人生、転職、やり直しゲーム 第1章

【俺が運ぶ】

ダンプで皆が会社に戻ると設計課の若い奴が言った。
「無能さん、今日は、産廃中間処理施設は休みですよ」

「このまま、会社の駐車場にトラックを置いておけばいい、
俺が月曜日に運搬する」

「無能さん、忙しいんじゃないですか?
俺たちでやりましょうか?」

「いや、俺の責任で月曜日に運ぶ」

俺はなんとか誤魔化した。
産廃中間処理施設は、
廃家電や家具を圧縮してから、一度保管するだけだ。
保管ではなく、
本格的に処分する方法じゃないとダメなんだ。
完全に処分するには、
最終処分場にある大穴に捨てるのが一番いい。
ゴミは埋め立てるのに限る。

俺は、皆が解散してから、
自分の車のトランクから、ブルーシートに包まれた
勘太郎の遺体を取り出した。
暑かったせいか、臭いがする。
脳みそや内蔵あたりから腐ってきたのだろうか。
ブルーシートを開く勇気は俺にはなかった。
トラックの中の古く色あせたタンスの引き出しを開け、
勘太郎の遺体を入れて引き出しを閉じた。
子どもを隠すのにちょうどいいタンスだった。
俺は、荷台の大量の引越しの荷物から、金属バットを取り出した。

俺は、昔野球部だったんだ。
ぶん!
スイングすると、風を切る、俺の大好きな音がした。
俺だって、昔、青い春があったんだ。
今は売っている春の方が好きだが。

大仕事は暗くなってからだ。
英気を養ってからにしよう。

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