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【画家・絵本作家の声】鈴木まもるさんインタビュー~「森にあつまれ“鳥の絵本”原画展」によせて

 こんにちは、森のおうちの米山です。
 2023年、年間企画展テーマ「森よ!」の第3弾は、飛ぶ姿に様々な想像をかきたてられ、希望を託して描かれることの多い“鳥”に焦点をあてた絵本原画展です。

 今回のnoteでは、絵本『鳥の巣ものがたり』と『ツバメのたび』を描いた絵本作家・鈴木まもるさんのことをお伝えします。

鈴木まもるさんについて

 鈴木まもるさんは、これまでに何百冊も絵本や童話の挿絵などを手がけ、大人気の絵本作家さんであり、鳥の巣研究家としても活躍されています。
「鈴木まもる 鳥の巣研究所」サイト

 1986年に東京から静岡県伊豆に転居されてから、野山でみつけた鳥の巣の造形的魅力にとりつかれ、国内外での収集、独学で巣の研究をしてきたとのこと。

 今回の展示でも、鈴木さんが世界を歩いて収集した本物の鳥の巣も一緒に展示をしています。

原画と実物の鳥の巣を対応させて設置しているおもしろさ!

 今回の企画展では、絵の迫力をしっかり楽しめる『鳥の巣ものがたり』と、最も身近といえる鳥の物語『ツバメのたび』のすべての原画をご覧頂けます。
 鈴木さんに2冊の絵本、それぞれについて、創作のエピソードやみどころを伺いました。

『鳥の巣ものがたり』について

『鳥の巣ものがたり』 鈴木まもる/文・絵(偕成社)

<以下、文・鈴木まもる>

 ある日散歩をしていて、ポッと「ぼくの鳥の巣絵日記」「鳥の巣いろいろ」「鳥の巣ものがたり」という3部作を作ろうと思いました。
山の中で暮らし、1年間の日常の中で見聞きする鳥さんや自然を定点観測的に描いた「ぼくの鳥の巣絵日記」。
小さいお子さんに、いろいろな形の鳥の巣の意味と大切さを伝えようと思った「鳥の巣いろいろ」。
新しい生命を育てるために世界中の鳥さんが巣作り、子育てをしていることを「鳥の巣」というキーワードでつないだ『鳥の巣ものがたり』です。

 東南アジア、オーストラリア、アフリカ、ヨーロッパ、我が家の周りなど、「あそこはこうだったなあ」「あの子たちは今頃どうしているかなあ」等々想いながら絵を描きました。

 日本は比較的温暖な気候で外敵もそんなに多くはありません。でも海外に行くと、もっと過酷な環境もあります。そんな多様な世界の中で多様な巣作りをして新しい生命を育てている鳥さんたち。
小さな鳥の巣の向こうに大きな地球の多様な自然があることを感じてもらえると嬉しいです。

  「ぼくの鳥の巣絵日記」2005年、「鳥の巣いろいろ」2006年、と完成し、「鳥の巣ものがたり」は3部作の最後ということで、2007年完成しました。鳥の巣の多様な世界を描きたくて毎日楽しく絵を描いていました。今回原画の展示はありませんが、他の2冊の絵本も観ていただけると嬉しいです。勿論鳥の巣の絵本は、それ以外にもたくさんあるし、鳥の巣以外の絵本もあるので、ぜひ見てくださいね。

偕成社のウェブマガジン「Kaisei web」
「知って楽しい鳥の巣の世界!鳥の巣研究家・鈴木まもるさんの本」
より


『ツバメのたび』について

『ツバメのたび』 鈴木まもる/作・絵(偕成社)

<以下、文・鈴木まもる>

 寝る前に、町の上を飛ぶ鳥さんの絵が、心の中にポッと出てきました。次には田んぼの上を飛ぶ鳥さんが出てきました。それから海の上、暗い夜…。なんだろうと考えたら、「鳥さんが、どこかからどこかへ飛んでいくんだ」「そうか渡り鳥か!」と想いあたり「ツバメのたび」の制作が始まりました。

 それまでに何度か東南アジアに鳥の巣を探しに行っていました。早朝散歩していて、ビュンビュン気持ちよさそうに飛ぶツバメさんや、高層ビルの下を飛ぶ姿を見ていたからかもしれません。 そんな飛んでる気持ちよい絵本が描きたくて、ツバメさんの目線で絵を描こうと思いました。

