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13年目──震災の記憶は消えようとしている (Oisixやれいわ新選組など)

加藤文宏


はじめに

 東日本大震災について話をしているとき、「それは知らない」と言われる話題がとても増えた。
 津波の被害を受けた沿岸部を行脚した若い仏僧を、新聞とテレビだけでなくネットメディアも報じたが、ある人は「知らない」と途方に暮れ、別の人は「忘れたかもしれない」と視線が宙を泳いだ。福島第一原発で水素爆発が発生したのは何月何日だったか、それは一度きりのできごとだったのか、複数の建屋で発生したのか、テレビ報道に釘付けになっていたはずの世代でさえわからなくなっている。
 2011年に中学生だった世代以下は、何ひとつ憶えていなくても当然かもしれない。彼ら若い世代も既に20代だ。
 こうしたなか食材宅配を行うOisixの会長が今更ながら処理水を「汚染水」と発言した。また同じように「汚染水」を連呼したり、福島県での被害を捏造するれいわ新選組支持者がいる。震災と原子力災害を、もうどうでもよいと思う層、はるか遠い時代の出来事のように感じる層が、これからはあたりまえになる。


飛び込んできた緊急速報

 2017年に福島県浪江町を取材したときのできごとだ。国道6号を南下しながら浪江町へ入ろうとしていたとき、南相馬市と同町の境界でスマートフォンがけたたましく警戒アラートを鳴らした。
 慌てて運転していた自動車を路肩に停めた。壁面のガラスをすべてベニヤ板で覆っている、廃墟然としたコンビニの真横だった。現在のセブン・イレブン南相馬小高福岡店だ。
 「浪江町です。原子力発電所の事故により、浪江町に広域避難の指示が出ました。安定ヨウ素剤は、浪江町地域スポーツセンターで受け取ってください」
 まさか、また事故か。目を凝らすと、「訓練」の二文字があった。

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