続・フットボールにおけるダービーとは何か。
余談。
トレインスポッティングの続編、20年後を描いた「T2」が公開された。現代のスコットランドだ。あのどん底だった20年前から何が変わったか。
この国は、EU加盟によって景気が上向いていた。街には最新型の路面電車が走り、垢抜けてきれいになった。
そしてパブにはユニオンジャックの旗が飾られている。つまり、EUであるイギリスを受け入れている(その後、離脱が決議されたが……)。レントンはそのパブでおどけて「カトリックは全滅した」と歌い、喝采を受ける。
もちろんレントンの心根は変わっていない。そんな「宗教的に敵対する奴ら」から財布を掻っ払い、逃走する。そもそもパブに侵入したのは、それが目的だった。やっぱり奴は、奴らは変わっていなかった。けれども、それは同時に彼らが時代から取り残された事も示唆していたのだ。
好景気に沸くスコットランドで、相変わらず無職の40代の男達。彼らは氷河期にあって碌な職業訓練も受けられず、何の社会スキルもないまま燻っている。レントンも一度は麻薬取引で成功を収め国外に脱出するが、そんなあぶく銭は消え、この街に出戻ってきてしまった。
カトリックがルーツとなっている地元エディンバラのサッカークラブ、ハイバーニアンの勝ち試合をビデオで何度も見るレントン達を、ブルガリアから来た女の子が「過去の栄光ばかり」となじる。「時代は未来に進んでいるのよ」と。
実は、先述したダービーマッチもかつてのような熱狂的な対立構造は崩れつつあるらしい。レントン達のように取り残された大人がクダを巻いているにすぎない状況であるということも、現代のダービーマッチの側面であるのは間違いないようだ。
おれは、だから自分のダービー観は「少し時代遅れかもしれない」という事は自覚している。レントンと同じように、青春を引き摺って取り残されてしまったのかもしれない。実際、あの頃の海外サポーターたちの熱狂に憧れつつ「もういい歳だろ?」と冷静になる瞬間はある。
しかし、レントンはこうも言う。「俺たちは麻薬中毒だったけれど、お前らはどうだ?FacebookやTwitter、Instagram、結局、みんな何かの中毒だろう?」と。
時代は変わる。変化に対応する。大事なことだ。けれども、根っこの部分は変わらないんじゃないか。おれは、たとえ時代遅れだと言われようが、実現不可能だろうが、本気のダービーはどこかで夢見ている。それが正しいことだとは思わない。ただ、中毒性があって、熱狂ができるもの。それを求めているだけだ。
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