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真影の月 真影の刻:第161話 新シナリオの主人公クランクイン

 アーサーはブリトニア国王に即位した。即位式に対して凄く大掛かりな、豪華なものを想像していたアーサーだが、実際に行われた式は実に簡素なもの。大広間の玉座にアーサーが座り、文武官から忠誠の誓いを受けるだけだった。
 もちろん本来の即位式はそういうものではない。各地の貴族、それに他国からも来賓が訪れ、それらが見守る中で式は行われ、さらに即位を祝うために王都に集まった人々の前に出て歓声をあびる。さらに夜は大掛かりなパーティーが何夜にも渡って行われるというのが代々の即位式だった。
 だが今の状況でそんな式が出来るはずがない。他国からの来賓など招待しても来ない。貴族家もそれがアーサーの派閥に所属していても自領を離れることは喜ばないだろう。
 国内外の情勢はまだまだ緊迫している。そうだからこそアーサーは強引に即位し、武力での決着に持ち込もうとしているのだ。
 アーサーの即位に対してハートランド侯爵家はほぼ予想通りの反応を見せた。アーサーを簒奪者と罵り、その正統性を否定し、玉座から追い落とすべきだと他の貴族に主張した。ここまではいい。その行動を理由に国王に逆らうものとして軍を派遣する予定だったのだ。
 アーサーにとって誤算だったのはシャロン女王の存在。シャロン女王が生きていて、ブリトニア王国に戻り、簒奪者であるアーサーを討てと国内貴族に号令をかけたのだ。

「どういうことだ!?」

 怒気を発してマーリンに詰め寄るアーサー。シャロン女王が生きているとなればアーサーのブリトニア国王即位は無効。国王であり続けるのであれば簒奪者と呼ばれても仕方がない状況なのだ。

「……それは私が伺いたい。どうしてシャロン女王が無事に国に戻れているのですか?」

 暗殺が失敗したことは分かっていた。だから追っ手を放ち、シャロン女王を殺そうとした。それに時間が掛かるとしてもアイル王国に封じ込めておく必要があったのだ。少なくともハートランド侯爵家との決戦が終わるまでは。

「ガウェインが、いやブルートか。奴がしくじったのだな」

「誰が失敗したかはこの際、どうでも良いことです。問題はどうやってシャロン女王は我々の追跡を逃れて、ブリトニア王国に戻ることが出来たのか」

「……誰か手引きした奴がいるってことか?」

「そうでなければ土地勘のないアイル王国で逃げ回ることなど出来ません。さらに国境を越えるなんて」

 たとえ数人であっても人目に付かずに国境を超えるのは容易ではない。まして今は戦時中だ。警戒は普段よりも遙かに厳しい。

「手引きしたのは誰だ?」

「それが分かれば苦労はしません。アイル王国の人間か、それとも……」

 さすがにマーリンも影で動く存在に気付いてきた。クレアの離反からこれまでの状況は自分たちにとって都合が悪すぎる。仮にそれは気のせいだとしてもアルスターでの戦いの状況がクレアを支える勢力の存在を示している。

「『グリム・リーパー』がシャロン女王、いやシャロンに付いたってことか?」

「それは分かりません。ですがクレアを支援しているのは事実。そのクレアがシャロンへの手助けを望めばそうするかもしれません」

「……そうだな」

 クレアを離反させた。その結果が今だ。マーリンの説明はまるで自分を批判しているようにアーサーは感じてしまう。

「アルスターの戦況はどうですか?」

「増援を送らせた。合計で一万を超える軍勢だ。落ちるのは時間の問題だな」

「……指揮官は?」

「誰かな? そのへんはガウェインに任せてある」

「つまりガウェインではない。陛下が名も知らない誰かということですか?」

 アーサーの話を聞いてマーリンの表情に険しさが増す。アルスターに対する認識の甘さに苛立っているのだ。

「……問題が?」

「敵が誰だと思っている? 敵はクレアだけじゃない。グリフレット、それにブラッドまで加わっている。さらに元特務部隊まで。それも話では一桁ナンバーズだった奴らがいるんだ」

