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vol.4 インスタレーションを写真で見せる?

卒展のための作品制作過程を記録するnote、その4(最終回)です。

平面作品(版画やアクリル画など)と、いくつかのオブジェを組み合わせて、インスタレーション作品を作ろう、と張り切って始めてみたのですが、当時、ロックダウン環境で学校のアトリエは使えず、外出も規制されていたので、使える空間は自分のフラットだけ。当然、生活空間だからいろいろなモノが溢れているし、狭いし、画廊のようなホワイトキューブ空間とは全く条件が違います。

さらに、インスタレーションを作ったところで、最終的にはweb展示だから、PCやスマホの画面で見ることになるという問題もありました。空間を体験してもらうのではなく、写真や映像で伝えなくちゃならない。考えがなかなかまとまりません。

カレッジの先生に相談すると、「ミニチュアスケールのモデルを作っては?」とのアドバイス。「それで、それがうまくいったら、そのモデルを最終作品として展示してもいいよ!」とのこと。...え〜、そんなんでいいの? 安易かも?...と思ってしまいましたが、とりあえず、やってみました。

ギャラリー空間は、1m×2mのキッチンテーブルの上( ! )です。窓から自然光が入る朝の時間を狙って、素早くセッティングし、撮影しました。

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撮った画像を見たとき、何か不思議な思いが渦巻きました。何だろう、この箱庭のような、床の間のような感じ。---それは意図したことではなかったのですが、結果して自分の中でストンと腑に落ちました。ミニチュアサイズで制作したつもりではありましたが、このスケール感がフィットしたのです。米粒とオブジェクトのバランスも、このままが良いと思いました。

このあと、配置を変えながら数十種類のパターンを作り、一眼とスマホで数百枚の写真をとったのですが、結局、最初に撮ったこの写真は最後まで選択肢に残りました。先生にオンラインで画像を見せると、非常に良い、と言って貰えました。

さらに、アクリル絵画との組み合わせも試してみました。絵画とオブジェの関係が背景とジオラマのようになってしまうことを避けたくて、床にアクリル板を敷き、絵画が水面のように反射する効果を狙いました。川の流れを示す白い帯は、米(ライスペーパー)で作っています。

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インスタレーションは、不思議な表現形態だなと思います。空間の使い方にも メディアにも制約が無いようでいて、実際には空間や環境に大きく影響されます。鑑賞者が作品の中に歩いて入ることもできるため、鑑賞者の位置によって作品の見え方も変化します。あるいは、作品それ自体完結していなくても良いのかもしれませんーーそれはそれで、鑑賞者と対話する余地がある、開かれた作品だと言うこともできます(もちろん、関係性を問いかけるコンセプトが無ければ成立しないでしょうけど)。

今回の場合は、撮影のためにセッティングをし、キッチンテーブルの上に一時的に現れたあの箱庭的な「状態」が、私のインスタレーション作品だったと言えます。撮影した写真をスライドショーにして展覧会サイトに掲載しましたが、それはやはり「記録」であって、インスタレーションそのものではないのです。だから、いつかは、最初に考えたスケール(5m四方の空間)でインスタレーションを作りたいと思っています。そして、その時は、また全く違ったイメージが現れるはずだと思います。

こうして出来上がった私の作品を含む、11人の仲間による作品を一つのサイトにまとめた展覧会には、'Resilience'(回復力)というタイトルがつけられました。ロックダウン環境に負けないで制作を続けたみんなの心境(と苦悩)を、ストレートに表したタイトルだと思います。国籍も年齢も、バックグラウンドもそれぞれ違うみんなが、それぞれのダメージ状況からの回復を表現していて、とても興味深いです。

リンクはこちらなので、みなさん是非訪れてみてください。(9月末までの公開になりますので、終了したらリンクは消します。)


最後まで読んでいただいてありがとうございました!



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