
手を当てずとも動悸が高鳴るのを感じる
今見ているものが現実なのか夢なのか
よくわからないそんな状態に彼女はいた
そう、目の前にいるモブ太が
髪をかき上げた瞬間衝撃が体を突き抜けた
そこには、由美香が小学生以来
ずっと憧れてきた理想そのものが瞳に映ったのであった
いつも前髪で隠れてわからなかった
モブ太の目の部分は、あまりに美しかった、由美香が今まで生きてきた中でこんな男はいなかったと思えるほどに
大きくぱっちりとした二重の目
それが顔の全てのパーツ全てに馴染んでいる、そして、何より目元にあるほくろが、彼の色気をただよわせる
そう、彼だったのだ
50年間未だかつて誰も見たことがない
おそらくこの世でたった1人のイケメン
由美香が長年追い求めてきた
理想の「男」
いけてるメンズ
通称イケメン
50年の時を得て、見つかったのだ
こんなにも近くにいたのだ
これは、まだこの物語の始まりに過ぎない
そう、始まったばかりなのだ
彼らの物語は、
この夏の暑い日
蝉が鳴く頃プール
全てはここから始まったのだ
人々はまだ知らない
この2人がこの、変わってしまった世界を、救う鍵になることを
この、イケメン絶滅世界線を救ってくれる2人であることを
まだ誰も知らないのであった

作者より

この度は、イケメン絶滅世界線を読んでいただき本当にありがとうございます
この作品は僕が初めて作る
小説です
どうか初作品ということで
温かい目で楽しんでいただけると嬉しいです
今回は計4話を載せさせていただきました
どうかたくさんの読んでいただけると
光栄ですぜひたくさんの人に広まりますように!
最後になりますが
この度はこの作品を読んでいただき
ありがとうございます
また続きも書いていこうと思います!

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