【13回目になる学力・学習状況調査、もういいんじゃないか。】
全国学力・学習状況調査、2007年からはじまり、震災のあった2011年は開催されなかったため、ちょうど2017年度が10回目になる。2020年は13回目、しかも新型コロナウィルスがある。国語と算数・数学だけだったが、2012年から3年毎に理科も追加された。今年も4月の第3火曜日は、延期になりました。
実は1956年、1961年、1962年にも行われたが、学校間の競争激化や教職員らの反対闘争によって、1964年、全員調査は中止された。1966年の旭川学テ事件が有名。当時、弁護士として関わったのは前札幌市市長上田文雄氏であった。
全国学力・学習状況調査は、子供の頃から競い合い、お互いに切磋琢磨する意識を涵養する。大学全入の時代を見越して、全国学力テストを実施する趣旨で始められた。実際には、裏の趣旨もあったようだ。というのは、日本教職員組合の強いところは学力が低いのでは?ということを調べたかったらしい。組合員の組織率や統率力が強いところでは、国語や算数の授業を行わずに、運動会や学芸会といった特別活動に時数を使い、学習を未習熟のまま義務教育を終えさせている。教育の機会均等や組合員の組織率を下げることがねらいでもあった。
10年を迎え、教育現場の意識はかなり変わってきたのではないか。特別活動についても、ねらいや評価を公表するようになったし、時数の管理も徹底されてきた。はじめた頃、全国平均との差にかなりの開きがあったが、最近では、5点以内に落ち着いている。保護者、地域の理解も得られてきて、教育内容に対する視線も緩やかになってきた。まだまだ成熟に時間は要するものの、当初の目的は達成されてきたように感じる。
ここで恐ろしいのは、この調査に60億円もの予算をかけていること。そして、この調査のために、過去問などを通して、各学校でテスト対策を講じていること。誤解されないように書くと、やるべき勉強をせずにテスト勉強をしているというよりは、国語、算数・数学は、設定されている時間よりも、復習に当てる余剰時数がある。その時間内を通して、復習という形でテスト問題を行っている。これまでは、その余剰時数すら勉強する時間に充てて、運動会や学芸会、お楽しみ会、学級会、一年生を迎える会、6年生を送る会などの特別活動や集会活動の準備に多く使われていたことを考えると、学習活動がかなり精選されてきた。カリキュラムマネジメントという考え方も出てきて、効率良く進められるようになってきた成果である。実際に、「復習」を多く行っている自治体は、成績が急激にアップしている。これは、学習は授業だけでは定着しない証拠になる。授業に加え、家庭学習や塾によるサポートがなければ、学習は完結し得ないのだ。それを学校で時間を作ってやっているわけだから、学習面の格差については良い。しかし、教育とは、ほんとに知識や技能、表現、それだけなんだろうか。
そして、この学力・学習状況調査は、民間のベネッセコーポレーションなどが集計を行っている。これはビックデータとして、悪用されることはないのだろうか。個人情報の流出、入札の不正は、ほんとにないのだろうか。さらに、毎年公表される都道府県のランキング。これは競争を激化させ、教職員の序列を招いていないか。
イギリスでも、統一テストは行われていたが、発達障碍の傾向が見られる子に対して、特にテストの成績が悪いからという理由で休ませたり、過度な負担をかけてしまうこと、教職員のテストへの対策がエスカレートするなどの弊害から、廃止にしている。テストの結果を公表しなくても、指導方法を改善する方法は別にあるのではないだろうか。13回目を迎えて、毎年60億円もかける意義と、最初のねらいを見直す時期に来ていると考える。もういいんじゃないか。
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