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『CBDCデジタルユーロの実験開始。日本にとって円安を味方にできるチャンス』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.9.18

■アマゾンら5社、デジタルユーロの実験参加へ

欧州中央銀行(ECB)は16日、デジタルユーロのテストを行うため、IT大手アマゾンら参加企業を5社選んだことを発表した。

デジタルユーロは欧州の中央銀行デジタル通貨(CBDC)。今回選ばれた5社は、デジタルユーロのユーザーインターフェースのテストに参加する。このテストは、デジタルユーロプロジェクトの「2年間の調査期間」における重要段階であるとECBは説明。2023年の1Q(1月から3月)にはテストを終了させ、結果を公表する計画だ。

CBDCが社会実装されることが着々と現実味を帯びてきています。中国のデジタル人民元は北京冬季オリンピックの時に話題に挙がりましたし、日本でもCBDCの検討を進めています。

CBDCが世界中で普及すると何が起きるのでしょうか?

その前にCBDCとは何か?についてを知っておく必要があります。
このニュース内の短文の説明だと大事なところが伝わらないので、改めて詳しい記事をご紹介します。ご存じの方は読み飛ばして結構です。


■CBDCとは何か?

このサイトが非常にわかりやすいです。

まず広い意味での「デジタル通貨」があります。
これを3つに分類します。

1.国が発行する、法定通貨を基軸としたデジタル通貨=CBDC
2.主に民間が発行する、法定通貨を基軸としたデジタル通貨=電子マネー
3.主に法定通貨を基軸としないデジタル通貨=仮想通貨・暗号資産

上記サイトの図説で一目瞭然です。分類的には例外もあります。

ザックリした分類は上記の通りです。法定通貨にペッグしたステーブルコインもありますし、国が発行したデジタル通貨でもCBDCと位置付けないものもあります。

この分類では「ブロックチェーンを使っているかどうか」を分類の軸にしていないことに注目です。


■CBDCはブロックチェーンを使うもの?

仮想通貨・暗号資産はブロックチェーンを使うものだとして、電子マネーでもJPYCのようにブロックチェーンを使用するものが登場しています。

ではCBDCはブロックチェーンを使ったものと定義されるのでしょうか?またはブロックチェーンを使う予定があるのでしょうか?

CBDCとブロックチェーン
CBDCが世界規模で発行されるようになると、規模に関わらず非常に多くの経済圏が誕生するようになると予想されます。そしてそれらの経済圏をシームレスに繋ぐためには、通貨のインターオペラビリティ(相互互換性)が重要になると思われます。また、セキュリティ上の課題も多く挙げられることでしょう。そこで欠かせない技術がブロックチェーンです。

参考記事:『「インターオペラビリティ」〜ブロックチェーン同士を接続する新たな技術〜

つまり「きっとブロックチェーンを使うことになる予想」です。

今でも海外送金はできます。
銀行など金融機関が団体を作って独自に構築した送金ネットワーク(SWIFTなど)と、各金融機関に構築された送金にまつわるシステム、そして手続きや検証などを担う膨大な人間の労力を経て実現しています。

今でも外国通貨建てで買い物できます。
クレジットカード会社が両替の手間を手数料を取って仲介することで実現しています。購入から決済までの間の通貨価値の変動リスクや双方の通貨を交換できる十分な量(=流動性)の確保などをクレジットカード会社が担っています。

CBDCがなくても、別に今でも札束の現物を海外に輸送しているわけではありません。データだけのやり取りをしています。

それでもCBDCという新たなデジタル通貨を検討している意図は、仮想通貨・暗号資産と同じ通貨交換の仕組みに乗っかった方が何かと都合がいいからだと言えます。

詳しい人なら既にご存じだと思いますが、金融機関の送金ネットワークをほぼ無人化・分散化したものがブロックチェーン上のDEX(分散型取引所)です。そして流動性プールで通貨交換を行えることで異なる通貨間の決済を自動化することも技術的には可能です。

法定通貨の信用が低い国やSWIFTに入れない国、主にはアフリカや中南米などの新興国や非西側諸国などが、既存のブロックチェーンネットワークを使った通貨や決済システムを導入しようとしています。

エルサルバドルのようにビットコインを法定通貨化した国もあれば、アフリカ諸国のように中国のデジタル人民元を導入検討している国もあります。

ブロックチェーン通貨・決済勢が一大グループになりつつある中で、SWIFTとブロックチェーングループを従来の金融機関の人力と独自システムで接続するのは効率が非常に悪い。ブロックチェーン上なら瞬時に決済できるのにSWIFT経由だと数日かかり手数料も超高額、となれば主に西側諸国・先進国が競争力を失います。もちろん先進国間のSWIFT経由の決済も同様です。

SWIFTから排除する、ような超中央集権的な政治的武器をブロックチェーン決済で持たせるのは難しいかもしれませんが、国際競争力を維持するにはブロックチェーン技術での決済に移行するしかない、というのが大方の見立てです。


■デジタルユーロの実験の話

今回選ばれた5社は、それぞれが1つのユースケースに特化して開発に参加。テストに参加する企業名と、各社が担当するユースケースは以下の通りである。
・アマゾン:eコマースの決済
・CaixaBank:P2Pのオンライン決済
・Worldline:P2Pのオフライン決済
・EPI:販売時点情報管理システム(POS)の支払い人の決済
・Nexi:POSの受取人の決済

今回のデジタルユーロの実験は、ユーロ圏の国でユーロ建てでの決済に関するもののようです。つまり先に説明した外国通貨とのやり取りは今回の実験では対象外。

eコマースでの決済はアマゾン自身が販売主となるケース、P2Pのオンライン決済はマーケットプレイスのような店子と顧客間の決済や個人間の決済を想定しています。

面白いのがオフライン決済系。
小規模商店での導入やPOS管理されている大規模店での導入が想定されています。

将来すべての現金がデジタルユーロに置き換わり、給与の受け取りから引き落とし、店舗での決済、納税まですべてデジタルユーロになることを見据えると、どんな田舎の個人店舗でもデジタルユーロで決済できなければなりません。

技術的には可能であっても、年老いた店主が対応できるか、山奥や離島で設備導入できるかがカギになります。

今回選ばれた5社は、デジタルユーロのユーザーインターフェースのテストに参加する。

なので今回の実験の主旨が「ユーザーインターフェースのテスト」と位置付けられていることにも納得です。

これがうまく行ったら次は、異なる外国通貨との決済接続や、仮想通貨・暗号資産との即時両替での決済実験が待っているはずです。


■日本でCBDCが導入・普及したら

日本円の円安が進んでいる昨今、日本国内から輸入品を買うのはつらい状況ですが、裏返して外国から日本の商品を買うのはリーズナブルになっています。

送金・両替がCBDCやブロックチェーン技術によって安く簡単・確実になれば、円安をより活かした海外向けビジネスがやりやすくなるはずです。また外貨建てで売り上げておいて将来に備えるビジネススタイルもより個人レベルに広まるでしょう。

今それをやろうとするとボラティリティが大きく不安定な仮想通貨・暗号資産に頼るか、直接的な決済方法がないUSDCなどステーブルコインを貯金のつもりで買うしかないのが現状。

直接決済から納税までに使えるCBDCが普及することで、長期の円安トレンドも味方につけられるようになるのではないかと思います。

日本国内の実店舗ではあまりその恩恵は受けにくいので、今後CBDCが世界中で普及した際はやはりグローバル向けのオンラインビジネスがもっと伸びていくのだろうと思います。

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