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心の修理屋さん 声劇朗読台本


登場人物
少女「女」
クマ「男」
小人「性別不問」
N「不問」



ここは村の近くの森
柔らかい木漏れ日が差し込む暖かな森です
そんないつもと変わらない森のある日
ガッシャーーーン!
どこかで何かが割れる音がしました。
音のした方に行ってみると
女の子が1人切り株の前でうずくまって泣いているようでした。
「シクシク、、、シクシク、、」
そこにちょうど通りかかったクマが少女に尋ねました
「嬢ちゃん、どうしたんだい?こんなところでうずくまって1人で泣いて」
それでも女の子は泣き病みません
「シクシク、、、ひぐっ、、、えぐっ」
(これは聞こえていないのかもしれないな、、、
はっ!?もしや?)
「嬢ちゃん、ちょいと失礼するぞ、、むむぅ!やはりか、、、」
クマは少女を持ち上げて胸の部分を見ると
そこにはガラスでできたハート型の物体が少女の胸についていました。
しかしどうやらそのハートは割れてしまっているようで壊れたハートの中からピンクの液体がこぼれているようでした、、、
「やっぱりか、、そりゃ何を言っても通じねえわけだ」
ため息をついたあと
クマは少女を自分の背に乗せ言いました。
「嬢ちゃん、待ってろよ、、今助けてやるからな」
ぽつりとそういうとクマは少女を背に乗せたまま
歩きだしました。

クマが歩き出してしばらくした頃
見たこともないようなおおきな木が、見えてきました。
そしてまもなくしてクマは、大きな木の前で歩みを止めて大声で言いました。
「おーうい!患者だぞぉ!よろしく頼むう!」
クマの野太い声が森中に響きわたりました。
しばらくするとガタゴトと木の中から音が聞こえてきました。
音の聞こえるところは根元の方からです
そこには小さなドアがありました。
ガチャっ!
「はーい!ようこそ!心の修理屋へ!どうかなさいましたか?」
なんということでしょう、木の中からはなんと
白衣を着た小さな小人が出てきたのです
クマは驚いた様子もなく
小人に声をかけました
「お客さんを連れてきたぞ、どうやら心が割れているようだ。」
すると小人は言いました。
「あぁ!そうなんですね!了解しました!では早速診察しますので、くまさんこの子の心の部分を見せてくれませんか?」
「あぁ、お安い御用さ、ほらよっと」
するとクマは少女を軽々持ち上げ
小人に心の部分が見えるようにしてくれました。
「ふーーむ!なるほど、、言葉の針が刺さって心に穴が空いてしまったようですね、、恐らくいじめられてたとか、、そういった所でしょうか、、、」
「ほう!さすがだな、そこまで分かってしまうとは流石心の修理屋だな」
すると小人は顔を赤らめながら言いました
「い、いえ!そんな、大したことありませんよ!!
、、、と、ということで!治療を始めさせていただきますね!」
「おう!この子を助けてやってくれ!」
「はい!おまかせを!よぉーし!みんな仕事だぞぉーー!」
そういうと小人は手を叩きながら木に向かって誰かに呼びかけました。
するとすると、なんとびっくり
たくさんの小人たちがゾロゾロと中から出てくるではありませんか!
するとクマは苦笑いしながら言いました
「ハッ!毎回この数には圧倒されるわな」
クマの言う通りです、一体どれほどの数がいるのでしょうか?みるみるうちに小人たちは増えて
白衣の小人の前に綺麗に整列しました。
全員揃ったところを見て白衣の小人は言いました。
「ええ!諸君!見ればわかると思うが、今日の患者はクマさんが抱えている少女だ。病状は心のヒビ割れ、ざっと見たところ修復は大変そうだ。そのため新しい型を作る必要がありそうだ!みんな準備はできてるかぁ!」
すると小人たちはいっせいにオーっ!と叫び声を上げ、各々の作業に取り掛かり始めました。
ガラス板を持ってくる小人もいれば
その形を変えるためのかまどの火を用意する小人
またある小人たちは何やら大きなお鍋でピンクの
液体を煮詰めています。

