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ミステリー小説ロンドの旅Chap4.ユールマラの事件8.虚勢

一通り話し終えると喉を潤した。時折見せるジルコニアの綺麗な歯列もまた彼の成功を物語る。自分を必要以上に大きく見せた経験は誰しもあるだろう。周りによく見られたい、すごいと思われたいという感情は、多寡はあれど人間の性。理性でコントロールしたところで、ないものにはできない。周りにどう見せるかだけの話だ。隠すことが美徳だと思う人、あえてひけらかし笑いにする人、心から自分は他者より優れてると信じ自慢する人。多種多様であるが、目の前に座る人物は常人のそれを遥かに超越していた。この特殊な装飾を施した部屋が最たる例であり、ここに至るまでに目にしたインテリアや建物の内装、そして極めて堅牢なセキュリティ。そのすべてが、彼の自己顕示欲を極限まで満たす。

 さあて、幸引さんA常務がどう難局を乗り越えたか分かりますかな?ちなみに鍛鋸さんは即答で正解でした。

このニンマリ顔からクイズの出題者の立場を楽しんでいることが容易に分かった。わざわざソナタがすぐ答えられたという情報を伝えることで闘争心を焚き付けてこの"ゲーム"をより盛り上げる魂胆だ。だがその目論見は一瞬で崩れた。

 てんしょく

 一般的なコンプライアンスと"ゲーム"のルールを遵守していることが前提だとしたら、SILVER社もしくはKNIGHT社のLANK3社員をGOLD社へ転職させる…とか、ですかね〜

 ご名答!ノーヒントでよくぞお気づきに。やはり御社は優秀な人材しかいないようだ。こんなに小さなお嬢さんまで。

 …。
 
この部屋は少し寒い。きっと主が暑がりのため気温を低く保っているのだろう。それでも彼はハンカチを片手にしばしば顳顬から頬にかけて垂れる汗を拭う場面が見られた。体温調節なのか、将又冷や汗なのか。もしそうなら、何か後ろめたいことを隠しているのか。見た目はいくらでも着飾り偽ることはできても、人間の本質はそうはいかない。親子はこうした一つ一つの反応から対面する相手の心理を読み解く訓練も受けてきた。きっと、これまでの一連の動きから何かを察しているのだろう。

 ただ、それ自体は合法かも知れませんが、乱暴なやり方ではありますね。その転職が本当にご本人が望んだことであればまだ良いのですが。転職させた方法によっては、必ずしも良策とは言えないでしょう。

 ええ…このA常務の"奇策"がのちに弊社の存続をゆるがす大きな事件を引き起こす契機になったのです。当時の関係者はこの事件をこう呼びました。-------"成銀事件"と。

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