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【IDと教員研修26】内容と思考方略を学習する Problem-based Learning

30記事になりました.継続していきます.


「問題」とは

学校教育の中で,「問題」として思い浮かべるイメージにはどんなことがあるでしょう.

生徒指導上の諸問題
学級で起こる問題
算数・数学の計算問題
社会的事象がもつ社会問題

ネガティブな要素とポジティブな要素で分けられるような,単純さや複雑さで分けられるような,様々なイメージがありそうです.
「問題」と一括りにしても,その解決を通してどのような力を育成するのかを見据えて「問題」の内容を考えていくことが必要です.

Problem-based Learningにおける「問題」は,現実的で真正性があるものとして設定されます.

切実性のある問題を解決することを通して,各教科における本質的な課題解決ができるようにします.

このような問題解決型の学習は,1960年代に医学教育を中心に広まった背景があります.
医学教育ですから,実際の傷病におけるケースを扱い,解決するためにはどのようにすればよいのかを考えられるようにします.現実的で,実際に起こっている状況であるからこそ,複雑で困難な課題であっても,そこに解決の必然性が生まれるといえるでしょう.

4つの原理

Problem-based Learningは,ジョン・R・サヴェリーによって4つの原理が整理されました.

1つめは,「問題」の中身です.真正である.教科等のカリキュラムに合致している.教科等横断的な思考を促す,という原理です.先に述べた,切実性を付与し,解決の必然性を高めることになるといえます.

2つめは,「解決の伴走者」です.解決する際はグループに分かれ,そこにはチューターが付きます.チューターの大きな業務は,学習者支援です.学習者のメタ認知スキルと,問題解決者としての専門性を伸ばすような支援を行います.チューターは必ずしも,問題にまつわる熟達者であるとは限りません.問題解決に有効な方略を考えさせるように促すことが大切です.時には,各自の成長を評価する役割にもなります.

3つめは,「評価」です.学習目標達成の成果を確かめるには,真正な評価が必要です.テスト,というより,例えば先の例での傷病を扱うのであれば,それを治癒する提案について,果たして本当に解決となりうるのかを吟味して評価が考えられる必要があります.学校教育においては,パフォーマンス評価のような,一概に点数化せずに,どの程度の達成度かを考えていくような方法も考えられます.

4つめは,「報告」です.経験から学んだことを確かなものにするために,報告の機会を用意します.成果報告だけでなく,進捗報告を定期的に行うことで,自分たちの経験を振り返り,学びの蓄積を意識することにつながります.

どんな「問題」を設定するのかを協議する研修が企画できそう

教員研修では,一通りこのような問題解決型の学習について学んだ後,自校にあるリソースで,どのような「問題」づくりができそうかを話し合う演習が考えられます.

ある学校では,地域連携をしながら,地域課題の解決をする学習につなげるアイデアがでそうです.
ある学校では,企業と連携したプログラミングによる現代的な課題解決を考えるアイデアが出そうです.
ある学校では,学校の校則や制度的な内容に踏み込んで問題解決を考えていくアイデアが出そうです.

・・・というように,学校の内外には,真正性のある「問題」が様々あります.総合的な学習の時間でも,このような学習が進められているかもしれません.ぜひ,「問題」とは何かを考えるところから,研修を進めてみてはいかがでしょうか.

次回は,一文字変えて,TBLについて考えます.

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