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大学を卒業する1週間前まで就活が終わらなかった話【その5】

これは、就活に挑んでいる21卒、これから就活に挑むことになる22卒の学生に対して、僕の経験を伝えるために書きました。


今日は【その5】です。
前回のお話はこちら。


2019年10月

10月某日。僕は第一志望の広告運用会社の2次選考を受けるべく、その会社のオフィスにいた。
この会社ではゲームやインターネット広告、広告運用のウェブサービスなど、幅広い事業を扱っている。僕の「様々な選択肢がある」という志望理由にとてもマッチしていた。


ここまでさんざん苦労をし続けてきた就活。これまでは内定が出なくても「まあなんとかなるっしょ~!」と思っていた。

しかし、8月くらいから「もしかして終わらないのでは?」という焦りが出始め、10月にもなると「既卒 就活」「就浪 不利」という検索履歴が残るようになる。

でも僕には就職を先送りにするだけの理由が無かった。
先輩の中には、やりたいことや行きたい業界を目指すために就浪した先輩はいたが、僕のように大した理由も無いのになんとなく就浪した方はいなかった。

僕はそれだけは避けたかった。「多分このまま就職しなかったら、なんとなくフリーターになって人生詰むんだろうな」というぼんやりとした、だけど確実に真っ黒な未来が見える。

なので、卒業までに就職先を見つけることは絶対だった。


そんな条件下での2次選考。
今までの数々の失敗を踏まえ、これまでで一番の準備をした。

・資料やホームページには全部目を通し、分からない単語があれば調べてノートにまとめる
・扱っている多くの事業について概要を理解し、自分の言葉で説明が出来るようにする
・会社がリリースしているスマホゲームをインストールし、良い点と改善すべき点をリストアップ
・ESに書いてあった自分の志望動機を読み直し、予想される質問とその回答を10個ずつ考える


このように、その会社の情報を出来る限りインプットし、2次選考に向けて万全の準備をした。

2次選考は特殊な形式だった。
社員の方2名との面接を、2セット繰り返すというもの。
1セットが45分なので、90分で4名の方とお話をした。すごく疲れた。

正直、内容に関してはあまり覚えていない。

良いことを言ったぞ!という手応えも、自分の会社に対する熱い思いを伝えられたという実感も無かった。

ただ、やれることは全部やった。あとは結果を待つだけだ。


選考の結果は、僕の誕生日に来た。
僕はその日、横浜で彼女と過ごしていた。

結果は、お祈りだった。

その時のことはよく覚えている。
横浜スタジアムから山下公園に向かう途中、信号を待っている時にメールが届いた。
それまでの連絡は全部電話だったので、この時点で結果を察した。

しかし、楽しい誕生日デートの最中なので、就活の話をして空気を壊すのは避けたい。
僕はお腹が痛いと嘘を付き、山下公園の公衆トイレの個室の中でメールを開いた。


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「スピード感を持ってチームに働きかけていく」という選考ポイントはここで初めて知った。
「は、最初に言え」と思った。

事業理解については現状出来得る努力はかなりしたので、「あれ以上やらないと受からないのか」という絶望感があった。スピード感という曖昧な言葉で一蹴されたことも悲しい。

さらに、それまでのやり取りは全て電話だった上、採用担当の方はかなり優しい人だったのも堪えた。新卒採用はビジネスだし当然落とされることもあるとはいえ、こんな冷たい文面のメールだけで全てが終わってしまったのが悲しかった。


やれることは全てやった。ホームページに乗っていた単語は全部理解していたし、扱っている事業の説明も出来る。会社のスマホゲームもプレイして感想を伝えたし、面接の受け答えもちゃんと出来ていた。

でも落ちた。ダメだった。

僕は「今の自分に価値なんて無いんだな」と思った。
21歳から22歳になったって、人としてのレベルが上がるわけじゃない。


彼女に選考の結果を知らせようと外に出たら、トイレの近くにいない。
どこ行ったのかな?とあたりを探すと、海の方へ向かっている彼女の姿があった。

風に吹かれながらふらふら歩いている彼女を見て、僕はなぜか泣きそうになってしまった。表情は見えないけれど、きっと楽しそうな顔をしているんだろう。

僕のことを喜ばせようと誕生日に横浜に連れてきてくれた彼女に対して、夜景が見えるお洒落なレストランに行きたいという要望に応えてくれる彼女に対して、就活の結果なんて言えなかった。言えるはずが無かった。

レストランでのディナーの時、これまでの2人の写真とメッセージが添えられたアルバムを貰った。
こんなに素敵な彼女が傍に居るのに、自分は何て情けないんだろうと泣いてしまった。

プレゼントを貰った嬉し涙では無く、自分の不甲斐なさに耐え切れなくなった悔し涙だった。

僕はもう、何もしたくない。


2019年11月

誕生日のショックを遠ざけるように、11月は全く就活をしなかった。

この時期は卒業論文に没頭しており、自分でも驚くくらい全力で取り組んでいた。多分、就活から目を背けたかったんだと思う。

「卒論を提出し、卒業した後はどうするのか?」

そういうことは考えてなかった。考えたくなかった。
卒論に打ち込んでいる時だけ、将来のことを忘れられた。


2019年12月

12月、就活エージェントに通信業界の営業の仕事を紹介される。

家電量販店や携帯ショップでスマホをお客さんに販売する仕事だった。自分のやりたいことではなかったが、どうしていいか分からない僕はこの選考を受ける。

選考は1日で終わり、次の日に内定の連絡が来た。

正直、この会社に行こうかかなり悩んだ。
しかし、携帯ショップの販売員になってもすぐ辞めてしまうと思い、お断りさせていただいた。 


年末はカウントダウンジャパンに行った。

「今年も1年ありがとう~~!!」と叫ぶバンドマンを観ながら、僕は今年何が出来たんだろう、何をしたかったんだろう、何で就職も決まっていないのにこんな場所にいるんだろう、と暗い気持ちのままだった。

勿論好きなバンドを聴くことは楽しかった。だけど頭の中ではずっと「で、これからどうすんの?」という声が離れず、心から楽しむことは出来なかった。


2019年が終わる。僕はまだ就活生だった。


最終回へつづく、


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