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望月慎の雇用・労働論まとめ

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雇用・労働に関する一連のnoteをまとめました。
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記事一覧

イノベーションは私たちの生活を必ずしも豊かにしないかもしれない、という話

イノベーション、ないし技術革新という言葉は基本的に肯定的な意味で使われていると思います。 実際、私たちの生活が昔に比べて豊かなのは、間違いなくイノベーションのおかげです。 しかし、「イノベーションが私たちの生活を豊かにできる」という事実は、必ずしも「イノベーションが私たちの生活を”必ず”豊かにする」ということを意味しません。 昔、産業革命下のイギリスでは、手工業者が織物機械を破壊して回るというラッダイト運動が猛威を振るいました。それは明らかに産業革命というイノベーション

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雇用増加の下でも賃金が停滞する理由

安倍政権への政権交代が起きる前後(2012年末頃)から、雇用量については大幅な改善が見られています。 (アベノミクスで雇用が増えたと言えるのか?より引用) (労働力調査(基本集計)平成28年(2016年)平均(速報)結果の要約より引用) ただし、その一方で、賃金(実質賃金)は下落・停滞傾向です。 (島倉原氏のTwitterより引用) 尤も、実質賃金の場合は、新規雇用者が増える場合、(一般的に、新規雇用は既存雇用に比べて賃金が低いので)全体の(平均)実質賃金に低下圧力

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JGP(一定賃金雇用の無制限供給)は経済を救えるか

現在、日本経済は1990年代から続く20年来の不況(長期停滞)に悩まされています。 世界経済も、リーマンショック(世界同時金融危機)の余波を未だ脱し切れてはいません。 また、仮に今後こうした不況から脱することが出来たとしても、脱するまでに多くの人々が経済的被害を受けたことは払拭できません。 なぜ不況は起きるのでしょうか。 ミンスキーの金融不安定性仮説にもあるように、金融資本主義経済は、「バブルとその崩壊」というサイクルを不可避的に持ちます。あるバブルの崩壊を別のバブル

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失業率の構造、完全雇用、残業代の経済学

今回は、雇用・労働に関する諸概念について検討していく。 日本の失業率を考える場合、国際比較に基づいて、「日本の失業率は国際的に見て低い」ということはよく知られているところと思う。 (データブック国際労働比較2016より引用) しかしながら、失業率の単純な国際比較では、各国の景気動向や成長動向、雇用システムの良し悪しを評価することはできない。 失業率の構造を理解することで、そうした短絡的な誤解を未然に防ぐことが出来る。 また、国際的に見て失業率が単に低いことそれ自体が

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