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あの子の日記 「ゆらめいて」

日本のどこかの、誰かの1日を切り取った短篇日記集

今年の桜はとっくに咲いてもう散り始めてる。早いなぁ。春はこんなに早足だったかな。

花見のピークはとっくに過ぎてると思うんだけど、どうして散りかけの今になって開催するんだろう。せっかくなら満開の桜の下でお酒飲みながらワイワイしたかった。

中学からの友達と一緒にお酒を飲めるようになったなんて感慨深いよ。高校以降はみんなバラバラ。僕は大学に進学したけど、高校卒業してすぐに就職した人だっている。僕たちが出会った理由なんて生まれ育った場所が近かったってだけだけど、僕はそういう偶然を大切にしたい。

当時の僕は、はっちゃけるようなタイプじゃなかったけど、今はこうやって集まるのが好き。可愛かった新任の先生の話とか、当時好きだった人の話をするのは楽しいしすごく盛り上がる。

それにしても、杉崎さんが白井っちを好きだったのには驚いちゃったな。お上品で高嶺の花って感じの女の子が元気の代名詞みたいな男を好きだったなんて、当時は気付くはずない。

僕が好きだった杉崎さんは、白井っちが好きだったのかぁ。

内気だった僕は当然この気持ちを本人に伝えることはなかったし、今も「好きだったんだ」なんて言えない。お酒の力を借りたって僕には無理だ。

風に舞う花びらに僕の気持ちを乗せて、彼女に届けてくれたらいいのに。

今、君の髪がゆらめいたのは偶然かな。


あたまのネジが何個か抜けちゃったので、ホームセンターで調達したいです。