 自分たちの強さがあれば十倍の敵でも楽勝。アーサーたちはそんな風に思っていた。その自分たちの仲間であったクレアとグリフレット。それに匹敵するか下手すればそれ以上の強さを持つブラッドが敵方にいるのだ。一万で安心出来るはずがない。しかも彼らに全く刃が立たないだろう人物を指揮官にしているのだ。

「……俺が悪いというのか?」

「……いえ。現地指揮官であるガウェインの考えの甘さに腹を立てているのです」

 以前からそうだが、今のアーサーはさらに自分が批判されることを嫌うようになっている。明らかにそれは問題であり、今の状況を作った一因でもあるのだが、それを指摘すればまた怒らせるだけ。マーリンは惚けて見せた。

「そうだな。ガウェインにはきつく言わないと駄目だな。どうも俺は身内に甘い。反省しないと」

「ではガウェインには私から使者を送っておきます。全力でアルスターを落とせと」

「そうだな。アルスターの件はもういい。それでシャロンはどうする?」

 まだ使者も出していないのにアーサーはアルスターの話を終わらせた。これ以上、何かを言われたくないのだ。問題の大元はアーサーがクレアを離反させたことにあるのだから。

「いまさら引けません。向こうがこちらを討つというなら、返り討ちにするだけです」

 間違いでしたから玉座はお返ししますでは済まない。簒奪者と呼ばれようが、なんと呼ばれようが玉座は守らなければならない。

「レインウォーター伯爵領に攻め込むか」

「いえ。シャロン本人には何の力もありません。討つべきはハートランド侯爵家。これは変わりません」

「……そうか。いよいよか」

 ハートランド侯爵家との決戦。アーサーにとってはランスロットとの決戦だ。もともとランスロットに対して強い敵意を向けていたわけではないが、今は違う。国王となった自分に対して正面から刃向かってきたランスロットがアーサーは許せなかった。その思い上がりが我慢ならなかった。
 ブリトニア王国の覇権をかけた戦いがいよいよ始まる。アーサーはそう考えている。

◇◇◇

 アルスターの戦いはブリトニア王国軍が一万に増強されたおかげで膠着状態に陥っている。アルスター側が時間稼ぎの為に積極的な攻勢に出ないというのもあるが、それだけではない。ブリトニア王国軍は増強された軍勢をすべてアルスター攻略に向けるのではなく、その多くをいくつかの部隊に分けて周辺に展開させた。アルスターに物資を運び込んでいる、そして非戦闘員のアルスターからの脱出に利用している転移魔道装置を探し出し、それを破壊するためだ。
 これはアルスター側にとって厄介だった。補給路を完全に潰されてはいくらクレアたちが強くても戦いに勝利するのは難しくなる。仕方なくアルスター側も密かに人数を外に出し、転移魔道装置を守ることになった。個人の武勇などなくても戦いは出来る。アーサーに名も知られていない無名の指揮官がアルスターを苦しめているのだ。
 ただ、いつまでも敵の思うとおりにはさせておけない。アルスター側は切り札を一つ切ることになった。

