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はじめてのアルバイトへの愛と感謝をこめて


大学1年生の秋頃

コロナが少しだけ落ち着いて、アルバイトを探した。
話すことに苦手意識を持っていて、その克服をしたいなと思って飲食店のホールをやりたかった。

アルバイトの求人は増えたけど、一方で私みたいにアルバイトやりたい人も多いのか、5つ応募したのに3つは連絡がこなくて、2つは落ちた。

どんよりしたある帰り道、駅から自宅までの途中にある、妹の同級生のご両親が営んでいる雰囲気のいい居酒屋さんの求人を見つけてお店の目の前で電話した。

面接後すぐに決まり、アルバイトをはじめて
今年の11月に4年目を迎えた。


𐀑𐃯


はじめは決まり文句もうまく言えなくて、おどおどしていたと思う。
接客よりも効率化とかを考えて頭も身体も動かせる裏方仕事が楽しくて、お皿洗い・ドリンク作り・片付けはすぐ上達した。

皿洗いの上達とはなんぞやって感じたけれど、小さいお店だからお皿の枚数が限られる。お客さんは季節のお料理を注文される。そのお料理のお皿が追いつかない時がある。もちろん代回がきくが、やっぱり見た目も考えられているからなるべくそのお皿で提供したい。そのために、よく使うお皿や枚数が少ないお皿、更には調理器具は先に、それ以外は後に洗うようにした。それだけで効率がぐっと上がる。


それとは別で、新しいお酒が入る度に試飲をさせて頂いていた。日本酒と一括りにしても味わいや香りが全然違う。「同じ日本酒でもこんなに違うんだ!」と気づいた時にはハマっていた。

11月にバイトをはじめて、翌年1月の冬休みには地元の図書館に日本酒の本を借りに行った。日本酒の種類や作り方の他、銘柄や蔵のこだわりとか、数冊読み漁り、よく置いているお酒はノートにまとめて覚えた。

自分でも飲みに行くようになって、そこでの学びに花開いた。
これは吟醸だから…新酒だから…とそれに合いそうな料理を注文する。ぴったり合うと本当に美味しいんだ。

試飲や飲みに行くことを繰り返して、結構覚えた。種類と味わいのつながりと銘柄を。

私の楽しみがひとつ増えた感覚だった。


𐀑𐃯


接客にも慣れ、常連さんともよく話し、一人前くらいにこなせるようになった頃、経営する奥さんに素敵なバルへ連れていってもらった。そこで接客について学んだ。「お客さんにおすすめとか、みずちゃんなら出来ると思うよ。やってみて欲しいな」と。

奥さんや、そのお店の接客を見よう見まねでおすすめを始めた。
といってもまだ自分の知識や経験に自信なんてなかったから、ある程度奥さんに確認を取って、それをそのまま伝えるところから、味の好みを把握している常連さんからのスタート。

すぐに文面でのやり取りに変わり、不安もあったけれど「みずちゃんすごく成長したね!このお酒めちゃくちゃ美味しい!」と常連さんに褒めていただけた時は本当に嬉しかった!


そうやって、考えての提供を重ねて、お客さんに感想を聞いて見てを繰り返せば経験が積み重なる。

ある日、ご新規のお客さん、おじいちゃんからこんな事を言われた。

「1個前のよりマイルドで、2個前のほど甘くない、旨い日本酒はあるかね?」

その頃は旨口というものが曖昧で、自信がなかったけれど、相対的にコメントを貰えたから、在庫の中から考えに考え抜いて提供した。

「これだよこれ!若いのにすごいねぇ!美味しいのをありがとう」

このときの感動は、きっと忘れられないだろう。
ぴったりとハマったピースのような日本酒を提供出来たのだろう。目付きの良いおじいちゃんだったのに目尻が下がってとても喜んでいただけのが分かった。


こうしてやっと、自分に自信が少しだけ、持てるようになった。


𐀑𐃯


話すことに苦手意識を持っていてその克服をしたい

そんな思いからはじめたアルバイト。
でもこの3年とちょっとで、それ以上のことを得て学んだ。
そして、人生を彩る好きなものも増えた。

このアルバイト期間も、常連さんとたくさんお話しして、たくさん学んで、気づきとアドバイスをもらって、時には相談してとても自信づけてもらった。


そんな素敵な空間で働けるのも、長くてあと3ヶ月。
みじかいなぁ。たのしかったな。


最後まで楽しく、笑顔で、素敵な空間づくりのお手伝いをできる限りしていきたい。



大学生活最後にやりたいことはなんですか?

私の答えはアルバイトです。

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