マガジンのカバー画像

デザイン思考とアート思考(再考)

35
これまでnoteで執筆した「デザイン思考とアート思考(再考)」関連の記事を集めています。
運営しているクリエイター

2022年5月の記事一覧

海外のデザイン思考研究との答え合わせ

海外のデザイン思考研究との答え合わせ

 拙著『デザイン、アート、イノベーション』が出版されたのが、2020年12月(出版データ上は2021年1月)。さらに、日本経済新聞での「デザイン思考とアート思考」の連載開始が2021年5月。それに対して、米国の『California Management Review』でデザイン思考の特集が組まれたのが2020年の冬号。さらに、欧州の『Journal of Product Innovation

もっとみる
デザイン思考が苦手なこと

デザイン思考が苦手なこと

 デザイン思考が苦手なことについては、様々なことが言われているが、ここでは、それらを理由と共に整理してみたい。

1.3つのFが苦手?
 まず、デザイン思考が問題解決活動の一種であることを鑑みれば、それに馴染まないものは扱いづらいということになる。この点につきヒントをくれそうなのが、消費者行動論での情報処理モデルを巡る議論である。消費者行動論では古くから、情報処理モデルでは快楽的消費(Hedon

もっとみる
人は皆、逸脱者PARTⅡ

人は皆、逸脱者PARTⅡ

 前回は、デザイン思考やユーザーイノベーションでは、人間を「状況に埋め込まれた(situated)存在」として捉える状況論的な人間観に立脚している可能性があることを指摘してきた。つまり、人間を「絶えず逸脱する生き物」と見做して、その逸脱部分を見つけ出そうとするところに、それらの方法の本質があると考えてきたのである。それでは、残るアート思考やデザイン・ドリブン・イノベーションは、どのような人間観に立

もっとみる
人は皆、逸脱者PARTⅠ

人は皆、逸脱者PARTⅠ

 これまで述べてきたように、デザイン思考の特徴の1つは、ユーザーである「あなた」をイノベーション活動の起点にすることである。そして、そのような特徴だけを見れば、それは経営学におけるユーザーイノベーションと似ている(von Hippel,2005)。ユーザーイノベーションもその名の通り、ユーザーを起点とするイノベーション活動だからである。ユーザーイノベーションでは、優れたアイデアを持つリードユーザー

もっとみる
自分を何に投影するのか?

自分を何に投影するのか?

 これまで見てきたように、デザイン思考にしてもアート思考にしても、自分自身を深く理解するために、一旦自分でない何かに投影するという部分については共通点を有している。そういったアプローチにならざるを得ないのは、人間は自分との「内なる対話」だけでは、自分自身を深く理解することができないからである。

 ただ、両者の間で決定的に異なるのは、自分を「何に」投影するかという点である。デザイン思考では一旦「他

もっとみる