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大学を卒業する1週間前まで就活が終わらなかった話【最終回】

これは、就活に挑んでいる21卒、これから就活に挑むことになる22卒の学生に対して、僕の経験を伝えるために書きました。

今日は【その6】、最終回です。
前回のお話はこちら。


2020年1月

「もう、どうでもいいな」と思っていた。

2019年が終わり、2020年。
年が明けようが、年越しフェスを楽しもうが、事態は変わらない。4月からのことは何一つ決まっていなかった。

誕生日にお祈りメールが届いたことで完全に心が折れてしまった僕は、もう就活をしていなかった。頑張ったところで無駄だと思っていた。

就活とか将来とかこれからとか、もう考えたくも無い。


バイトや飲み会、友人との夜遊びを繰り返すだけの毎日が続く。

余談だが、彼女と人生ゲームで遊んでいたらこんなマスに止まった。

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「就活に疲れてるとか今の俺じゃ~~ん!」とふたりでゲラゲラ笑った後に「なんで就活に疲れただけなのに6000ドルも払わないといけないんだ?」と悲しくなった。


2020年2月

森林、迷走期。

2月になり「そろそろ先のこと考えないとヤバいか…?」と思い立った僕は、就職をせずに生活する方法を探すべく、色んなことを試しまくっていた。

これは僕が2月に挑戦したことの一覧だ。

・ウーバーイーツの配達員を始める
・ボーカルオーディションに参加する
・Twitterで知り合ったビジネスマンの人に会う
・音楽ライターを募集している会社に応募
・派遣の登録をし、ライター系の仕事に応募

こんな風に色んなことに挑戦したが、結果は振るわなかった。

お金を稼ぐために始めたウーバイーツは、好きな時間に自由に働けるのは自分に合っていた。しかし、賃金が安いことや安定して稼げるわけでは無いので辞めた。

「そうだ、ロックスターにでもなるか」とノリで受けたボーカルオーディション。一次審査は通過したものの、その後のデビューには50万円の自己負担が必要だと知り、断念。

Twitterで知り合ったビジネスマンに会うと決めた時は、現状の何かを変えてほしいと思っていたのかもしれない。何を、とはっきり言えないが、何か、だ。

当日、「情報商材が入ったUSBを売りつけられたらどうしよう」とビビっていたが、普通に良い人だった。都内のカフェにて就活や将来の話など、悩みや相談についてしっかりと聞いてくださった。僕みたいな学生に時間を割いてくださったことを、今になってありがたく思う。

ただ、目がキラキラし過ぎて怖かった。それ以来会ってない。

「書くことを仕事にしてみたい」と考えるようになったのはこの時期だ。「文章に携わる仕事がしたい」となんとなく思った僕は、ライター職に応募をしまくった。「4月から働かせてください!!」みたいなメールの文面と、好きなバンドについて書いた記事を添付してひたすら送りまくった。結果、全落ち。

新しく始めてみたことに片っ端からバツが付く。そんな2月だった。

ただ、今思えばこの2月で色んなことに挑戦するための行動力を付けることが出来た。やってみて良かった。


2020年3月

3月1日。21卒の就活解禁日。

この時期の僕は将来について考えることを放棄していたし、「あーもう人生終わりじゃん、」と思いながら日々を過ごしていた。夜の1時に寝て、昼過ぎに起きて、バイトに行く、みたいな生活が続く。

ある日、父から白い紙を何枚か渡される。これ何?と尋ねるとボソッと「求人票。ハローワーク行ってきてやったから。」と父は答えた。

僕の父は大学を中退した上、今の会社には知り合いのコネで入ったので、就活をしたことがない。大学中退後は母さんの元でヒモをしながら、趣味のバイクに没頭する日々を2年くらい送っていたらしい。


6月頃、そんな父から就活についてぐちぐち言われたことがある。

「他の大学生は殆ど終わってるらしいな」「内定率は90%らしいぞ。内定あるのか?」「無いのか。就活、ダメなんだなぁ」

今思えば父親なりのコミュニケーションだったのかもしれない。ただ、この時ばかりは何も知らないでモノを言ってくる父親に腹が立った。

僕は「大学もまともに出ていない上に就活もしたことないのに、俺に口出すんじゃない」と反論。なんだその口の利き方は、と、激高した父親と激しい口論になった。

それ以来、父と僕の間では就活の話題はタブーになっていた。

そんな父が、僕の為にハローワークに行ってくれたのだ。普段は近くのスーパーに買い物に行くことすら渋る面倒臭がりの父が、僕の為に求人を探しに行ってくれたのだ。

「22歳にもなって親に頼らないと今後の仕事も決めることが出来ないのか、俺は。」


その瞬間はかなり落ち込んだ。自分がどうしようもない人間だという事実を再確認し、愕然とする。

しかし、それ以上に「これ以上家族や彼女、友達に心配をかけたくない」という気持ちが強くなった。

自分の周りにいる人の為に、もう一度頑張ろうと思った。

次の日、僕はハローワークに行った。
ハローワークで求人情報を見ていると、都内のイベント会社と出版関係の会社の募集があった。僕はその2つの選考を受けることに決める。

