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【小説】帳がおりる まとめ

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オリジナル小説/帳がおりる、のまとめです。 「夜に外に出ると必ず死ぬ。例外はない」 そんな世界のお話です。
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2022年7月の記事一覧

【小説】帳がおりる 第1話(さめちゃん編)

【小説】帳がおりる 第1話(さめちゃん編)

「まだ起きてた?」

「寝てた」と、パソコン画面のむこうのすばるが答える。

「起こしちゃったか。ゴメン」

「いや、ちょうど良かった。そろそろ起きようと思っていたから」

 今は、二十時。夜ごはんは済ませたけど、メイクは落としていないので寝るわけにはいかない、そんな時間だ。一日の終わりが近い私とは対極に、すばるの一日は、これから始まろうとしているようだ。夜行性の彼にとっての二十時は、まだラジオ体

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【小説】帳がおりる / 登場人物表

【小説】帳がおりる / 登場人物表

【登場人物】
さめちゃん …………………………………… 会社員、作家志望
竹中すばる(たけなかすばる)……… 自営業
都築群青(つづきぐんじょう)……… 会社員
遠藤縁(えんどうよすが)……………… 探偵
八木ちはな(やぎちはな)……………… 教師
野家直(のいえなお)…………………… 大学生
アゲハ …………………………………………… 少女
横山(よこやま)…………………………… 大学生

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【小説】帳がおりる 第2話(都築群青編①)

【小説】帳がおりる 第2話(都築群青編①)

 男は、身振りで、応接セットのソファを僕に勧めた。
 僕は渡された名刺に視線を落とす。
 遠藤縁(えんどう よすが)。それが、目の前の男の名前らしい。エニシと書いて、ヨスガ。変わった名前だが、目を惹くのは、その部分ではない。 ――その肩書きのほうだ。職業は、探偵。
 部屋には、真冬の生命線とも言える古い石油ストーブ、パンパンの本棚が壁にそびえ立ち、キャビネットと、奥にはデスク、スペースグレーのノー

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【小説】帳がおりる 第3話(都築群青編②)

【小説】帳がおりる 第3話(都築群青編②)

 探偵の遠藤さんに調査を依頼して一週間が経った。
 僕は今、知らない道を、昔、見聞きした記憶を頼りに歩いていた。僕は高二で学校を転校している。転校先の高校を卒業後、今の仕事に就いた。もう仕事も二年目だ。その間、こっちに戻ってくることはなかったし、こうして、この道を歩くのも初めてだった。
 信号は、随分手前に一つあっただけ。車も通らない。風の音が鳴るだけだ。
 足を止める。
 この辺りのはずだった。

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【小説】帳がおりる 第4話(都築群青編③)

【小説】帳がおりる 第4話(都築群青編③)

「先生を殺したのは、僕なんです」

 その日の出来事は、一番鮮明に記憶している。何故ならば、その日のことを思いださなかったことは、一日たりともないからだ。
 高二の一学期が終わり、夏休みに入ると、バカみたいに暑い日が連日続いた。十七歳になりたての夏だった。
 その日、僕は偶然、ショッピングモールの最上階にある映画館の入口で、先生と出くわした。

「先生とデートなんて嬉しいな」

「たまたま会っただ

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【小説】帳がおりる 第5話(都築群青編④)

【小説】帳がおりる 第5話(都築群青編④)

 その日もまた空は灰色、天気は朝から雨だった。

「今から会えませんか、都築さん」

 遠藤さんから連絡があったのが、今から三十分前のこと。

「調査は終わりました」遠藤さんは、電話でそう言った。「この先は、直接会ってお話します」と。

 僕は仕事を早めに切り上げて、探偵事務所へ急いで向かった。

「座ってください」と遠藤さんは僕をソファへ促した。

「調査は終わったって、本当ですか?」

 遠藤

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【小説】帳がおりる 第6話(八木ちはな編)

【小説】帳がおりる 第6話(八木ちはな編)

 絵のような青空が広がっていた。
 体育館が改修工事で使えない期間のあいだ、月曜日の全校朝礼は、校庭を代わりの場所としていた。
 校長の話に馬耳東風な生徒の列を眺めていたら、列の中の一点で、ふらり、影が揺れ動くのがみえた。
 ――誰か倒れた。
 列が膨らみ、瞬間どよめく。校庭にざわめきが広がった。
 倒れた生徒は保健室に運ばれた。私はそれに同行した。
 体温と脈を診たあと、「ただの貧血」そう告げて

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