「アルスターに忍び込む?」

「ああ、そうだ。忍び込んで転移魔道装置を乗っ取る。乗っ取り後の侵入工作もこちらの部隊で行う」

「……平気なのか?」

 拠点に侵入しての転移魔道装置の乗っ取り。それは話を聞いた指揮官も知っている。だがその侵入する先にはそれを得意としていた元特務部隊員もいるのだ。

「平気じゃない。それでも命令だからやるんだ。これはお前らがグズグズしているからだ」

「それは……拠点攻略など簡単に出来ることではない」

「それは知っている。それをせかされているそっちも可哀想だと思うけどな。ただこの任務はあまりにも危険だ。文句の一つも言いたくなる」

「そうだろうな。こちらとしては成功を祈るしか出来ない。頑張ってくれ」

 失敗すれば全滅間違いなし。そんな危険な任務に望むのだ。指揮官は心からの成功を願っている。

「ああ、出来るだけのことはする。潜入は夜中だ。それまで休ませてもらいたいのだが?」

「天幕を一つ、いやその数だともっとか。いい。好きなだけ使ってくれ。一晩だけであればこちらはどうとでもなる」

「……すまないな。お言葉に甘えさせてもらう」

 指揮官に礼を言って、陣地の奥の天幕に向かっていくのは『ドレッド・クラウン』のジェスターだ。指揮官から離れたところで、ジェスターの口から呟きが漏れる。

「……あいつ、いい奴だな。騙すのは可哀想だが勘弁してくれよ。俺らにとってはこれが最後の仕事。失敗はしたくないからな」

 ――その日の深夜。ブリトニア王国軍の陣地は燃え上がることになる。特に陣地に置かれていた兵糧はほぼその全てが消失することになった。
 ブリトニア王国軍にとって大打撃となるその襲撃を行ったのは。

「……お帰りなさい。怪我はありませんか?」

 転移魔道装置から出てきたクレアにグリフレットは声をかけた。

「大丈夫よ。敵は無警戒だったから」

 それはそうだ。アルスター城内の転移魔道装置を乗っ取った後に利用するはずの移動式転移魔道装置から、逆に敵が転移してくるなんて思うはずがない。『ドレッド・クラウン』の裏切りを警戒でもしていなければ。そしてブリトニア王国軍はそれをしていなかった。

「なにもクレア様がご自身で行かなくても」

「グリフレット。何度も言うけどこの戦いは私を守る戦いではないわ。アルスターの人たちを守る為の戦いなの。それを忘れないで」

「それは……はい」

 クレアに何度言われても、やはりグリフレットにとってはクレアを守る為の戦いだ。そのアルスターの人々、それどころかこの大陸に住む全ての人々の為にクレアに傷を付けさせるわけにはいかないのだ。

「あとはトリスタンが上手くやってくれるといいけど」

「まあ、やるでしょう。彼は優秀ですし、その彼に率いられるレインウォーター伯爵領軍も、きっと鍛えられているのですよね?」

「そうね。私は短い期間しか見ていなかったけど、厳しい調練をしていたわ」

「では大丈夫です」

 トリスタンが率いるレインウォーター伯爵領軍の役割。それはアルスターを囲むブリトニア王国軍に兵糧を運ぶ補給部隊の襲撃。兵糧を全て焼かれたブリトニア王国軍は間違いなく補給を求める。その補給を許さないことだ。
 後方の補給路を断つという作戦は常識的なものだが、そうであるからこそそれを行われる側は辛い。ブリトニア王国軍はさらなる増援が来るまでその活動を縮小せざるを得なくなった。

◇◇◇

 アルスターは善戦している。だからと言って安心は出来ない。アイル王国内には三万を超えるブリトニア王国軍がいる。攻略に手間取っていると考えれば全軍をあげて、アルスターを攻撃する可能性だってある。実際にマーリンはそれを指示している。
 三万の敵となるとさすがにアルスター側も辛い。ブラッドたちが一騎当千の言葉通りに一人で千人の敵を相手に出来るのであれば良いが、さすがにそれは無理だ。では策略となるが籠城側が、それも城内の住民を危険にさらさないという条件で謀れる策ではどうにか出来る兵力差ではない。単純に兵力差を埋める、つまりアルスター側に増援が必要だ。

