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『トルコ・シリア大地震の支援に暗号資産を活用』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.2.11

■トルコ大地震、Web3起業家がブロックチェーンを使った支援表明

ブロックチェーン技術「Astar Network」を開発しているステイクステクノロジーズ渡辺創太CEOは新たな形での支援活動を発表した。Astar Network上で「Astar Charity」というプロジェクトを公開し、ステーキングをした人に報酬の一部を渡し、残りを寄付に回す。

トルコ・シリアでの大地震の被害が甚大です。
シリア側は内戦の影響で国際的な支援が入りづらい地域で被害が起きたことから、支援が行き届かずに亡くなる人災化も懸念されています。

日本でも大地震が起きた時は毛布や食料など物資を送ったりボランティアで労働力を提供するなどの支援の動きが展開されますが、遠く離れた場所で発災した場合はモノやヒトでの支援は難しく「お金」を送るのが現実的な選択肢となります。

赤十字や国境なき医師団など、現地で実際に支援活動を行う団体への寄付を通じて間接的に支援するのが一般的ですが、今回Astarの渡辺創太さんの支援プロジェクト「Astar Charity」では暗号資産投資スキームであるステーキングと組み合わせた支援方法を提示しています。


「ステーキング報酬の一部を寄付」は恒常的な災害支援向き

ただ今回のステーキング報酬の一部を寄付というスキームは、ASTRの知名度アップ、ステーキングによる買い圧発生・売り圧減少などを同時に狙ったようにも見えるため、トルコ・シリア大地震を支援するというスポット的な支援のシーンではもっと直接的でシンプルに寄付だけ促した方が誤解がなくていいとは思います。

ステーキングスキームなら、常日頃から国際災害基金としてプールしておき、ステーキング量に応じてどの災害に対してどの程度のプール金を使うかをガバナンス投票で決めるような運用方法の方が向いていると思います。

いずれにせよ現地が金銭支援されること自体は良いことです。


人道支援にステーブルコイン

「人道支援においてはスピードが肝心」とUNHCRの駐ウクライナ代表カロリーナ・リンドルム・ビリング(Karolina Lindholm Billing)氏
(中略)
計画では、バイブラント(Vibrant)と呼ばれるスマートフォン基盤のウォレットをダウンロードして、ステラ(Stellar)ブロックチェーンを通じて送られたUSDCを4500カ所の送金サービス「マネーグラム(MoneyGram)」取扱店でユーロ、ドル、ウクライナの通貨フリヴニャに換金することができる。

こちらのブロックチェーン活用方法の方が一般には分かりやすいはずです。

従来の銀行システムを介して国際送金するよりも暗号資産を送金する方が安価で手間がなく確実です。USDCのようなメジャーなドルペッグステーブルコインの方が最終的に受け取る人や団体も使いやすい。

寄付金の分配には暗号資産とは別の課題があります。
個人単位で受取口座用ウォレットを持ち寄付金を分配する仕組みを作り、というのはおそらく国家単位でやらないと難しく、今回のようにシリアの反政府勢力とされる地域ではシリア政府がサポートしない問題もあります。

つまり国連UNHCRや赤十字など直接支援活動を行う団体に寄付をするのが今存在する社会システムの中では実効的です。


災害支援が暗号資産に触れるきっかけに

これら国際支援団体が暗号資産での寄付を公に受け付けるようになれば、「暗号資産は銀行より簡単に安く振り込めた」という分かりやすい経験者を増やすことができますし、支援したいというきっかけで暗号資産やウォレットに触れ始める人を増やす効果もあるかもしれません。

国際通貨基金(IMF)は先日、フィンテック(ビットコインやその他の暗号資産を含む)は、非効率、不透明、時代遅れで知られる送金セクターをディスラプトするには普及は限られているとレポートで指摘。フィンテックは期待に反して、マネーグラムなどの既存の送金業に取って代わるのではなく、ますます伝統的金融の世界に取り込まれていると結論づけた。

web3や暗号資産は既存システムを破壊的イノベーションで駆逐するディスラプション文脈で語られることも多いですが、まずは普及させることの方が先決なはずです。

「ステーキング報酬の一部を寄付」はクリプトネイティブ向けすぎて既存金融を通じた寄付額を超えられず、ディスラプションは起きません。

災害支援についてはディスラプションを目指すことが目的ではないですが、手軽に送金できる暗号資産が普及することで災害支援につながれる人を圧倒的に増やせるとしたら、それもひとつのディスラプションです。

災害支援を通じた暗号資産のマスアダプションはあり得る方向性かもしれません。

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