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2021年9月の記事一覧
【徒然和菓子譚】その22
今回は墨型落雁のお話です。これにて一旦、徒然和菓子譚はおしまいとさせていただきます。
墨型落雁は長方形の墨を象った落雁で、金沢だけに限られた品ではありませんが、その発祥から発展に至る過程や文化的価値の高さ、更に藩主前田家のこだわりが結実して名菓「長生殿」を生んだ歴史などから考えても、加賀・金沢の菓子文化の一翼を担う存在と言えます。落雁と言えば、木の型に砂糖や米粉などを詰めて固めたものでありますが
【徒然和菓子譚】その21
今回も引き続き加賀・金沢のお菓子のお話です。金花糖と氷室饅頭についてお伝えしたいと思います。
金花糖
立体的に彫られた二枚の合わせ型に熱した砂糖を流し込んで成形し、色とりどりに着色して仕上げる飾り菓子です。主にひな祭りを中心に用いられましたが、単なる女の子の節句という以上の重要な祭行事であったようです。十三代藩主前田斎泰(なりやす)公の時代には金花糖が最も盛んに作られ、文化文政年間に藩主の命によ
【徒然和菓子譚】その20
今回も引き続き、加賀・金沢独特の菓子についてのお話です。寿せんべいと福梅についてお伝えさせて頂きます。
寿せんべい
起源は藩政時代初期にまで遡るとの説もあります。紅白の丸いスリ種(米粉の薄焼き種)の中央に「寿」の文字がいわゆる「引き蜜」の技法で刷り込まれています。紅白一対に生砂糖製の緑の松葉を添えて供します。言うまでもなく婚礼のお菓子です。かつては他の地方にもあったと言われていますが、現在これだ
【徒然和菓子譚】その19
今回からは加賀・金沢に伝わる独特な菓子についてお話していきます。まずは五色生菓子です。
菓子司の話でもお伝えさせていただいた、樫田吉蔵によって創案されたお菓子です。前述の通り、珠姫様御輿入れの際の祝い菓子として用いられました。重箱に詰めらて五色の生菓子はそれぞれ日・月・山・海・里を象徴し、天地自然の恵みすべてに感謝をささげ、安泰を祈るという壮大な意匠に込めた傑作のお菓子です。金沢では今でも婚礼の
【徒然和菓子譚】その18
今日は菓子司の最後のお話です。森下屋八左衛門(もりしたやはちざえもん)についてお伝えしていきたいと思います。
三代藩主利常公の命により、城下の尾張町にて寛永2年(1625年)に創業し、以後、現在に至るまで396年間、御用菓子司を務め続けています。16世紀後半に金沢近辺の一向衆徒を治めていた亀田大隅(かめだおおすみ)の子孫であり、もともとは武家であったものが菓子司に転身した珍しい事例になります。当
【徒然和菓子譚】その17
今日は前田家の菓子司、道後屋三郎右衛門に続き、樫田吉蔵(かしだきちぞう)、道願屋彦兵衛(どうがんやひこべえ)の二人のお話を少しだけしたいと思います。
樫田吉蔵は、二代藩主利長公の時に命を受けて菓子司となりました。三代利常公の正室として徳川家より二代将軍秀忠の二女珠姫様(後の天徳院)が御輿入れした際の婚礼祝いの菓子「五色生菓子」を考案したと言われています。五色生菓子に関してはまた別の機会にお話しし