 渡りのルートを調べていたら、大分県の豊後水道に「渡り鳥館」というのがありました。鳥は夜でも星座や月明かりを感じ渡りをします。でも、濃霧の夜、灯台に当たって死んでしまうことがあるようです。
豊後水道の海上にある水の子灯台の灯台守さんが、朝、灯台に当たって死んだ鳥さんをはく製にするようになり、それを集めて展示してあるそうです。
「それは行かねばいけない」と大分に飛んでいきました。
町から外れた小さな湾に「渡り鳥館」はありました。ツバメさんだけではなく100種以上の鳥さんが展示してあり感動しました。
近くに住む漁師さんにも、海上を飛ぶ鳥さんの様子を聞くことができたし、小雨降る暗い夜の灯台の姿や往復の飛行機の窓からの映像を心に焼き付け絵を描きました。

原画展によせてのメッセージ

鈴木 まもる さん

 このたび、森にあつまれ「鳥の絵本」原画展ということで、「ことりのデパート」絵・まるやまあやさん、文・苅田澄子さん。「よだかの星」絵・伊勢英子さん、作・宮沢賢治さんの2作品と一緒に展示させていただけることになりました。どうもありがとうございます。

 鳥の巣というと、鳥の家だと思っている方がいますがそうではありません。卵を産むときに作り、ヒナが巣立つと、もう使いません。通常は雨や雪なので、壊れてしまうので、毎回繫殖期に新たに作ります。展示してある鳥の巣は、ヒナが巣立ってもう使わない鳥の巣なので、鳥さんが困ったり、自然を壊すということはありませんから御安心ください。

 色も形も様々な鳥さんたち。空を飛ぶ自由さと、愛らしい姿、美しいさえずりで昔から世界中で愛されてきました。
世界中には約1万種の鳥さんがいると言われていますが、現実的には人間が引き起こす環境悪化が原因で、近年多くの種が住む場がなくなっているようです。地球の上に暮らしているのは人間だけではありません。
鳥さんに限らず、多くの生命が生きていられる地球であることを願っています。

鈴木 まもる

講演会について

 とてもパワフルに活動されていて、お話もとても楽しい鈴木さん、森のおうちでの展示作業の時も首にタオルを掛け、裸足で駆け回っていました。

 そんな、鈴木さんの講演会「絵本と鳥の巣の不思議~鳥の巣が教えてくれること」を、2023年6月4日13:30~予定しています。
当日は、「鞄に鳥の巣を20個入れていきます。実物をお見せしたり、絵を描いたり、写真を見せたり、いろいろわかりやすくお話しします!」とのこと。楽しみです。

 講演会終了後には、サイン会も予定しています。
 鈴木さんのサインはどれもとても素敵です。

 もう、日も近くなってきて、定員(50名)まであとわずかになっております。ぜひ、お早めにお問い合わせ下さい!

原画展について

森よ!VOl.2●2023年4月14日(金)~7月3日(月)
森にあつまれ「鳥の絵本」原画展
<展示作品>
『ツバメのたび』 鈴木まもる/作・絵(偕成社)
『鳥の巣ものがたり』 鈴木まもる/作・絵(偕成社)
『よだかの星』 宮沢賢治/作、伊勢英子/絵 (講談社)
『ことりのデパート』苅田澄子/文、まるやまあやこ/絵(世界文化社)
 以上、原画全点
タブロー「よだかの星」 伊勢英子/絵
鈴木まもるタブロー作品
鳥の巣(実物)

絵本美術館&コテージ 森のおうち
開館時間●9:30~17:00※12月~2月16:30閉館(最終入館は閉館30分前まで)
休館日●木曜日※2月のみ水・木曜日(祝日振り替え、変更日あり・当館HPカレンダー参照)
入館料●大人800円 小・中学生500円 3歳以上250円 3歳未満無料
〒399-8301 長野県安曇野市穂高有明2215-9
TEL0263-83-5670
FAX0263-83-5885


最後までお読みいただきありがとうございます。 当館“絵本美術館 森のおうち”は、「児童文化の世界を通じて多くの人々と心豊かに集いあい、交流しあい、未来に私たちの夢をつないでゆきたい」という願いで開館をしております。 これからも、どうぞよろしくおねがいいたします。