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クラシックや伝統芸能の舞台制作について

前回は「演劇制作」について詳しく書きました ▼

ひきつづき、舞台制作という仕事の内容について、
今回は、クラシック伝統芸能の舞台制作について、説明をします。

とは言え私自身すこしばかり見聞があるのみで、演劇ほど詳しくはありません。

また今回書く内容についても、会社や団体によってやり方は多岐に渡るので、以下に書いてあることが、全て正確ではありません。その点はご了承ください。

さて。

本題にもどりますが、実は演劇以外のジャンルの舞台芸術でも、多少のしきたりや手順は異なりますが、おおよそ演劇制作と流れは同じです。

クラシックコンサートの場合

まずクラシックコンサートを制作する主催者となるのは、

  • 演奏者自身(自主公演)

  • 劇場の運営団体

  • マネジメント会社

この3パターンがほとんどです。

演劇と比べると、稽古期間がほとんどなく、また演出家が不在で細かな演出プラン(美術、照明、衣装、小道具etc)が不要なので、その分がコンパクトになるイメージです。

公演期間も1日〜数日である場合がほとんどなので、演劇公演のように上演日が1週間以上にわたるようなことも少なく、その点でもコンパクトといえます。

またソロコンサートの場合で、劇場やマネジメント会社が主催の場合であっても、演奏者は常日頃から練習をしているので、
制作者として「稽古」を実施することはほとんどありません
現場に立ち会うのは公演の前日あるいは当日のリハーサルくらいです。

なので制作は、簡単に以下のような流れで動きます。

  • アーティストをオファー

  • 演奏場所のブッキング(あるいは自分の劇場のスケジュールをおさえる)

  • アーティスト(やマネージャー)と相談し、曲目(プログラム)を構成

  • 宣伝広報

  • チケット販売

  • 劇場リハーサルの上、公演の開催

室内楽〜オーケストラなどの出演者が複数人数の場合も、曲目が決まれば、各自が予習をした上で稽古(リハーサル)をするので、舞台稽古を含めても数日で済む場合がほとんどです。

またオーケストラであれば、オーケストラ自体に専属のスタッフが付いているので、制作としてはオーケストラスタッフと演奏するホールとの橋渡しをして興行としての利益を上げることが主な仕事となります。

またオーケストラ団体が自主公演として主催する場合もあるので、
この場合はオーケストラスタッフがその公演における「制作」担当ということになります。

あるいは、ホールに専属しているオーケストラ団体は、
オーケストラスタッフとホールスタッフが同団体の社員や職員となるので、企画制作から上演までのすべてを自前でまかなうことができます。

ほかにも、海外のアーティストやオーケストラに出演を依頼する場合は、日本側でのマネージャー代わりの業務を担う、
海外アーティストの招聘やマネジメントを専門とする会社との交渉となる場合が多いです。
そういった招聘会社やマネジメント会社自身が公演を企画制作して、「制作」担当となる場合も多くます。

オペラやバレエの場合

オペラやバレエの場合も、およそクラシックコンサートと同じ形式で進められますが、やはり大きく異なるのは、演出プランが加わるということです。

美術、照明、音響、衣装など、演劇と同じような演出項目が増え、その分、舞台も大掛かりになります。

そして、公演を企画制作にするにあたっては、以下2点の方法があります。

  • オペラ劇団やバレエ団としてのパッケージ公演を招聘する

  • その公演限りで集まったカンパニー公演として企画制作する

演劇制作でも触れましたが、「パッケージ」というのは、公演そのものをひとつのパッケージとして丸ごと購入して上演する、という方式です。
出演団体側としては、演目ごとに、ある程度決まった出演者や演出プランのパッケージがあり、それをそのまま劇場に持ってくるイメージです。

そのため、バレエやオペラにおいても、前者のパッケージ公演であれば、団体と公演を開催するホールとの橋渡しをして利益を出すことが制作のメインの役割です。

尚、この場合も劇場付きの制作が主催となる場合があり、その場合は団体との条件のすり合わせをして公演上演までを行うことが制作の仕事になります。

後者のその公演限りで集まる「カンパニー」の場合は、一から出演者とスタッフを集め、稽古を経て、本番を迎えることになるので、商業演劇の制作と同じ形になってきます。

またバレエ団やオペラ団体自身が企画をするとしても、新作演目の場合、いちからスタッフを揃えて、演出プランを練るところから始まるので、およそ同じような流れとなります。

特に海外オペラの場合は、舞台美術衣装をはじめ、各スタッフ陣も国内外問わずその道のプロを起用する場合が多く、演劇よりさらに大掛かりになる場合が多くあります。

ちなみにオーケストラと同じように、ホールに専属しているオペラ劇団やバレエ団もあるので、その場合は企画制作から上演までのすべてを自前でまかなうことができます。

伝統芸能の場合

伝統芸能(歌舞伎や文楽、能狂言、落語など)の場合の制作者も、クラシック等と同じで、大きく分けて下記3パターンとなります。

  • 出演者自身(自主公演)

  • 劇場の運営団体

  • その伝統芸能を専門に製作する会社や、マネジメント会社

伝統芸能の場合、新作の作品でなければ、出演者自らが常日頃練習している演目を上演する場合が多いので、
劇場制作での単発の公演に関しては、劇場制作が稽古自体に携わるのは0日〜数日でも公演を上演することが可能です。

つまり制作はクラシック公演とほぼ同じで、下記のような流れとなります。

  • 出演者をオファー

  • 劇場のブッキング(あるいは自分の劇場のスケジュールをおさえる)

  • 出演者(やマネージャー)と打ち合わせ、演目を構成

  • 宣伝広報

  • チケット販売

  • 舞台稽古の上、公演の開催

舞台美術等についても、定番演目であればすでに形式が揃っていたり作り慣れていたりするので、演劇ほどの綿密な打ち合わせが必要ない場合もあります。
また能狂言や落語であれば「能舞台」や「高座」さえあれば公演ができるので、そうした上演に慣れた劇場であれば準備もしやすいです。

ただし伝統芸能の場合、専門劇場(大きいところだと歌舞伎座や国立文楽劇場などそのほか各地の能楽堂、寄席等)になると、
劇場の運営団体製作会社やマネジメント会社が、近しい関係にあったり、経営母体が同じ場合もあるので、
この場合においては、制作担当が稽古にしっかりついて、常日頃から出演者や各スタッフとコミュニケーションを取りながら、公演準備を進めることになります。


さて。
演劇制作と比べると、かなりさらっとした説明になってしまいました。

もし「こんなことを聞いてみたい!」ということがあれば、コメント等でお聞かせください。
私が知っている範囲であれば、記事にしてお答えいたします。

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