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ライフスタイルを提案する難しさ

家電量販店のビックカメラとアパレル大手のユニクロが共同出店したビックロが10年目にして閉店となりました。
当時はデザイン家電からライフスタイル家電へと方向性を変えたがっていた多くの家電メーカーにとって新しくて魅力的なものに映ったものでした。
購入頻度の低い家電製品への理解を季節ごとに買い替えを促すアパレルとの相乗効果で伸ばしていきたい、製品ではなく人との関わりを見せることでもっと分かりやすく価値を伝えたい、そんな考えにマッチするコラボレーションでした。
そんな新しい取り組みが何故終わってしまったのでしょう。
私の意見としては「なぜ終わったか」ではなく「よく持ったものだ」という見方です。
これは顧客価値とポジショニングの観点でから期待通りにいかないことが目に見えていたからです。

アパレルショップの中に家電製品が並び、家電を囲んでマネキンが並んでいることで、使っているシーンが伝えやすくなる。
IKEAにマネキンがいるようなイメージになりますが、服はユニクロです。
ユニクロの服を着たマネキンが家電を囲んで鍋をつついていたとしても、魅力的なライフスタイルと感じることはないでしょう。
家電という日常の製品に、ユニクロという日常の衣服が合わさっても、どこまでも日常の延長です。
顧客にとって魅力的になることはありません。
更に残念なことに、そんな挑戦的な展示は行われませんでした。
ユニクロの所々に協賛メーカーの製品が展示されているだけ、これでは相乗効果は得られません。

次にポジショニングの観点です。
家電量販店とアパレルショップの融合、これは家電量販店としてもアパレルショップとしても独自性のあるポジショニングです。
百貨店という概念を入れなければ。
家電と服飾のコラボは珍しいかもしれませんが、逆にいうと家電と服しか買えない店です。
どこの量販店でも売っている家電と、全国共通で定番の服を売っているユニクロが合体したとしても、高級ブランドや輸入家電を扱い、食品や雑貨も多数取り揃えている百貨店に敵う道理がありません。
百貨店はフロアの店舗ごとにバラバラでコラボ感はありませんが、それはビックロも同じです。
そうであればより非日常感を感じさせる百貨店の方がライフスタイル提案という点では優れてきます。

まとめてみると、ビックロは業態として特に珍しくなく、服を買うついでに同じ建物で家電が買える少しだけ便利な店という価値でしかないのです。
10年もったのはそれぞれの企業がそれぞれに集客力を持っていたからに過ぎません。

ライフスタイルを提案する、多くのメーカーや販売店が安易に使います。
商品としての価値が低ければライフスタイル提案で埋められると思ってしまうのです。
ライフスタイルというとふわっとしますが、日本語に直すと生活様式です。
生活様式を変える力があるものには、相応の価値がなければいけません。
ものの価値と伝え方の魅力、この二つが揃わなければライフスタイル提案にはならないのです。

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