「どう? 見える?」

 その増援を待ってドロシーとルークはワイバーの港で海を見つめている。

「まだ見えない」

「もう現れてもいい頃なのに。まさか伝書が届いていないなんてことはないわよね?」

「それはないと思うよ。これまで何回も伝書は送っている。それは全て届いて、今回だけ届かないなんて……」

 そんな不運なことはない、とルーク言おうとしたが、その不運がこれまで何度も起きている。

「……ここで待っているのも限界ね。私たちもアルスターに向かわないと」

 ブリトニア王国軍がアルスターに集結しようとしていることはすでに掴んでいる。いよいよ決戦となれば戦闘に参加する為にドロシーもルークもアルスターに入るべきだ。二人はブリトニア王国軍との戦力差を埋めるのに欠かせない存在なのだ。

「今日、駄目ならもう向かおう。別に僕たちがいなくても必ず後を追ってくるよ」

「そうよね」

 事前に細かい摺り合わせなどしなくても、レイモンドであれば必ず上手く合わせてくるはずだ。そう自分たちを納得させようと二人はしている。

「……あっ、あれか!?」

「えっ?」

「ちょっと待って。すぐに確かめる」

 こう言ってルークは筒を目に当てる。望遠鏡だ。望遠鏡の向き先は空。それを見てドロシーも視線を海面ではなく空に移した。

「クーちゃん?」

 空に浮かぶ黒い影。それは徐々に大きくなってきた。

「……なんだかまた大きくなっているような気がする。それにあれはもう烏とは間違えないね。どう見ても龍だ」

「そうなの? そうだとすればそれはきっとレイのせいね。暗黒龍の魔核なんてクーちゃんに食べさせたりするから」

「もう望遠鏡はいらないね。ほら本物よりは小さいけど暗黒龍の登場だ」

 クロウの姿は望遠鏡を使わなくても、はっきりと見えるようになった。大きく広げた翼。それは鳥のものではなく、間違いなく龍のそれだ。首も随分と伸びており、さすがに口から生えているであろう牙は見えないが、顔も完全に龍。

「……大騒ぎになりそう」

 あれをクロウと分かる人は少ない。ワイバーの街に住む多くの人は元のクロウさえ知らないのだ。暗黒龍の出現に多くの人が驚き、恐れているに違いない。

「クーは戻ってきたのに船が見えないね」

「……そうね。肝心のレイが戻ってこないと」

 海面に船の影はない。クロウが戻ってきたのに共にいたはずのレイモンドが戻ってこない。それを心配する二人だが。

「おっと……もしかしてあれ伝書?」

 地面に降り立ったクロウが咥えているもの。ルークにはそれが伝書魔獣につける筒に見えた。
 地面に降りたクロウは顔を下げて、口を開ける。空を飛んでいた時は見えなかった牙がはっきりと見えた。だが今見るべきはその牙ではなく、地面に転がった筒の中。

「伝書だ。何かあったのかな?」

 筒の中に入っていた伝書を開き、書かれていることを読むルーク。その顔に苦笑いが浮かんでいく。

「どうしたの? 何が書いてあった?」

「アルスターに向かおう」

「レイは?」

「もう向かっている。ここに寄っている時間が勿体ないからまっすぐに向かうって書いてある」

「……せっかち。いえ、クレアさんが心配なのね」

 クレアの危機と知ってレイモンドは焦っているのだ。ドロシーはそう思った。

「僕はそのレイと戦う敵が心配だ。やり過ぎないといいけど」

「そうね。早く合流したほうがいいわね。それでレイはどういう経路でアルスターに向かうのかしら?」

 ルークの心配を冗談とドロシーは受け取らない。クレアの為であればレイモンドは何でもする。手段を選ぶことなくもっとも効率的な方法を取るはずだ。そこには正義どころか情け容赦もない。

