もりみ
みてみて!みなさんの大切なノートをぎゅっと詰めこんだらこんなに素敵になりました。
おひさしぶりです。もりみです。 2018年4月からはじめていたnoteへの投稿を今日でおわりにします。今後の更新はInstagramのみになるので、プロフィールページのURLから見ていただけるとうれしいです。 このアカウント自体は残しておくつもりです。投稿をすべて非公開にしたりアカウントを消したりする未来があるかもしれませんが、いまのところ、それは誰にもわからないようです。 noteをはじめたころに仲良くしてくださっていたみなさんはお元気かしら。わたしはいまだに物語を
爪が伸びたらどんなふうになるのだろう。えくぼはどのくらい深いのだろう。首のしわは何本あるのだろう。まつ毛はどこを向いているのだろう。おへそはどんな形だろう。雨に濡れるとどんなにおいがするのだろう。そんなふうに考えながら眠り、きみの夢をみる朝。
毛布が恋人あなたは愛人 短いまつ毛が似合う横顔 最初はグウでおなか鳴る
あたしのからだは通気性がいいらしい。そよ風も嵐もあたたかい風もつめたい風もみんなじょうずに通り抜ける。あたしのからだからあなたが消えたから、手も腕も脚もくちびるも心臓もすかすかになってしまっている。このすき間をあなたなしで埋められるかしら。あなた以外で埋められるかしら、あたし。
これは、白くうすい雲が空にぺったりと張りついているお昼すぎの話です。太陽はまだ高い位置にいるはずですが、わたしの目にはうつりません。 「ふゆの朝みたいにくもってるね」 まるい窓の外を見てわたしがつぶやくと、 「白い空は好ましくないな。きみはどう思う」 と例の男は言って、氷の入ったつめたいコーヒーに口をつけました。わたしは何もこたえず、コーヒーのかさが減っていくのを眺めていました。グラスのなかに三分の一ほどコーヒーを残した彼は、ソファに寝転び、安心した表情で目をとじていま
文章 ● タイポグラフィ もりみ ●さんのアカウントよりアナザーバージョンも投稿されます。どうぞおたのしみに。●さんの Instgram はこちら~。 たのしい Instagram と、 ナイスな suzuri もやっているよ。
俗に言うええ食パンが一本まるごとテーブルに置いてある。紙袋から取り出し、透明の袋をあけると全面が耳になっている食パンが現れた。食べものをくれよ、と寄ってきた飼い犬も全周パン耳みたいな色をしている。どちらを食べようか思案した結果、わたしはほんのりあたたかい犬の耳を口にふくんだ。
他人と自分の境界があいまいになるときがある。それは混ざりあったコーヒーとミルクみたいなものだ。水と油のようにぱっきりと境目を持つことが理想であるけれど、どうやらわたしのこころの表面張力はとても弱いらしい。ドレッシングを振ってしばらくのあいだ中身を眺める。いいなあ、おまえは。
犬と背中あわせで眠るのが好きだ。これは相手が犬でなくてもいいのだけれど、犬には犬の良さがあり、犬でないものには犬でないものの良さがある。どちらがより好きか、などというのは愚問である。
白いシャツのしわはそのままで、胸元のリボンは緩んだままで、スカートのプリーツは乱れたままで、わたしたちは例年どおり夏をむかえました。 すこし伸びた髪の毛は、束ねると仔馬のしっぽみたいにゆれてみせます。あなたの上にかぶさると、ざらざらしたそのほっぺをくすぐってみせます。 未来のことは考えないでいましょう。まいにち、まいにち、現在をくり返しているだけだから。この夏がおわるまで、あのくつ箱に隠れていましょう。
あなた以外のだれに伝えるべきなのか スマホを握ったまま迎える朝 置き忘れたジュースを回収する予定がない
あの部屋で拾ったきれいな指輪はわたしの指よりひとまわり小さい。細めの銀の輪っかに、雨あがりの空みたいにうつくしく透きとおった薄青色の石が乗っている。家主の友人の忘れものだろう、と特に気に留めず、指輪についたほこりを払って背の低い食器棚のうえに置いておいた。 この部屋は時間を知らない。目が覚めて、昼ごはんに何を食べるか思案していたら夜がくるし、夜がきたな、と濃紺に浸っていれば朝になる。すべての時間がさらさらと、半分に割った竹をすべるお素麺のように流れていく。気持ちがいいよ。あ
あの子の日記「インスタントカップル」をリメイクしました。さあ夏がちかいです。みなさん、夏バテしないようお水をしっかり飲みましょうね。 https://note.com/morimirimo/n/n2fa49d43b6bf
あまり遠くへ行かれないけれど、このくらいならいいでしょう。わたし誰にも気づかれないように雲のうえに乗っかるよ。まちに雨を降らせて人びとが空を見上げないように工夫するよ。どこも触らないしマスクもするし、しばらく息も止めるから。だから遠くのあの子のもとへちいさな旅行をさせてください。
春、なにもない日、10時50分。 嵐のような風が窓ガラスをたたいている。外はすっかり明るくて、画用紙の水色のような空がまぶしい。薄ぺらい布団を足もとに巻きつけ、人魚の気分で「てっちゃん、てっちゃん」と呼んでみる。ガラスの向こう、洗濯物のすき間でタオルを干している彼は振り向かない。 春、なにもない日、15時27分。 今年もアネモネがきれいに咲いた。赤とピンクとむらさきと、白がすこし。二重にかさなった花びらをおおきく広げ、鮮やかな色を太陽に向けている。好みの花びらの色をてっちゃ
タンスの取手に結んだリボンを、あなたは解いて帰ったね。つくえの隅に座った人形を、あなたは横にして帰ったね。閉まっていたカーテンを、あなたは開けて帰ったね。 わたしはひとりになってから、ひとつひとつを元どおりにする。そして別の日、あなたがふたたびやって来て、わたしたちは同じことをくり返す。 このリボンが解けたままなら、あなたはどんなふうにするのかしらん。そんな答えは知りたくないなあ。わたしたちの永遠が途切れないように、もう一度リボンをぎゅうと結ぶ。