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【徒然和菓子譚】その20

今回も引き続き、加賀・金沢独特の菓子についてのお話です。寿せんべいと福梅についてお伝えさせて頂きます。

寿せんべい
起源は藩政時代初期にまで遡るとの説もあります。紅白の丸いスリ種(米粉の薄焼き種)の中央に「寿」の文字がいわゆる「引き蜜」の技法で刷り込まれています。紅白一対に生砂糖製の緑の松葉を添えて供します。言うまでもなく婚礼のお菓子です。かつては他の地方にもあったと言われていますが、現在これだけ盛んに残っているのは金沢だけになっています。

福梅
藩主前田家の御紋「剣梅鉢」を象ったと言われる最中に似た作りの正月用の祝い菓子です。「福梅種」と呼ばれる厚焼きの皮に、これも「福梅餡」と呼ばれる飴炊きの大納言の粒餡をつめ、外側に砂糖をまぶしたもので、紅白の梅に初雪が降り積もっているという意匠を表していますが、新春を迎えるにあたって藩主前田家の治世を讃え、弥栄を祈念する意味も込められていると思われます。同時に雪に深く閉ざされる加賀・金沢の冬の保存食としての実用性も兼ね備えています。発祥は定かではありませんが、藩政時代後期には城下の市民層にも広まり、今日まで守り伝えれててきたものです。今日でも金沢ではこの福梅を食べない正月など考えられないほどの定着ぶりです。

次回も引き続き加賀金沢のお菓子についてお話していきます。お読みいただきありがとうございました。

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