「南部の港町カロン。そこから船で川を上るって」

「船で川を上る? 船って川を上れるの?」

「さあ? でもレイがやるというのだからやるんだよ」

「まあいいわ。川……上流のどこから街道に入るのかしら?」

 アイル王国の中央を流れる川。その川と交差する街道はドロシーが知るだけで六つはある。アイル王国の南北を縦断している川なのでもっと沢山あるはずだ。

「僕たちはアルスターに真っ直ぐ向かったほうがいい。レアを助ける為に動いているレイの考えは読めないよ」

「そうね。そうしましょう」

 途中での合流は諦めて、ルークとドロシーはアルスターに向かった。クレアを助ける為に。そして自分たちが望む形にこの事態を収める為に。

◇◇◇

 アイル王国南部にある港街カロン。普段は静かなその街が大混乱に陥った。その原因は突然現れた十隻の、沿岸を航行する船しか持たないアイル王国では見ることのない大きな船だ。ただ混乱の時はそう長くはなかった。カロンの狭い港には入りきらないその船団から降りてきた武器を持った屈強な男たちは、瞬く間にカロンの街を制圧してしまったのだ。

「お前たちに選択肢を与える。俺に従うか死ぬかを選べ」

 鋭い目つきで周囲を見渡してその男は告げた。考える必要のない理不尽な問いを。それに文句を言う人は誰もいない。男が放つ雰囲気がそれを許さなかった。
 冗談でも文句を言えば即座に殺される。武人でも何でもない普通の人々がそう思うほどの殺気をその男、レイモンドは放っている。

「従うというなら裏切りは許さない。裏切り者は殺す。以上だ。何か聞きたいことは?」

 質問を受け付けようとするレイモンドに、ほんのわずかではあるが人々の緊張が緩んだ。

「……あ、あの?」

 声をあげたのはカロンの町長。住民たちの上に立つ立場として勇気を振り絞って声をあげたのだ。

「何だ?」

「我々は何をすれば良いのでしょうか?」

「何も」

「何も?」

「そうだ。何もするな。何も見るな。そして俺たちが去った後はすべて忘れろ。俺たちがここに来たことは誰にも言うな。それが出来ないならこちらが出来るようにしてやる」

「……分かりました。仰せの通りにいたします」

 何をすることも何をみることも何を話すことも出来なくさせる方法。それは死だ。それが分かって、そうでなくても今ここで拒否など口に出来ない。

「ああ、一つだけあった」

「な、何でしょうか?」

「これで買えるだけの食料を寄越せ」

 こう言ってレイモンドは町長に向かって革袋を投げた。それが地面に落ちた時の音がその中身の重さを町長に分からせた。恐る恐る手を伸ばして革袋を拾い、中を見てみる。革袋の中には数え切れないほどの金貨が入っていた。

「……これだけの金貨に換えられる食料はこの街にはございません。お渡し出来るだけの食料を全て集め、こちらから金額をご提示する形でよろしいでしょうか?」

「なるほど……じゃあ、そうしてもらおう。俺の用件は以上だ。解散しろ」

 町長に用件が終わったことを告げて、レイモンドはその場を離れていく。その背中を見送って町長は大きく息を吐いた。

「お前。良かったな」

 その町長にレイモンドと一緒にやってきた男が声を掛けてきた。

「えっ?」

「龍主(ドラゴンロード)の怒りに触れなくて済んだ。龍主(ドラゴンロード)は誠実な人間を好む。お前は龍主(ドラゴンロード)に好まれたに違いない」

「……あの方は龍主(ドラゴンロード)様というのですか?」

「ああ。龍主(ドラゴンロード)は龍を従えている。だから龍の主だ。ほら、あれだ。あれが我らが龍主(ドラゴンロード)を龍主(ドラゴンロード)と呼ぶ所以」

「……り、龍だ」

 空を舞う漆黒の龍。おとぎ話でしか聞いたことのない伝説の存在が空を飛んでいた。それに恐れおののく住民たち。そしてその恐れはそのままその龍を従えているというレイモンドへの畏れになる。今レイモンドに従っている男たちと同じだ。
 あまりの衝撃に住民たちはレイモンドが命じた忘れろという言葉を守るどころか、命令の方を忘れてしまった。それは仕方がない。龍を、それを従える奇跡の存在を忘れることなど出来るはずがないのだ。

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