小人たちの手際は凄まじいもので
みるみるうちに、女の子の胸にあったのと同じ
ガラスのハートの型が出来上がりました。
「よしっ!それじゃぁそろそろ仕上げだ!
気をつけろー!ここが1番重要だ!オーライ!オーライ!」
すると小人たちは、先程の大きな鍋を木でできたクレーンで吊るして、中の液体を型に注ぎ込む作業を始めました。みるみるうちにガラスのハートは
ピンクの液体で満たされました。
「よーし!諸君!そこまで!君たちの働きに感謝する、今日も良い心の出来だ!ありがとうな!」
はいっ!と小人たちは返事をする
「クマさーん終わりましたよー」
白衣の小人は、居眠りをしていたクマに声をかけました。
「んぐっ!ぐぁ!!おぉーん?もう終わったのか、、、」
眠そうな目を擦りながらクマさんは言いました。
「はい!完成です!それではクマさん!こちらの新しいハートと、その子の壊れたハートを入れ替えて貰ってもいいですか?」
するとクマは大きく頷き言いました。
「おう!任せなぁ!ありがとうなぁ」
するとクマは優しい手つきで女の子のハートを取り外し新しいハートとそっと入れ替えました。
すると少女の今まで流れ続けていた涙は止まって
目に光が戻ってきました。
「、、、、、、んッ、、え?あれ?ここどこ?」
少女は驚いたように声を上げました。
するとクマが優しく声をかけました。
「嬢ちゃん、調子はどうだい?」
「えええっ!クマさんが喋ったァ!」
少女は素っ頓狂な声を上げました。
すると小人も優しく少女に声をかけました。
「お嬢さん!悲しい気持ちは無くなりましたか?」
「ええええええええ!小人さんだァァ!絵本でしか見た事ない!」
少女は驚いてばっかりです。無理もありません
人間の言葉を話すクマ、絵本でしか見た事のない小人が目の前にいるのですから。
すると驚く少女にクマは声をかけます
「嬢ちゃん、お前さんの胸の辺りを見てごらん」
「え?、、、うわぁなにこれぇ!ハート?」
少女の胸には先程作ったばかりの心がピンク色に輝いています。
「そうだ、そいつは嬢ちゃんの心だ」
「こころ?」
「あぁ、ほれ!あっちを見てみろ!あれが元々のお前さんの心だ」
「えーー、、なんか、壊れちゃってるね」
「あぁ、そうだ、お前さんさっきまで涙が止まらなかったんだぞ、、」
「えっ?そうなの?」
すると小人が針のようなものを持って少女に見せました。
「ほら!これがあなたの心に刺さっていたんですよ、、」
「え?この針はなんなの?」
少女は分からないことばかりです。
「この針は言葉の針、主に悪口や陰口を言われた時に心を傷つつけるものです。」
「???」
「心にグサッと来る感覚分かります?あれ、針が刺さった時なんですよ、」
「、、、確かに私はいじめられてたから、そういう感覚はわかるけど、こんな針は見えないよ?」
「ええ、それが普通ですよ、普通見えないんです
そもそも心を見えること自体普通はありえないことなんですよ、、、 」
「でも、私には見えてるよ?どうして?」
すると小人は言いました
「それは、ここが心の森だからですよ。この森は不思議なんです、普段見えないものまで見えるようにしてしまう、、、それが心の森、そう、ここなんですよ」
「そーなんだ、、、、だから私は、こーやって心が見えるんだ。」
「はい、だから僕達は、こーしてこの森に、心の修理屋さんを作り傷ついた人たちの心を治すんです。」
「なるほど、、、心ってあーやって壊れるんだ」
「ええ、心はみんなあーやってガラスのようなものでできています。その分厚さも人それぞれですが、ずっと傷つけられたらいつかは誰でも壊れてしまうんです。」
「そーなんだ、、」
少女は自分の過去を思い出していた。
貧乏な家庭のため服はいつもボロボロ、そんな少女はいつも村の中でいじめられていた。
(貧乏人!)(くっさ!ちかずくなよ貧乏がうつる!)
(気持ちわりぃんだよお前!)
多くの心無い言葉が、少女の心を刺し続けた。
(あぁ、そうだ、私もそうだ、壊れたんだ私の心も、全部思い出した。どうして涙が止まらなくなったのかも。)
するとクマは声をかけた
「どーした?嬢ちゃん暗い顔してよ」
「ねぇ、、、クマさん小人さん、どうしたら心が壊れなくなるかな?どうしたら強い心を持てるのかな?」
しばらく2人は考えました。それは大変難しい質問だったのです。

