【1分小説】ひみつの月明かり
お題:「くちづけ、空想、鏡越し」
お題提供元:お題bot*(https://twitter.com/0daib0t)
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誰にも言わないでね。
同じクラスのユウキ君が、毎晩私の部屋に来てくれるんだ。部屋の姿見の中に。
彼はいつも静かに、鏡に映った窓辺で本を読んでいる。話しかけたいけれど、声を掛けたらいなくなってしまいそうで。
だから私は、鏡を見ながら同じ場所に座る。一緒にいられる気がして、それだけで嬉しかった。月明かりがこんなに温かいなんて。
*
白いカーテンがふわりと揺れたことに、サヨは気付かなかった。そのまま眠り込んでしまったのだ。
姿見のユウキが、本を閉じた。
自分と同じ場所にいる、鏡の中のサヨを見つめる。そして彼女の頬に唇を寄せると、窓から外へ出ていった。
「ふふ」
サヨは眠りの中で微笑んだ。