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にわか細川ファンのマイナー熊本旅【一人旅②-後編】

熊本二日目。昨日の疲労が嘘のように、朝8時ごろホテルを出る。相変わらずヲタクの行動力はすごい。

バスで向かったのは立田自然公園。ここには、知る人ぞ知る細川家廟所があるのだ。つまりは幽斎夫婦、三斎夫婦、それと代々細川家要人の霊廟。(お墓とはまた違うらしい。)せっかくガラシャ展を見て歌仙兼定に会ったのだから、忠興とガラシャにも会っておきたかった。京都の細川家墓所や東京の永青文庫に行く人は多くても、ここを訪れる人はきっと少ない。そのひそやか感は、旅人としての私が好きなやつだろう、という若干の下心もあった。

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いや遠いわ! いくら熊本市内とはいえ流石に遠い。同じ川崎市でも川崎から向ヶ丘遊園に行く感じのノリでしれっと遠い。そりゃ自然公園だからね。しかたないね。

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しゅごい! 人がいない!

市街から遠い分、これはすっごくいいところだ。マジで人がいない。一人旅をする人間は旅先で自分以外の旅行者が目に入ることを極端に嫌う人種である。いや別に常にイライラしててはメンタルがもたないので、自分以外の人間がいることは当たり前なのだができればいないほうが望ましいんだけどな〜、くらいの素直な感情だ。

入口でガチで僅かな入場料を払うのだが、ほんとにこれだけでここの管理はやっていけるのだろうか、と不安になる。だって入口の人と植物の手入れしてる人と掃除してる人とで少なくとも3人も従業員の方を目撃したからだ。県立美術館の半券で割引が効いて、更に不安になった。

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うむ、最高です。

静謐という言葉はきっとこういう場所から産まれたのだろう、といったポエムを脳内で綴る。霊廟は最奥にあった。

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忠興の霊廟とガラシャの霊廟は隣同士に並んでいるのだが、その屋根と屋根を繋ぐように蜘蛛が巣を張っているのを発見!

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死してなお繋がっている!!

いやどちらかというと私は忠興ガラシャラブラブ説を信じていないタイプのヲタクでむしろお互い嫌いなときもあっただろうし腐れ縁のような愛憎のような一言で夫婦愛とも家族愛とも言い切れないけれどそれは確かに愛のような何かだった説(ヲタク特有の早口)を勝手に推したいヲタクなんですけど、この現象には流石に唸りました。うーん恐い。

一人で勝手に背筋を震わせながら広い広い敷地を散策。

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茶室もある。流石は細川家の霊廟を抱える公園。


バスで市中心まで戻ってきて、藤崎八幡宮に御参り。純粋に好きな雰囲気の神社。御朱印をいただく。

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電車で川尻駅まで行き、バスでくまもと工芸会館へ。

阿蘇山とかは前に行ったことがあるので、今回の旅に相応しいマイナーな場所は他にどこがあるかなと思って来たのがここ。何故かというと、肥後拵(歌仙兼定の鞘である歌仙拵と同じ技術の拵)の皮を使ったアクセサリー的なものが売ってると噂に聞いたから。とことん歌仙のことだけを考えた旅である。といっても随分昔の噂なのでもう売ってなくても仕方ない。なかったらなかったでマイナー旅を楽しめればいいや、という魂胆である。

結果、歌仙拵は無かった。せやな。知ってた。

けどここは文化継承的なセンター的な何かなので、肥後の工芸品がいっぱいあった。十分マイn面白そうだ。更には体験コーナーも充実している。奥へ進んでいくと……

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!?


なんか鍛冶してるおっちゃんがいる!?!?


日本刀のために熊本に来てこれは運命だなと思いながら私はしばし作業に見とれていた。

若い娘さん()が一人でこんなところにいるのが珍しかったのだろう、おっちゃんさんはいっぱいお喋りしてくれた。鋼の鍛え方や現代包丁の技術について話しながら、鍛える一番最初の段階をしばし見せてくれた。すごい! 来てよかった! テレビで伝統的な刀鍛冶の映像は見たことがあったけど、ここの設備は現代的だった。手動ではきっときついだろう、打つ作業などが自動化されていた。現代の鍛冶の姿を初めて見た。

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鍛え始めの鋼。

鍛冶のおっちゃんによって個人的にもとをとったことにほくほくしながら、通町筋へ戻る。昨日食べられなかった馬刺し定食を今度こそ食べても、高速バスが出るまでまだ時間がある。

仕方ないので通町筋の裏通りとかぶらぶらするか……と歩いて5分で見つけた小泉八雲旧居。

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旅のしめくくりは小泉八雲。渋い。渋すぎる。ただでさえ刀と細川家を求めるだけの旅だったのに、最後が小泉八雲は渋すぎるだろと思いながらバスに乗った。

今回は、私の好きな温泉も、手つかずの自然も、目的ではなかったけれど、充実した旅だった。温泉も自然も十分渋いとか言わない。私にとっての渋さランキングは 歴史>>文学>自然>温泉 なのだ。やっぱり今考えてもかなり特殊な旅。



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