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『ロング・ロング・トレイル』全文公開(13) 第三章 アドベンチャー・ライフ (5/5)

2018年10月に出版した、木村東吉さんの著書『ロング・ロング・トレイル』を無料で全文公開します。


※前回の記事『ロング・ロング・トレイル』全文公開(12) 第三章 アドベンチャー・ライフ (4/5)はこちら


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コラム3 旅のワードローブ

 ここ数年は毎年、2月から3月に掛けてアメリカの国立公園を歩き回っている。
 その年によって違うが、50キロほどのトレイルランのレースに出ることや、国立公園内でキャンプをすることもある。期間は約1ヶ月ほどで、こうなると持っていく荷物にかなりの制限が生まれる。
 まずはキャンプ道具で一つのバッグとなる。2キロほどの小型軽量テント、寝袋、マット、椅子、クッキングストーブ、食器などでかなりの荷物になり、レースに出場する場合は、小型のハイドレーション・バッグ(給水補給ができるバッグ)、ウォーターボトル、レース用のウエアなどが加わる。このような装備を持って行くので、持参するウエア類は厳選したモノしか持っていけない。
 だいたいパンツは2枚。1枚はコンバーチブル・パンツといって、膝上あたりにジッパーが付いており、そのジッパーを外せば短パンになる。日中は短パンにして走り回り、寒い地方に行く時には、下にタイツを履くか、タイツの上から長パン仕様にして、防寒対策を図る。
それに普段はジーンズを愛用しているので、ジーンズも1枚は持って行く。
 この2枚のパンツに加え、ランニング&スイミングに使える短パンがあれば、ほぼ、どのような地域、天候にも対応できる。ということで、ボトムスは3枚だ。
 トップスは、まずは薄手のダウンジャケットが1枚。畳むとリンゴ2個ほどの大きさになるタイプのダウンで、いつも持ち歩いている。やはり畳むとリンゴ3個ほどの大きさになる防水ジャケットを持って行き、雨や雪が降ると、そのジャケット1枚で対応する。
 あとは薄手のベストが1枚。
 下着は乾きの早い化繊の下着が4枚ほど。それとメリノウールの下着も3枚ほど。速乾性は化繊の下着が優れているが、濡れても寒く感じないのと、汗をかいても匂いが少ないという理由から、メリノウールの下着も手放せない。
 それらのトップスに、フランネルのシャツを2枚ほど。そしてマフラーを2枚。
 行き先やルートにもよるが、4、5日か、長い時で1週間に一回の割合でコインランドリーに行く。ちなみにコインランドリーというのは和製英語なので通じない。アメリカでは「laundromat」と呼ばれている。
 もちろんウエア類はすべてコインランドリーで洗って、そのまま乾燥機で乾かすことができるアイテムがマストの条件で、メリノウールもダウンジャケットも丸洗いだ。
 アイロンを掛ける必要のあるアイテムは絶対に持って行かないし、正装が必要とされるレストランなどはほとんど行かない。例えば、ちょっと気取ったレストランでも、ジーンズにフランネルのシャツを着てマフラーなどをしていれば、ほぼ違和感なく食事が取れる。
 つまり短パン+Tシャツという格好だけを避ければいいのだ。
 ボトムスは長いパンツ、トップスは襟のあるシャツ。これでほとんどのレストランで入場を断られることはないし、それが通用しないような高級レストランには行かない。
 ということで、下着以外はほぼ着の身着のまま。下着も1週間分持って行けば、洗濯しながらなんとか1ヶ月を過ごせるというワケである。
 そのくせいつも帰国してから、我がクローゼットを見て、自分の持っている服の多さにため息をつくのである。


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木村東吉(きむら・とうきち)
1958年11月16日生まれ。大阪府出身。ファッションモデル、エッセイスト。10代の頃からモデル活動をはじめ、上京後は『ポパイ』『メンズクラブ』の表紙を飾るなど活躍。30代よりアウトドアに活動の場を広げ、世界各地でアドベンチャーレースに参加。その経験を活かし、各関連企業のアドバイザーを務め、関連書籍も多数刊行。オートキャンプブームの火付け役となる。
「走る・歩く・旅する」ことをライフワークとしている。現在は河口湖を拠点に執筆・取材、キャンプ・トレッキング・カヤックの指導、講演を行っているほか、「5LAKES&MT」ブランドを展開しアウトドア関連の商品開発を手掛けるなど、幅広く活動している。


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