4/1 ペン売り場の落書き
「二月二十九日生まれだからまだ四歳」という落書きを、小中学生のときによくやっていた。二〇〇五年前後のことだ。どこに落書きしていたかというと、駅ビルに入っている文房具屋の色ペンを試し書きするための細長い紙だ。たいてい「あ」とか「〜〜」しか書かれていなくて、味気ないなと思っていたので、花を添えるつもりで何か書こうと思って思いついたのがそれだった。ちなみに本当の誕生日は十月五日だ。毎年ある。なんでそんなことをしたのかというと、多分なんか面白そうなことを言いたかったのと、誰か反応してくれたら嬉しいなという気持ちだったのだと思う。落書きをしたあと買い物をして再び戻って見てみると、ときどき誰かからのコメントが書いてあったりした。試し書きの細い紙は5センチ×50センチくらいのもので、一日ごとに新しいものに替えられているらしい。ひとつでも何か反応があるととても楽しかった。よく思い返してみると、インターネットみたいなものだった。匿名で何か書き込んで、知らない人からコメントがきて、しかも書き込みの内容は構ってもらいたいがための嘘だった。
その後、二〇〇九年にはリアルDeCooという独り言を壁打ちするインターネットサービスにどハマりし、二〇一一年には無事ツイ廃になった。最近SNSに疲れてきて、あの紙の落書きが懐かしい。あの落書きをしていた駅ビルは、建て替えのために昨日閉館した。今後どんな駅ビルになるのかは、まだ知らされていない。
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