イベント会社は、雰囲気や面接官の方との空気感がとても良かった。1次選考は無事通過。

しかしこの頃、コロナの影響でイベントが軒並み無くなっていた。
先行きに不安を感じた僕は、2次選考を辞退した。


一方の出版関係の会社において、僕は内定を頂くことが出来た。

選考自体は面接、小論文といったような一般的なものだった。
志望理由は「子ども達に本を読む習慣をつけてもらいたい」という教育学部での経験と、自身のこれまでの実体験を重ねて伝えた。

「ここでダメだったら、もう何でもいいや」

そう思っていた僕は、驚くほどリラックスしながら選考に臨むことが出来た。1次、2次とスムーズに通過し、いよいよ最終選考。会社の役員との面接だった。


最終選考も落ち着いた状態で受けることが出来た。
もしかすると、それまでの選考では「良い風に見せよう!」とか「できるやつっぽく振舞おう」みたいに意識し過ぎていたのかも知れない。不思議とこの時は、自分を誇張し過ぎることも、変に背伸びすることも無く話すことができた。

途中で「希望していた部署に配属されない可能性がありますが、それでも大丈夫ですか?」と聞かれた時に「それは実際に配属されないと分からないです。」と答えた。あまりにも正直に自分の本心を伝えてしまったと一瞬後悔したが、役員の方は不思議と嬉しそうな顔をしていた。


週明けの月曜日に結果が来た。内定だった。


内定が出た時のことはよく覚えている。「これで就活をしなくていいんだ!」とか「4月から頑張るぞ!」という気持ちよりも、「これまで心配をかけた人に対して良い報告ができる」という安堵の気持ちでいっぱいだった。

こうして僕の就活が終わった。
内定が出たのは、卒業式の1週間前だった。


【就活を通して学んだこと】


2次選考で書いた小論文のテーマは、皮肉にも「就活を通じて学んだこと」だった。

僕はこの質問に、「自分の人生は自分で決めるしかない」と答えた。


それまでの人生は、大体みんなと同じだった。小学校から大学まで、皆が歩いているレールの上をなんとなく歩き続けた。

よく見れば留学とか就職とか浪人とか、もっと色んなレールがあったように思う。でも、人と違うレールに進むには、確固たる覚悟やダンコたる決意が必要だった。

僕の友達にはそれらを持ち合わせている人が多い。「そこ、レールどころか道すら無いように見えるけど、進めるの?」みたいな進路を取った人もいる。人とは違う道を進む彼らを少しだけ心配しつつも、かなり羨ましがっていた。

そんなものを持ち合わせていなかった自分は、その時々の分かれ道で一番多くの人が進むレールを選び続けた。そんな人生だった。

だけど、そのレールもいずれ分岐する。それまで多くの人が進んでいたレールは、「就活」という無限とも思える選択肢として現れた。

自分の意思でレールを歩き続けていなかった僕にとって、どこに進めばいいか分からなくなるのは、ある意味当たり前だった。

目の前に広がるレールに対して、あれでもない、これでもないと悩み、迷い、苦しんだ。どうでもいいやと現実逃避してしまう時もあった。彼女や友達と遊んでいても、頭の端の方に「で、これからどうすんの?」と語りかけてくる自分がいた。

自分の人生を自分で選ぶのがこんなに辛くて苦しいことなんて知らなかった。

それでも、最後には自分で選んで進むことが出来た。
本当に良かったと、心から思う。


大学生活は「人生の夏休み」と言われるほど時間がある。持て余した4年間のモラトリアムの中では、自分のことだけじゃなく、他人のことに必死になれるような時間が沢山あったと思う。

だけど今は違う。大学を卒業した僕たちはそれぞれの人生のことについて必死に生きている。皆、他の人のことなんて考えてないし、今の自分で精一杯だ。


「誰も自分のことを見ていない。
だから、何しても良いんだ。」


就活を通して「自分の人生は自分で決めるしかない」と思えるようになった。他の人がどう思うとか、このレールに進むには今はまだ早いとか、どうでもいいんだ。自分の人生は、自分しか歩けないんだから。


余談だが「人生の夏休み」という言葉に対して、アルバイト先にいた仲の良い主婦さんがこんな風に言っていた。

「『人生の夏休み』って言葉は自由な時間が無限にあるって意味じゃなくて、楽しむ中で夏休みの宿題もやらなくちゃいけないんだよね。責任のある自由、って言うのかな。だから今楽しんでる人たちは最後の方に苦しい想いをするし、結局コツコツ努力し続ける人が、ずーっと毎日楽しめるんだよね。」

