Morin's Music

森山至貴。合唱音楽を中心とした作曲家です。第22回朝日作曲賞受賞。作品はBRAIN M…

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森山至貴。合唱音楽を中心とした作曲家です。第22回朝日作曲賞受賞。作品はBRAIN MUSIC、音楽之友社、教育芸術社、Pana Musica、カワイ出版、Edition ICOTから出版されています。

最近の記事

森山至貴作品個展Vol.1 全曲音源&作曲者コメント

(本記事は、2024年3月15日から4月2日にかけてX(旧Twitter)上に森山至貴が投稿したものの転載です。記事投稿に際して誤字脱字等を訂正しています) 2024年3月9日に札幌の混声合唱団リトルスピリッツによって拙作個展が開かれました。演奏会の興奮冷めやらぬうちにYouTubeに全曲の音源を公開していただきましたので、ご紹介しつつ作曲者コメントを書き記していきます。目次からお好きな曲に飛んでお聞きください&ご覧ください。 オープニング 「最初の質問」「最初の質問」は

    • 森山至貴作品個展Vol.1 

      札幌で活動する混声合唱団リトルスピリッツのみなさんが、私の合唱作品だけを集めた演奏会を開催してくださいました。作曲家として、これほどに光栄なことはありません。これ以上は望むべくもない、というような名演の数々に、ああ、作曲家を続けてきてよかったな、と感じる幸福な一夜を過ごすことができました。 演奏者のみなさんへのお礼と、演奏会に来られなかった方への演奏曲紹介などを兼ねて、簡単に各ステージの感想を書きます。個展が開かれることなど一生でそう何度もあることではないので、ちょっと自慢

      • リモート合唱「うたのなか」舞台初演

        ようやくの舞台初演 コロナ禍において作曲し、オンラインで初演した合唱のための「うたのなか」という作品があります。 この曲、楽譜も出版されているのですが、おそらく舞台では初演されていませんでした。 このたび、Collegium Cantorum YOKOHAMA 第17回定期演奏会にて、ようやく舞台初演をしていただきました。一応出版譜にも舞台上演のための演出案は書いてあるのですが、今回は団員の方が一から演出プランを作ってくださったうえでの演奏でした。照明や会場後方を使った

        • 『鳥をつくる』に関するノート

          『鳥をつくる』が出版されました  2023年6月15日に、混声合唱組曲『鳥をつくる』の楽譜がブレーンから出版されました。 混声四部合唱(div.なし)とピアノのためのオーソドックスな組曲であり、合唱団の規模や団員の世代を問わない親しみやすい曲(のはず)ですが、この組曲を書くに当たっては、ある音楽的な課題を自らに課していました。 その課題を知ること自体はこの作品を歌うにあたっても聞くにあたってもほとんど必要ではないのですが、「こんなことを考えて作曲している人もいるんだなあ

        森山至貴作品個展Vol.1 全曲音源&作曲者コメント

          「音楽である私」「音楽がぼくに囁いた」作曲ノート(1) 構想から作曲へ

          リモート合唱に特化したtuttiiというWebサイトの企画に指揮者として参加するから、何かリモート合唱らしい新曲を書いてくれないか、と指揮者の三好草平さんから連絡があったのは、2020年の7月下旬のことでした。それ以前に三好草平さんとのタッグで「うたのなか」というWeb会議システムを使ったリアルタイム演奏によるリモート合唱曲を制作していましたので、また面白いことができそうだ、と二つ返事でお引き受けをしました。 では、リモート合唱で今度は何をやろうか? tuttiiではそれぞ

          「音楽である私」「音楽がぼくに囁いた」作曲ノート(1) 構想から作曲へ

          リモート合唱「うたのなか」備忘録(3) 映像公開・後日談

          世界でまさにその瞬間に同時に鳴っていた音たち 「うたのなか」は映像が公開されることを想定して作曲しており、楽譜上に視覚効果に関する指示もあります。当然、映像を録画し、公開することにしました。ただし、zoomで記録できる音声そのものでは音質がやはり悪いので、各自手元で録音したものを合成することにしました。 では、タイミングに関してどういう基準で合成するか? 私たちは、「時計合わせ」方式を取りました。たとえば、歌い手がそれぞれの時計で14:30ちょうどに手をたたき、そのあとで演

          リモート合唱「うたのなか」備忘録(3) 映像公開・後日談

          リモート合唱「うたのなか」備忘録(2) 楽曲・演奏

          「ずれる」よりも厄介な問題実は、「ずれる」問題を解決する方法は、とてもかんたんです。「ずれてもよい」曲を書けばいいのですから。たとえば、合唱曲にかぎらずかなり多くの楽曲に含まれるドミナントモーション(単純化すると、「ソシレ」の和音から「ドミソ」の和音への進行です)は使えません。ずれによって前後の和音が重なると濁るからです。しかし、旋法を基礎におく和音進行を用いれば、重なると独特の美しい響きがします。 また、言葉がずれて聞こえる問題は、詩句をソロで歌ってもらい、その他の歌い手

          リモート合唱「うたのなか」備忘録(2) 楽曲・演奏

          リモート合唱「うたのなか」備忘録(1) 企画意図と下準備

          新しい曲は不要ですか?COVID-19の流行によって、合唱団の練習や本番が軒並み中止される中、多くの歌い手がリモート演奏動画を作成し、動画サイトにアップロードしています。その試みに敬意を表しつつも、作曲家としてはやるせない気持ちになっていました。みんなどうして、過去の名曲ばかりを演奏するのだろう? もう新しい曲は必要とされていないのだろうか? 私は、作曲家も同時代の合唱音楽を一緒に作り上げてきた、と勝手に思っていましたし、今もそう思っています。にもかかわらず、この「非常時」

          リモート合唱「うたのなか」備忘録(1) 企画意図と下準備