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シャアは極左:4(最終回)

前回の続き。 「こんなもここらで男にならんと、もう舞台は回ってこんど」手駒がなくなったシャア、自ら動く。 ザビ家への復讐から、理想的な社会への変革を目指した青年期を経て、政治的、平和的手段による人類の改革は不可能であると悟ったシャア。彼の導き出した、たった一つのシンプルな結論とは…… 「小惑星を地球に落として人類が地球に住めなくなればの、みーんな宇宙の民となって新たな可能性が開けるんじゃけえ。地球も人類によって汚染される事がのうなってWin Winじゃろうが!」 だっ

    • シャアは極左:3

      前回の続き。 「ニュータイプに指導者は二人もいりゃせんのじゃ」シャア扮するクワトロ・バジーナ、出自を偽り、ニュータイプの革新の為、エウーゴを利用して大いに暗躍する。…となれば良かった訳だけど、現実はそう甘くないんだな。 そもそも、シャアの標榜するジオニズムとは、ニュータイプによる人類の革新を目指す思想だ。これは、新しい価値観・適応力を身につけた人間が人類をより良く導き、地球圏に意識も肉体も囚われた人々を解放(=地球から宇宙への移動)することで、地球の汚染化を阻止する、とい

      • シャアは極左:2

        前回の続き。 「ウチがミス・ジオンになるんね」そもそも、機動戦士ガンダムは、父を暗殺されたシャアの復讐劇なんだ。 本名はキャスバル・レム・ダイクン。掃除機みたいな強そうな名前だ。 キャスバルはまずは偽の戸籍、つまりシャア・アズナブルに成りすまして、士官学校に入学する。そこでザビ家4男のガルマに近づき、親友となってザビ家の知己を得る。他人になりすまして権力者と仲良くなる?果たしてそんな事が?まあアニメだからね。何でもありだ。 この時代、ジオン公国は「アヤ付けられたら、か

        • シャアは極左:1

          「そがな昔の事、誰が知るかい」政治思想の世界において「赤」は社会主義・共産主義の色と相場が決まっている。 中国も、ソ連も、ベトナムも国旗の色は赤。日本共産党の機関誌は「赤旗」。フランス革命で「赤旗」がシンボルとして使用された事が由来だと言われており、その意味は、肌の色を問わず全人類の血は赤である、という事。反共組織であったナチスにも赤色が使われていたけれども、彼らも国家社会主義という名の社会主義なんだね。 さて、赤といえば。そうだね。赤い彗星、シャア・アズナブルだね。

        シャアは極左:4(最終回)

          レントンと、レントンに憧れた愚かな少年の20年。

           4月8日の公開から3週間。  3回も観てしまった。別に複雑なストーリーじゃない。伏線らしきものもない。1度見れば充分だ。それでも何度も足を運んでしまう。理由は色々あるが、ただ単に「思い入れ」という言葉で片づけてしまってもいいだろう。 「T2 トレインスポッティング」  1996年に公開されたトレインスポッティングの続編。20年後のストーリーだ。確かこの映画を初めて見たのは18歳だったから、おれの中でもちょうど20年。25歳だった主人公レントンは46歳になっていた。

          レントンと、レントンに憧れた愚かな少年の20年。

          続・フットボールにおけるダービーとは何か。

           余談。  トレインスポッティングの続編、20年後を描いた「T2」が公開された。現代のスコットランドだ。あのどん底だった20年前から何が変わったか。  この国は、EU加盟によって景気が上向いていた。街には最新型の路面電車が走り、垢抜けてきれいになった。  そしてパブにはユニオンジャックの旗が飾られている。つまり、EUであるイギリスを受け入れている(その後、離脱が決議されたが……)。レントンはそのパブでおどけて「カトリックは全滅した」と歌い、喝采を受ける。  もちろんレ

          続・フットボールにおけるダービーとは何か。

          フットボールにおけるダービーとは何か。

           フットボールは紛れもなくスポーツという文化だ。けれどもフットボールの応援もまた、スポーツではないものの、一つの文化であると、おれは思っている。スポーツではないと書いたのは、それが競技ではないからだ。 「フットボールの応援が文化である」という考え方は、日本ではそれほど根付いていない。そもそもフットボールとは別物だという認識もない。文化というのは、つまるところ歴史の積み重ねだ。だから、少なくとも応援は文化であると自称する者なら、その歴史を知っておく必要がある。できれば自分の肌

          フットボールにおけるダービーとは何か。

          He ain't got nothing at all.

           かのアンディ・ウォーホルが見出したことで伝説となったNYのロックバンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド。退廃的なサウンドとタブーに切り込む歌詞は、後世に大きな影響を残した。  基本的にヴェルヴェッツはフロントマンであるルー・リードのバンドであったと言える。それに対抗できる個性と感性の持ち主がベーシストでヴィオラ演奏者のジョン・ケイル。二人の激しい個性のぶつかり合いが、初期のヴェルヴェッツのサウンドを支えていたと言っても過言ではない。ウォーホルと、ウォーホルが連れてきた

          He ain't got nothing at all.