📘伊豆☆リスペクト
(見出し画像は、伊豆イチかわいい大室山です)
4ヵ月前まで伊豆で暮らしていたなんて……
現実味がないな。
遠い昔のことのように思える。
春は子育て中のイソヒヨドリのかわいい声で目覚める。
まだ引っ越したばかりの頃は、鳥の声がしてベランダに駆け寄ると、いつもすぐに飛んでいってしまった。
でも2ヵ月くらい経ったら、そっと近づけば逃げずに留まってくれるようになったの。
別に心を許してくれたわけじゃないだろうけど、
鳥からしたら、ただ私が風景の一部になっただけなのだろうけど、
それでも嬉しかった。
朝日でオレンジやピンクに染まる空と海に、毎回感動したっけな。
夏はすぐ下の岩場から、波にもまれながら必死で海に入っていった。
時には群れで、時にはひとりで泳ぐ青やグレーの魚たち。
知らない海を覗き見て、
この子たちの棲む世界を汚したくないと思った。
秋はムーンロードがきれいだった。
でも昇りはじめの月は、赤く大きくぼんやりしていて、ちょっと怖いんだよね。
冬はベランダで大根や白菜を干した。
熱心に干しすぎて、干す場所がなくなって、
しまいには洗濯物干しに吊るす始末。
丸ごと茹でて輪切りにした自家製干し芋は、最高のおやつだった。
静岡の人、みんな優しかった。
初めての移住で少し不安だったけど、あたたかく受け入れてくれた。
そして、伊豆先輩の一番尊敬しているところ、
それは、気の遠くなるような年月をかけて移動して、本州にぶつかったところ。
約2千万年前、現在の伊豆先輩の姿はなかった。
海の彼方、数百kmも南(硫黄島の近くの緯度)にあった海底火山が、先輩の原形。
先輩はプレートと共にちょっとずつ移動して、
約百万年前、ついに本州にぶつかった!
そこからまた40万年という長い年月をかけて、現在の伊豆半島の姿になった。
そんな経緯があるからこそ、先輩の肉体は地質学的にとても貴重で、多くの大地ファンをワクワクさせている。
体内には豊かな生態系を宿して、それぞれが支え合っている。
疲れた時に私はよく、海に突き出た大地を見て、
たとえ私の気が狂っても、力尽きても、変わらずそこにいてくれる姿に安心感を覚えていた。
でも、その大地だって永遠じゃないんだね。
変わらないものはないんだね。
伊豆を離れることを実感したら、今までの景色がガラリと変わった。
私との間に透明な壁ができて、別の空間にいるみたいに感じた。
最寄駅から家に帰るまでのしんどい上り坂も、歩いて30分かけてスーパーまで行く道のりも、愛おしく思えた。
とても気に入っていたのに。
それなら、なんで離れたの?
2年足らずで次の移住先に行ってしまうなんて早すぎない?
大好きだったけど離れたのは、幸せに執着したくなかったから。
終わりがあるからこそ、今が輝くと思っている。
名残惜しかったけど、新たな冒険にでるために。
たまに思い出して、あたたかな気持ちに浸るからいいんだ。