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【魂のいちばんおいしいところ】

魂のいちばんおいしいところ
谷川俊太郎 作

神様が大地と水と太陽をくれた
大地と水と太陽がりんごの木をくれた
りんごの木が真っ赤なりんごの実をくれた
そのりんごをあなたが私にくれた
やわらかいふたつのてのひらに包んで
まるで世界の初まりのような
朝の光といっしょに
何ひとつ言葉はなくとも
あなたは私に今日をくれた
失われることのない時をくれた
りんごを実らせた人々のほほえみと歌をくれた
もしかすると悲しみも
私たちの上にひろがる青空にひそむ
あのあてどないものに逆らって
そうしてあなたは自分でも気づかずに
あなたの魂のいちばんおいしいところを
私にくれた

2018年8月から、『教育について、科学的な見地からしっかりとした論文を書く。』という思いで教育論文に取り組んでいる。

まず一本目のテーマは「教師の心構え-在り方やり方論-」。

いまのところ、締め切りが近いのに、ただ書き連ねているだけで、まとまりがない。コピペはイヤだし、自分のこれまでの学級の実態からというようなものは、科学的とは言えない。ひとり相撲では説得力がない。何か相撲をとる相手が必要。そこで、いくつか候補を考えてみる。

○ プラシーボ効果、ピグマリオン効果、ゴーレム効果、チャルディニーの法則、ザイアンスの法則、メラビアンの法則など、心理学から。
○ 森信三、斎藤喜博、有田和正の実践から。
○ 観察者効果、引き寄せの法則など量子力学をもとに証明することから。
○ ロジャーズ、エリクソン、ソリューションフォーカスアプローチ、交流分析、ヴァーチューズ・プロジェクト、アドラーなどから。

それぞれに書かれている理論を検証してみると、どれも正しいのに、何かしっくりこない。学芸会の取組をしている最中でもあるためか、古代ギリシャの哲学者であるプラトンの代表作『メノン』の中の有名な一節が目につく。

「シビレエイは、自分自身がしびれているからこそ、他人もしびれさせることができる」

こうしたたとえは、相手の心に響く関わりを可能にするためには、まず、自らの心が躍動感にあふれている必要があることを教えてくれる。教師も、親も、日々、人と関わる仕事に従事している人にとって大切な視点ではないか。子供と夜道を歩いているとき、月や星の美しさに感動したり、子供の優しさに喜んだり。子供と過ごす時間の何気ない言葉、人や物との出会いに、私がどれだけ感動できるか、それがあるからこそ、子供たちが躍動し、成長していくのではないか。谷川俊太郎の詩を心から愛している、絵本を読み聞かせる中で、感極まって涙ぐむ、学芸会の取組の中で、純粋な気持ちで合唱する子供たちの姿に感動できる。こうした身近な日常へ、自分自身のアンテナを磨き続ける必要がある。

子供を変えようとする前に、まず教師が、親が、豊かな心で、子供たちと接する。そうした関わりが、子供たちに自然と豊かな感受性を身に付けさせる。

子供たちの未来に役立つかどうかわからない教科を教え込む、親にいい姿を見せるために、私のエゴで子供たちを舞台に上げる、そんなのは教育じゃない。子供たちに好かれたければ、子供たちを好きになること。私たちたちが本気で未来にしびれているからこそ、未来がワクワクしたものになっていくのかもしれない。子供たちは、日々、ものすごく純粋な本気でぶつかってくる。楽しいことには力を出し惜しみしない。本気で悪戯をする。ふざける。勉強する。協力する。歌う。笑う。怒る。泣く。

そうしてあなたは自分でも気づかずに
あなたの魂のいちばんおいしいところを
私にくれた

気づかないうちに、魂のいちばんおいしいところをあなたにあげる。だから、在り方やり方論は、書けないんだと気づいた。魂のいちばんおいしいところこそ、私自身だから。ひとりひとりに大切な魂があるのだから。教師の心構えに関する議論は、永遠に尽きることはない。だからこそ、『学び合い』や協同学習などの新しい教育論の流行にのって、自分自身の心を磨き続けることを疎かにしないでほしい。感動することを、子供に委ねて、授業をコントロールしようとすることのみに専念しないでほしい。ときには、教え込み、ときには伝え合う。教育には、そうした情熱と柔軟性が必要だ。子供たちは、本当に楽しんでいるのだろうか・・・と思って、聴いてみた。

「学芸会、楽しい?先生、みんなに無理やりやらせてないかな?」
「・・・うーーん、楽しいよ。学芸会は、普段の勉強をあんまりしなくていいし。楽しい」

子供は、正直だなと思った。自分にウソをついていない。辛ければ辛いと言葉で行動で態度で伝えてくる。大切なのは、それを見逃さず、受け止められているかっていうこと。大人になると、こうした正直さが見えなくなっていくんだなぁと思う。この子達、思っているより感受性豊かなに育ってる。そして、わたしも。いま、しびれてるんだと。迷うくらいなら、行動しよう。常に、視野を拡げよう。そして、なんでもおもしろがりたいと思う。楽しむ力が、楽しませる力につながるから。これが、わたしの在り方やり方論。

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