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9歳のボクが考えた不思議な話【いろはの女】

いろはの女は、『ゐ』の形をした傷がほっぺにあって、いつも「いろはにほへと」を口ずさんでいる。
いろはの女には困ったところがある。
それは、気に入った子どもに触っていろはの女にしてしまう。
もし、なりたくなかったら、「いろはにほへと」を反対から言うと、いろはの女のバランスが崩れて、ならずに済む。


【いろはの女】

ある日、本好きの男の子が図書館で『いろはの女』というタイトルの本を見つけた。

「ん?」

男の子はその本が気になって借りてみた。

家に帰って早速その本を2階の部屋で読むことにした。

「こりゃあ、面白いや」

男の子は本を40分ほど夢中になって読んだ。

さすがに読み疲れて、男の子はポーっとすることにした。

すると、どこからか女の人が「いろはにほへと」を口ずさむのが聞こえてきた。

「いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ つねならむ うゐのおくやま けふこゑて あさきゆめみし えひもせす」

男の子はそれを聞いて、さっき読んだ本の話を思い出して、こう思った。

(この「いろはにほへと」を口ずさんいるのは、いろはの女だったりして?)

そしてちょっと不安になったとき、妹が「夜ご飯だよ」と言いながら部屋に入ってきた。

「あっ、分かった」

男の子は返事をして、妹と一緒にリビングに向かった。

もしその時、男の子が後ろを振り返っていたら大騒ぎになってただろう。

なぜなら、窓の外から、ほっぺに『ゐ』の形をした傷がある女の人がこっちを見て、ニタッと笑ってたからだ。

この部屋は2階なのに・・・

次の日、男の子は昨日の「いろはにほへと」が聞こえたことはあまり気にせず、一人で公園のブランコで遊んでいた。

キーコキーコ、キーコキーコ

ブランコに飽きて、男の子は家に帰ることにした。

男の子が家に帰っていると、「いろはにほへと」を口ずさむ女の人の声がまた聞こえてきた。

その声は間違なく、昨日2階で聞いた女の人の声だった。

男の子は勢いよく後ろをバッと振り向いた。

そこには・・・

ほっぺに『ゐ』の傷がある女の人がいた。

それは、昨日借りた本に出てきた『いろはの女』、そのまんまだった。

それを見て、男の子は驚きと恐ろしさが混ざったような感情になった。

(ヤバイ! いろはの女だ!)

と、思って男の子は咄嗟に走って逃げた。

すると、いろはの女が追いかけてきた。

いろはの女は異常に足が速くて、危うく追いつかれそうになった。

男の子は必死になって逃げながら、いろはの女から助かる方法を頭の中で探した。

本の内容と同じ場面に遭遇していることに気づいて、必死に本の内容をを思い出そうとした。

(どうしよ、どうしよ! たしか、いろはの女は気に入った子どもを
 触って、いろはの女にしてしまう。
 それで、「いろはにほへと」を反対から言うと
 いろはの女のバランスがくずれる。
 あっ、それだ!)

「すせもひえ ゆみめしきさあ てゑこふけ? まやくおのゐう むらなねつ それたよわか をるぬ?りち とへほにはろい・・?」

言い終えて後ろを見ると、なぜかまだいろはの女が近づいてきている。

しかも、すぐ後ろにいる。

(えっ? なんで?!
 「いろはにほへと」は、ちゃんと反対から言ったのに・・・)

もう一度「いろはにほへと」を反対から叫んだ。

「すせもひえ しみめゆきさあ てゑこふけ まやくおのゐう むらなねつ
 それたよかわ をるぬりち とへほにはろい!」

言い終えたときには、男の子の肩にいろはの女の指が触れそうになっていた。

でも、いろはの女はそれ以上動かなかった。

それどころか、砂のようになって風とともにいずこかへ飛んで行ってしまった。

男の子はいろはの女が砂になって吹き飛んでも、これまで自分に起こったことが信じられなくてしばらく呆然と突っ立っていた。

が、その時5時のチャイムがなって、男の子は我に返った。

そして、「あっ、夕飯に遅れる!」と言って、走り出した。

本の中では、主人公の子はいろはの女にされてしっまたけど、この男の子はいろはの女にならずに済んで良かった。


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