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ベネフィットと金の匂い

ベネフィットとは顧客が商品から受ける恩恵のことで、有形無形の価値を表します。
商品の価値を機能や売り手目線で考えないように、顧客目線で捉える為のものです。
顧客から見た顧客にとっての価値の有無、価値交換たるマーケティングの最重要なパートであり、顧客志向の象徴でもあります。

そんなベネフィットですが、金の匂いがしなければ意味がない、私はそう考えています。
もちろん素敵でゴールデンな匂いではなく、マネーの匂いです。
儲けの見込みと表現してもいいでしょう。
顧客価値に私利私欲を混ぜて良いのかという非難の声もあるかもしれませんが、これはビジネスです。慈善事業ではありません。

顧客視点や本来の意味でのベネフィットを意識して、正しく顧客価値を捉えた商品企画をしようとしている時、企画者の目はキラキラします。
自分の正当性を信じて、社会正義の代表者としてプレゼンをします。

そんな時ほど、近視眼的な思い込みが出てしまいます。
顧客が喜ぶことを選んでいるので間違いない、その一心で生まれたものは往々にして代替品の存在を見落としたり、顧客セグメントを極めて狭く設定してしまいます。
ピタリとはまる顧客は対価を支払う一方で、取り逃しの多い商品になってしまうのです。

売上は対価を支払う人とその人数で出来上がります。
ごく一部の人が大喜びして対価を払っても、その気持ちが伝播したり、多くの人が同じ反応を起こしたりしないとビジネスとして成り立ちません。
代替性がないから積極的に選ばれるであろうこと、その規模が企業の目指す収益に見合うであろうこと、それらを集約した印象が業績への期待=金の匂いとして感じられなければなりません。

金の為、売上の為だけでは顧客価値を見落としてしまいます。
一方で狭い顧客価値の一側面だけに執着してしまうとビジネスとして成り立たなくなります。
マーケターは顧客理解を深めなければなりませんが、あくまでもビジネスパーソンです。
持続的に顧客に価値を提供する、その為にバランスを取る姿勢が必要です。

金の匂いのするベネフィット、一見反発を招く表現ですが、顧客視点に深く踏み込んでもビジネスとしての視点を忘れないという戒めの表現でもあるのです。

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