そういえば僕は、9月1日の明け方まで宿題をやっているタイプの小学生だった。


【僕の就活が終わらなかった、たった一つの理由】


僕が就活が終わらなかった原因はひとつだ。舐めてた

実際には就活を舐めていても、内定を貰える人は沢山いるんだろう。
けど、何も実績が無いのに口だけは達者だったり、他人を見下すことで自己肯定感を満たしている大学生は注意した方が良い。1年前の森林、お前のことだぞ。

かつての僕は、スモーカーに揶揄された時も、インターンで心を折られた時も、誕生日にお祈りメールが届いた時も「まあ俺なら大丈夫でしょ」みたいに、自己肯定感の為に今の自分を否定しないようにしていた。他の人を見下して自分の自信を保つような学生だった。そのせいで自己分析や、将来について真剣に考えるといったやるべきことをやらなかった。

僕はこれまでの人生の中で、今全力を出している!必死にやっている!という回数が人よりも少ない。物凄く集中をして勉強に臨んだり、何かに一生懸命に取りくんだ経験があまり無いのだ。

そのため、就活にも必死になれなかった。「どうせなんとかなる」「これくらいでい良いでしょ」と自分自身で勝手に線を決めて、それで満足していた。

でも、1年前の森林に言いたい。


「『これくらいで良い』と妥協してしまったら、妥協した人生しか送れないよ。」


やると決めたことは今日中にやりきる。今やるべきことを一生懸命やる。
人生は過去とか、未来とかじゃなくて、今の自分がどれだけ本気になれるのか、どうかだ。

今やらない自分は明日も、1週間後も、1年後も、ずっとやらないままだ。

もし、今の自分が就活に悩んでいた自分にアドバイスが出来るのであれば「やりたいこととか考えずに、今やるべきことを一生懸命やれ」と言うだろう。

明日受ける企業の研究はちゃんとしたのか?
その志望理由は本当に自分の言葉なのか?
自分の中の100%を費やしたのか?

「今やるべき事をしっかりとやる」
この意識があるか、無いかだ。


これを読んでくれている中には「就活きつい!やめたい!」という方もいると思う。もしそうであったとしても、どうか自分と向き合うことから逃げないでほしい。今の自分の100%を注いでほしい。

その上で、「これからまた頑張って就活をする」のか、「もう1年頑張る」のか。自分の意思で決めてほしい。

それでも「やりたいことが無い」「何をすればいいのかわからない」みたいな人もいるだろう。こんな大変な時期に就活なんて、本当に大変だと思う。

僕で良ければ、全部聞きます。悩みとか相談とか、本当になんでも話してください。

まあ、ここまで読んで分かるように僕は就活が得意なわけでは無い。「絶対通る!ESの書き方!」みたいなアドバイスも出来ないし、オンライン面接のコツも知らない。

でも、人よりも長く就活について悩んでいた自信だけはある。
「こんな僕だからこそ、出来ることがあるんじゃないか。」

そんな風に思っている。



【最後に】

5月から書き始めた就活の話、今回で終わりです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
僕が思っている以上に多くの方に読んでいただき、有難い思いでいっぱいです。

正直、就活をしていた期間はめちゃくちゃ辛かったですが、この1年間があって良かったです。
将来やりたいことや自分という人間を知ることが出来たし、自分と向き合う時間を多く過ごしたからこそ、今があると思えます。

僕は現在、出版関係の仕事をする傍らでWEBライターになる勉強をしています。「文章を書くことでお金を稼ぐ」という自らの目標に向かって、頑張る毎日です。

これからも仕事したり勉強したりしながら、たまにnoteを更新していこうと思います。
今後も「面白い文章」が書けるように頑張りますので、また読んでくださると嬉しいです。


長い長い就活の話、やっと終わり。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


このお話を書く上で、お手伝いをしてくださった方々です。
この場でご紹介させていただきます。(敬称略)

【スペシャルサンクス】
株式会社Swingman
わたせう
しゅ
せりのあやね




【お知らせ】5月21日の文学フリマに出ます

お久しぶりです。新卒で入った会社を半年で辞め、半年間ニートをして、ベンチャーのインターンを1年弱続けた後で、ITベンダーに中途入社した森林です。エンジニアとして働く傍ら、こそこそ小説を書いてました。

2023年5月21日に文学フリマにて本を販売します。僕が書いた小説が3つ、友人が書いた小説が3つ。それぞれのエッセイ3つを合わせた全300ページの小説です。タイトルは「無自覚デコンストラクション」。著者名は25歳ズです。

表紙です

TwitterのDMにて取り置き予約を受け付けていますので、是非ご連絡ください。


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