子供を産む理由

私は至って健康体だ。子供を産むことができる体をしているし、相手がいないわけでもない。ただ、子供を作る理由を理解できずにいる。

私の家は母、父、兄、私の4人家族だ。今でこそ、そこそこ仲の良い「普通の家族」なわけだが、幼いころから兄の反抗的で雑な性格と、母の頑固で細かい性格が噛み合わないことが原因で喧嘩の絶えない家だった。

特別自分に害があったわけではないが、母親の泣き顔を見るのが辛かった私は、よくウォークマンを握りしめながら耳栓の代わりにイヤホンをし、真っ暗な部屋で布団に潜っていたものだ。

子供ができると「自分がされたことを子供にもしてしまう」とよく言う。そんなことは更々御免だと今はいえるが、実際育ててみなければわからないこともあるのだろう。

自分が子供を産むことも、ましてや育てることも想像はできない。

親の注意を聞かずに騒いで人に迷惑をかける子供を愛せるか?信じている親に対して嘘をつく子供を信用できるか?自分が愛着を持って買った家具に糞尿を掛けられても許せるか?何も言わずに親に唾を吐きかけて家を出て行った子供を何時間もかけて探せるか?反抗期を迎え殴ってくる子供に愛情を注げるか?

私には無理だ。残念なことにそんな覚悟は持ち合わせていない。

普通に育てたらそんな子にならない、とでも言われそうだ。しかし、そもそも「普通に育てる」とは何なのか。子育てに正解はない。

人の命に対して責任を負うのだから軽々しくは考えられない。

例え旦那に子供が欲しいと言われたとしても、上記のすべてを受け入れられる覚悟を持ち合わせるまで子供を産んではいけないと思う。それが「子供をつくる」ということなのではないか。

最近児童虐待のニュースをよく目にする。様々なバッシングが飛び交っているが、自分がその当事者にならない保証はどこにもない。

男性は女性の立場に立って子供をつくるということを考えたことがあるだろうか。女性が子供を産むまでの体への負担は計り知れないものだろう。出産時も、産後も、全て体に負荷がかかるのは女性だ。その上、世の中には家事も育児も手伝わない男性がいるらしい。

旦那の面倒を見つつ、部屋を片付け、洗濯をし、手のかかる子供にご飯を食べさせ、お風呂に入れ、夜な夜な泣き出すのを自分の睡眠時間を削りながらあやす。

こういったことをメリット、デメリットで考えることは自分でもどうかと思うのだがどうもメリットがあまり思い浮かばない。

成長を見守る楽しみくらい…だろうか。


正直な話。私はそれなら犬を飼い、大事に育てるだろう。

一千万以上ものお金を費やして子供を育てる。

その果てに何が待っているのか。

私はまだ、知りたいとは思えない。




おわり。

2020.7.19 morita


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