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名女優

私は徹底して「遊び相手」を演じた。

自分は「遊び相手」であって「彼女」じゃないから、あれはしない、これもしない、いや、したくてもしちゃダメだと思って避けていた。

なのに彼は、他の子が「俺の為にしてくれる」と私が”あえて”しないことを自慢げに話す。

だから彼はその子たちがお気に入りなんだろう。


・・・だけど、私も、その子たちも、けして本命にはなれない。

それは彼の中で私たちはどうあがいても「遊び相手」だからだ。
最初から結果は決まっている。

彼の為に「”通常”の片想い相手」にする様なことをコツコツしても、彼が「遊び相手」中から「本命」を選ぶことは、けしてない。

ただ、お気に入り度が上がるだけだ。

中にはそれをわかってしている子もいるだろう。
彼はそんな彼女たちの行動をわかって促す。

そりゃそうだろう。
どんなにされても自分に利はあっても害はないのだから。

私にあえて色んな子の話をするのも、媚びてこない私に対して「お前はいいの?」と嫉妬心を煽り、競わせようとしているんだろうと思い一切その手には乗らなかった。

もし、私がバカなフリをして乗っておけば、何か違った?・・・なんて思うのはただの願望であり、他の子と同様に私も、何も違わない。


「遊び相手」にもプライドはある、

私には、ある。

無駄なことはしたくない、だとかケチっているわけではけしてない。
たとえ自分の時間やお金を割いて尽くそうとも、好きな人にならちっとも惜しくはない。

ただ心の消費はどうだろう?

彼のことを考え、彼の為にと込めた想いはどうなるんだろう。
消費するばかりで補充されない心がカラカラになって、多くの子が彼の前から姿を消した。

見返りを求めるのは”愛”ではない

・・・なんていうけれど、これはただの綺麗事に過ぎない。

自分が相手を想ってした行動で相手の心が動き、それが行動になるのであればそれは価値のある行動だけれど、そうでなければ、ただの世話焼きな母親か、それこそ都合の良い女だ。

見返り、という言葉に純粋さがないから悪く捉えられがちなだけで、求めることは罪ではない筈。

尽くすのが趣味か計算の行動でないのであれば、いつか補充されることを望み求めるからこそ、心を消費しながらあれやこれやとするのでは?
少しでも良く思われたい、好かれたい、愛されたい・・・そう思うからこそ、「普通」の関係の”フリ”をするのでは?


だけど、私は何もしなかった。

私は、どう扱われているかわかっていても彼を自分が好きだった、だから傍に居れるなら、たとえ「普通」の関係でなくてもいい、そう思った。

だから余計なことをしない。彼が煩わしさを感じない「遊び相手」を徹底して”演じる”。

それが私のプライドだった。

それが私の最大級の愛だった。

それにきっと彼は気づかない。
私が離れた、この先も。

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