肉に税金がかかる時代がやってくる

ロンドンを拠点とする250兆ドル規模の世界的な投資家ネットワークであるFAIRRイニシアチブは先日、彼らの最新の報告書の中で、新たな炭素税によって世界の食肉会社40社が2050年までに最大116億米ドルの利益を失う可能性があると見積もったことを発表しました。

同報告書は、世界農業の温室効果ガス総排出量の半分を占める家畜からの排出量に炭素税を適用するために、政策立案者の間で「勢いが高まっている」ことを強調した内容となっています。

実はFAIRRイニシアチブの報告書以外にも肉への課税は近年多く議論されていまして、ランセット委員会の2019年度報告書は肥満、栄養不良、気候変動を調査し、赤身肉に課税することを提案しています。さらにEUは、業界の炭素排出量、汚染、森林破壊や生物多様性の損失を補償するために、肉に「持続可能性の税金」を検討していることも報道されているのです。

既にニュージーランドは農場単位での排出量への課税を開始する意向を表明しています。ただし、家畜からの排出量の測定と価格設定は複雑であることから、実際に課税がスタートするのは2025年以降になる予定だそうですが。

今回のFAIRRのレポートによると、石油・ガス、鉱業、公益事業会社の23%が気候変動リスクの認識と対応について公表しているのに対し、食肉産業では大手企業のうちたった5%しか公表していないとも記載。いかに食肉産業が気候変動への対応が遅れていることを示しています。

今後、気候変動の影響により、食肉産業は飼料コストの上昇、水供給不足、家畜の死亡率の上昇、異常気象によるインフラ被害などの環境要因の変化をもろに受けることになると予測されています。食肉への課税がなされるか以前に、食肉産業にとってはかなり厳しい状況が強いられるのではないでしょうか。

今後、温室効果ガス排出量の高い工業型の牧場が減り、排出量の少ない放牧牛の需要が伸びるのか。それとも、今注目の代替肉が普及するのか。はたまた昆虫食か。2020年代の大きな変化の一つとなることは確実です。


こんにちは。ベトナムのホーチミンに住んでます。Pizza 4P'sというレストランのサステナビリティ担当です。