失業率の構造、完全雇用、残業代の経済学
今回は、雇用・労働に関する諸概念について検討していく。
日本の失業率を考える場合、国際比較に基づいて、「日本の失業率は国際的に見て低い」ということはよく知られているところと思う。
(データブック国際労働比較2016より引用)
しかしながら、失業率の単純な国際比較では、各国の景気動向や成長動向、雇用システムの良し悪しを評価することはできない。
失業率の構造を理解することで、そうした短絡的な誤解を未然に防ぐことが出来る。
また、国際的に見て失業率が単に低いことそれ自体が好ましいかどうかについても、失業率の構造理解に基づいて検討する。
加えて、失業率に関連して、「完全雇用」という概念についても検討を行う。
日本の雇用に関して、河野龍太郎『日本経済は完全雇用の状態にあり、企業業績も良い。』という見解もあるが、その正誤を検討するには、まず完全雇用という概念を整理しなくてはならない。
また、その際によく用いられるUV分析についても概説し、それを用いる際の注意点を論じる。
最後の項では、残業代の経済学的機能について検討する。
残業代については、単に『時間外労働のご褒美』としか認識していない向きもあり、「労働時間ではなく、成果に基づいて賃金が支払われるべきだ」という的外れな非難をする人々が後を絶たない。残業代の経済学的な意義を論ずることを通じて、そうした誤解を解くことにする。
以下の章立てで論じていく。
①失業率の構造 —"水準"と"変動"の区別—
②完全雇用についての検討 —UV分析とフィリップス曲線—
③残業代の経済学的機能
関心があれば、是非ご購読いただきたい。
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