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デザイン思考とアート思考(再考)

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これまでnoteで執筆した「デザイン思考とアート思考(再考)」関連の記事を集めています。
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2022年10月の記事一覧

課す役割、管理者の有無、拠点の配置

課す役割、管理者の有無、拠点の配置

 番外編⑩では、Dunne(2018)を通じて、デザイン思考を用いた組織文化の変革には多様なパターンがあることを見てきたが、ここでは改めて、それらを理論的かつ体系的に整理してみたい。考えなければならない事柄は大きく3つある。1つ目は、デザイン思考の伝道者たちにどのような「役割」を与えるのか。2つ目は、彼らを「誰」に管理させるのか。そして、3つ目は、彼らの活動拠点を地理的に「どこ」に置くのかである。

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組織文化変革の4つの事例

組織文化変革の4つの事例

 本編⑲のところでも述べたように、デザイン思考の導入を梃子にして、組織文化を変革することはそれほど容易なことではない。Dunne(2018)は以下の4つの事例を用いて、一口に「組織文化の変革」といっても、組織ごとに多様な目標があるだけでなく、用いられる手法も多岐にわたることを示している。

1.ATO(オーストラリア国税局)のケース
 1つ目のATO(オーストラリア国税局)のケースでは、目標は組

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デザイン思考と組織文化PARTⅣ

デザイン思考と組織文化PARTⅣ

 本編⑱のところで見たように、Dums and Mintzberg(1989)やCooper, Junginger and Lockwood(2009)は、デザイン思考にとっての理想的な組織文化とは「組織全体にデザインの考え方が浸透した状態である」と述べているが、これは言い換えると、デザイン思考がロジカルシンキングのように当たり前のノウハウとして組織内で広く認識され、多くの人々がそれを使いこなすた

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デザイン思考と組織文化PARTⅢ

デザイン思考と組織文化PARTⅢ

 前回は「デザイン思考と組織文化」をテーマにした先行研究のうち、両者の適合問題を取り上げた研究群を見てきた。今回は、もう一方のデザイン思考を組織文化の変革ツールとして捉えている研究群について簡単に振り返ってみたい。そこでは、デザイン思考を用いた組織文化変革の効果の有無や、デザイン思考を使いこなすうちに組織文化がどのようなものに変化していったのか(あるいは、それをどのように変えていったのか)などが主

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デザイン思考と組織文化PARTⅡ

デザイン思考と組織文化PARTⅡ

 前回は、デザイン態度(組織文化)との棲み分けの困難さを理由に、デザイン思考はなるべく拡大しない方が良いのではないかと述べた。しかし、そのような理由の他にも、既に多くの先行研究では暗黙のうちに両者を別物として扱っており、デザイン思考の概念拡張はその実態にそぐわない(あるいは、混乱を招く)のではないかという懸念もある。

 「デザイン思考と組織文化」をテーマに取り上げた先行研究には、大きく次の2種類

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