しばらくしてクマさんは口を開きました
「強くなるかどうかは、自分の考え方次第だなと俺は思うぜ、そして何より、自分で自分を好きでいてあげることが大切なんじゃねえかな?嬢ちゃんが嬢ちゃんを好きになることが出来れば、周りの意見なんて気にしなくなると思うぜ、」
「んー、そーいうものなのかな?」
「ああ!そういうもんさ!」
「でも、私、褒めるとこなんてないし、、、」
「だァァァ!そういうことを言うんじゃねぇ!いいか嬢ちゃん、この世に生まれて何一ついい所がねぇ人間なんて居ねぇんだぞ?どんなに小さなことでもいい!少しでも褒められるところを探すんだ!」
「んーー、、でもないよ?」
「無理にみつけようとしたって見つからねえ
だがな、自分たくさん愛するのはほんとに大切なことなんだぜ」
「わかった、、、、」
すると今度は小人が言いました
「そして、もしも心が壊れそうになった時には、誰かに相談してみてください、あなたの心がきっと軽くなると思います。」
「誰かに?」
「そう!誰でもいいんです、お母さんでもお父さんでも友達でも、恥ずかしがらずに打ち明けてください、そうすることであなたの心に溜まったものが消えると思いますから、、、」
「なるほど、、ありがとう!クマさん!
私頑張ってみる!少しでも自分を愛して
小人さんたちが作ってくれたこの心を壊さないように!私前に進んでみるね!」
少女はにっこり笑って言いました
心無しか少女のハートも輝いて見えます
クマさんと、小人さんはにっこり笑って言いました
「よっしゃ、んじゃあ、俺たちの出番はここまでだな、嬢ちゃん、これからも色々あると思うが
達者でな!」
「そうですね、、そんなに素敵な笑顔ができるようになったのだからきっともう大丈夫です!どうかお元気に過ごしください!」
「え?どういうこと?まだお話したいよ!」
少女は2人の手に触れようとしましたが
「、、、っ」
なんと、少女の体がだんだんと透けていくではありませんか、、、。
「え?なに?やだ!お別れなんてやだよ!
クマさん!小人さん!」
でも2人は何も答えません、、、ただニッコリと少女のことを温かく見守っていました。
「やだぁぁあ!くまさぁあん!こびとさぁぁ」
その瞬間少女の姿形は完全に消えてしまいました。


「はっ!?」
少女は目を覚ましました。
辺りを見回すと見覚えのある薄汚くて
暗い自分の部屋のベッドの上にいることにきずいた。
「夢、、、だったのかな?そうだ!あそこに行けば!」
少女はすぐに身支度を済ませ
最初夢の中で泣いていた。村の近くの森に向かって走り出しました。小さな森なので、きっとすぐにクマさんと小人さんたちに会えると思ったのです。
森に向かう道中、いじめっ子たちが声をかけてきました。「やーい!貧乏人、そんなに走って汗かいたら汗くさくなるぞお!」「もっともっと汚くなっちまうぞぉ!ギャハハ」
しかし、そんな言葉は少女に届きませんでした。
(あなた達がいくら私をバカにしようと!私はそんな汚くてもめげない私が好きなの!!)
そう、彼女は強くなっていたのです。
自分を愛することを知ったから。
村を駆け抜けた彼女は森にたどり着きました
「クマさーーんこびとさーーんどこにいるのぉ!」
少女は大きな声で2人の名を呼びながら森を歩き回りました。しかし、おかしなことに夢の中と同じようなところは、いくら歩き回っても見つかりません。
どんなに少女が探しても、見つかったのは最初泣いていた場所である切り株でした。
そしてとうとう日が暮れて、少女の足も疲れ切ってしまいました。
「ぐすん、、、どうして、いなくなっちゃったの?ひぐっ、、」
少女の目からはまた涙がこぼれ落ちそうでした。
そして切り株に座ろうとしたその時。
切り株の上で何かが光りました。
近寄ってみてみると
「ん?、、、ガラス?の破片?」
ガラスの破片が夕日を反射しきらりと光りました。
まるで、僕はここにいるよと言わんばかりに
少女はそのガラスがなんなのか分かりました。
(きっとあの二人だ、、、)
「、、、ありがとう、、頑張るね、」
少女はそうつぶやくと、ポケットにガラスの破片を入れて、村に向かって走り出しました。
その顔は、今までにないくらい笑顔だったそうな
夢のように心が見えなくても、自分の心が幸せな気持ちで満たされていることを、彼女はもう知っていました。もう彼女は大丈夫でしょう。


女の子が去った後近くの茂みからくまが出てきました。そのクマの背には、小さな白衣を着た小人が1人乗っていました。去っていく少女の後ろ姿を見ながら小人は言った

「クマさん、行っちゃいましたね、あの子」
「あぁ」
「毎度毎度、患者さんを連れてきてくれてありがとうございます、」
「フッ、気にするな、あの子みたいに心が壊れてしまった人間を見過ごすのはどーも出来んからな」
「ええ、全くです、人というのは生きている限りどうしても傷ついてしまう生き物ですから、僕達はそんな人たちをどうにか、たくさん助けたいんですよ。」
「なるほどな、、その通りだな」
「さてっと!あの子も元気になったことを見届けられたし、帰りましょっか?修理屋へ!
「あぁ、そうだな、、、、」
そういうとクマは大きな体を揺らしながら
森の木々の中へ消えていきました。


ここは村の近くの小さな森
あなたの心が壊れてしまった時ここに来るといい
きっと助けてくれるから
今日も心の修理屋は営業中です。
あなたが本当に悲しみにくれた時本当に助けを求めた時、この修理屋は姿を現します。
どうかあなたのお悩みお待ちしております。



END













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