マガジンのカバー画像

小説

17
モンキーパンツの書く拙い小説です。
運営しているクリエイター

#オールカテゴリ部門

【2分小説】弟が落武者を拾ってきた

【2分小説】弟が落武者を拾ってきた

ある日、弟が落武者を拾ってきた。

絵に描いたように
頭のてっぺんがツルツルで
サイドだけ長髪頭、そしてわかりやすいぐらいにボロボロの鎧を身に付けていた。

「あんた、なにそれ?」

「昨日の夜、裏山に雷落ちたでしょ?
だから、見に行ったら土の中で顔だけ出てて可哀想だから拾ってきた」

「変なもの拾ってくるんじゃない!
返してきなさい!」

私が弟に怒鳴ると
落武者は、ビクビクと内股で足を震わせて

もっとみる
【1分小説】死神さんとワルツを

【1分小説】死神さんとワルツを

真夜中、静まり返った病院の廊下を僕は歩いていた。

暗がりの中で、誰かが踊っていた。

窓から射し込む月明かりに照らされて顔が見える。

やつれきって肉がほとんどなく肌も真っ白、生きていないかと思えるような女性だった。

それでも踊っている姿がとても美しくて僕は見惚れてしまった。

「あら?こんな時間に可愛い坊や。
あなたも眠れないの?」

「うん…。

少しお姉さんの躍りを見ててもいい?」

もっとみる
【1分小説】雨女ちゃんの涙

【1分小説】雨女ちゃんの涙

もうずっと雨が降り続いている。

雨が降り過ぎて
世界のほとんどが沈んで海になってしまった。

少し前までは山だった所も
今では小さな島になった。

私は、そんな小さな島にひとりぼっちで泣いていた。

降り続く雨の原因は、わかっていた。

私が雨女のせいだ。
泣けば泣くほど雨が降る。

もうずっと泣いている。
何が悲しいのかは忘れてしまった。
涙の理由なんてなんだっていい。
世界がどうなろうが関係

もっとみる
【2分小説】私は今日もきっと

【2分小説】私は今日もきっと

明日、世界が悲しみに覆われる。

地獄の大魔王と悪魔サタンが仲良くなり

すべての国で悲しみの曲が流れ

人々は、ずぶ濡れになるほど涙を流す。

…あーあ
そんなふうになってくれればいいなぁ。

でも、
私が死んでも明日は、
きっといつも通りに回るんだろうな。

この世界は私がいなくなっても
何一つ変わらないんだろう。

明日も
郵便のお兄さんは、眠そうな顔で自転車に乗ってるだろうし

左隣の家の

もっとみる
【1分小説】きみのもとへ

【1分小説】きみのもとへ

彼はもう、どれくらいここにいるのか覚えていなかった。

覚えているのは、彼には
とても大切な人がいるということだけだった。

その大切な人が誰なのかもわかっていないけど、ずっと呼ばれているような気がしていた。

そして、彼自身も
その人に会いたかった。

でも、彼には足が無かった。

「神様、僕に走れる足をください」

彼は、天に向かってお願いをした。

すると、神様が
大根の足を授けた。

彼は

もっとみる
【40秒小説】ふたりだけのかくれんぼ

【40秒小説】ふたりだけのかくれんぼ

「もういいかい?」

ミヨちゃんを見つけたら
ヘビのおもちゃで驚かせてやろう。

「まーだだよ」

タケトくんに見つかったら
おままごとで遊んでもらおう。

今回のタケトくんの役は
ドングリをステーキだと思って
一生懸命食べるパパを
不憫な目で見るママの隣で
エサを忘れられてお腹を空かしている
ワンワンになってもらおう。

「もういいかい?」

ミヨちゃんを見つけたら
この前ドッジボールでミヨちゃ

もっとみる