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真影の月 最終章 ~ 真影の刻

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#創作

真影の月 真影の刻:第170話 生きている限り、物語は続いていく

真影の月 真影の刻:第170話 生きている限り、物語は続いていく

 戦争は終わった。そうだからこそ、やることは山ほどある。軍事においてはまずは再編。失われた人材の登用は急務。それが追いつかない部分は組織の一時的な縮小も考えなくてはならない。軍事物資の不足は深刻的。そもそも国全体で物不足なのだ。
 外交も忙しい。アイル王国は臣従を誓った。それはブリトニア帝国にとって良いことではあるが、臣従国の立場とはどういうものか、何を義務づけるかなど決めなければならないことは沢

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真影の月 真影の刻:第169話 潔さと往生際の悪さ。終わりの形は人それぞれ

真影の月 真影の刻:第169話 潔さと往生際の悪さ。終わりの形は人それぞれ

 ボルトン丘陵の戦いの結果はハートランド侯爵領にも届いた。これほど短期間で決着がつくとは考えていなかったシャロン女王。しかも三倍の兵力差がありながら完敗という、まさかの結果に呆然としている。
 驚いたのはハートランド侯爵も同じ。戦況について報告を受けたあとは、厳しい表情のまま、じっと何かを考え込んでいる。

「周辺貴族家が攻め込んでくる可能性がありますが?」

 ボルトン丘陵の戦いの結果を受けて、

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真影の月 真影の刻:第168話 決戦の舞台。出番を終えた人は退場の時だ。

真影の月 真影の刻:第168話 決戦の舞台。出番を終えた人は退場の時だ。

 レイモンド率いる正統ブリトニア王国軍とシャロン女王=アーサー連合軍の決戦の地となったのは、王都の北にあるボルトン丘陵。レイモンドは王都に籠もることなく、野戦を選んだのだ。
 南側の小高い丘の上に陣を構えた正統ブリトニア王国軍はおよそ三万。それに援軍であるアイル王国軍一万が加わっている。
 対するシャロン女王=アーサー連合軍はおよそ七万五千。さらに援軍として参戦してきたスコット王国軍二万を足すと総

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真影の月 真影の刻:第167話 敵の敵は味方。味方でなければ敵。どっち?

真影の月 真影の刻:第167話 敵の敵は味方。味方でなければ敵。どっち?

 アーサー自称国王軍とシャロン女王軍の戦いは続いている。といっても開戦当初の勢いは双方共に失っており、戦いの頻度はかなり少なくなった。決着の見えない消耗戦に両軍の士気が多いに低下していること、さらに物資の不足がそれに拍車をかけている。
 それでも停戦という選択肢はない。アーサーとシャロン女王のどちらか勝った方がブリトニア王国の王、そして将来のハイランドの覇者になる、と双方共に思っているのだ。ここで

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真影の月 真影の刻:第166話 ラストシーンの準備は着々と進んでいる

真影の月 真影の刻:第166話 ラストシーンの準備は着々と進んでいる

 アイル王国との国境にある城塞都市ロンメルス。レイモンドたちの情報封鎖はただ転移魔道装置を書き換えるというだけではない。転移魔道装置が使えなくても徒歩や馬で移動は出来る。当然それを試みる人々もいるのだ。
 だがそうした人々はロンメルスに辿り着く前に行方不明になることになる。それが千や二千でも同じこと。ロンメルスの手前でその何倍もの軍勢に襲われ、殲滅されるだけだ。
 これによりアイル王国内の情報はブ

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真影の月 真影の刻:第165話 辛く苦しい経験が人の痛みを教えてくれる

真影の月 真影の刻:第165話 辛く苦しい経験が人の痛みを教えてくれる

 城塞都市ロンメルスの転移魔道装置は封鎖されている。書き換えられているが正しい。アイル王国内の転移魔道装置との接続は切られており、ロンメルスから転移しようとすればどこか分からない場所に飛ぶことになる。生きていられれば幸運という場所だ。
 マグダレンはレイモンドを裏切ることはしなかった。そもそもそれを悩むことも出来なかった。ロンメルスにおけるレイモンドの影響力は未だに絶大だ。マグダレンが裏切ろうとす

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真影の月 真影の刻:第164話 結末はこの世界に生きる人たちが決める

真影の月 真影の刻:第164話 結末はこの世界に生きる人たちが決める

 レイモンドにとって甚だ不本意な形であるが、二万の捕虜が従うことになった。納得はしていなくても、そうなってしまったからにはその状況を利用しないレイモンドではない。アイル王国内にいるブリトニア王国軍に対して、二万の捕虜が自分に従うことになった理由、遠縁ではあるがレイモンドはブリトニア王家の血を引いており、玉座を正統な後継者の手に取り戻す為に戦うのだという情報を、元特務部隊員を潜入させて広めていった。

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真影の月 真影の刻:第163話 まさかこんな手に出るとは思っていなかった

真影の月 真影の刻:第163話 まさかこんな手に出るとは思っていなかった

 新しい目的に向かって動き出したレイモンドたち、といっても本気でそう思っているのはレイモンドとクレア、それと最後の最後で合流したグリフレットくらい。
 レイモンドを除いた元『グリム・リーパー』のメンバー、そしてそれ以外にもレイモンドに個人的に信頼もしくは忠誠心を向けていた人たちは、ようやく望んでいた方向に事が動き出したと喜んでいる。
 ただ、だからといってすぐに動けるわけではなかった。本格的に動き

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真影の月 真影の刻:第162話 明けない夜はない。とは少し違うけれど。

真影の月 真影の刻:第162話 明けない夜はない。とは少し違うけれど。

 アーサー国王軍と、国王軍は自称でありハートランド侯爵家派改めシャロン女王派からは反乱軍と呼ばれているが、ランスロット率いるシャロン女王軍との戦いが始まった。
 アーサー自称国王軍、シャロン女王軍それぞれ三万。いずれもブリトニア王国軍で、アイル王国に侵攻していたかスコット王国だったかの違い。兵の質は、経験値という点ではアーサー国王軍に若干の分があるが、勝敗を決定づけるほどの差ではない。そうなると決

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真影の月 真影の刻:第161話 新シナリオの主人公クランクイン

真影の月 真影の刻:第161話 新シナリオの主人公クランクイン

 アーサーはブリトニア国王に即位した。即位式に対して凄く大掛かりな、豪華なものを想像していたアーサーだが、実際に行われた式は実に簡素なもの。大広間の玉座にアーサーが座り、文武官から忠誠の誓いを受けるだけだった。
 もちろん本来の即位式はそういうものではない。各地の貴族、それに他国からも来賓が訪れ、それらが見守る中で式は行われ、さらに即位を祝うために王都に集まった人々の前に出て歓声をあびる。さらに夜

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