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アンケート分析で紐解く、若手社員のレジリエンス(回復力)を高めるコツ。キーワードは「他者との関わり」

少し前ですが、「コロナ下においてテレワークが広がったことで、若手社員が他世代と比べて強くストレスを感じている」という記事が日経新聞で紹介されていました。ストレスの原因としては、「キャリアへの配慮(がなされていないと感じる)」「役割・責任の理解(ができないと感じる)」がトップ2だったそうです。

■コロナ下のテレワーク、若手社員のストレス増 民間調査、役割理解に不安か(日本経済新聞 2020年11月20日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO66428790Z11C20A1TJ1000/?unlock=1

この一年間を振り返ると、モニカのお客様においても、若手社員のストレスケアやレジリエンス向上に向けたご相談や、もっとストレートに「びっくり離職やびっくり休職をどうやったら予防できるの?」といったご相談が増えてきたと感じています。

そこで今回は、そんなお客様のご相談に応じる中で実施したアンケートのデータを使って、若手(に限らないかもしれませんが)社員のレジリエンスを高める職場作りのポイントについて考えてみたいと思います。

結論から言うと、そのポイントとは、上司を始めとした他者との”関わり”に注目すること。そして、(当たり前のような話ですが)"適切な関わり方"をしてあげることの2点です。以下で詳しく見ていきましょう。

1.他者との"関わり"の効果

まずはこちらの図から。かなり見づらいとは思いますが、これは入社からおよそ10か月が経過した若手社員100名弱にアンケートを取り、その回答結果をプロットした図です。縦軸は若手社員の性格特性を、横軸はレジリエンス(回復力)の高低を表しています。

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高レジリエンスの若手社員(=図の左側)は性格特性として「自己解決型」と「他者共感型」とのバランスが取れている(=縦軸において中心に寄っている)傾向があったりと、いろいろと気づきのある図なのですが、ここで注目していただきたいのが、上司との関わりの「量」。

実はこのアンケート、モニカのレジリエンス研修を受講していただいてから3か月が経過した時点で実施しているのですが、高レジリエンスの人ほど、「研修後、上司とその研修内容について話し合う機会がよくあった」と答えている傾向があったのです。(当該質問について、5段階評価で5または4と回答した人をGOOD、3以下と回答した人をBADと表記しています。)

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人材開発の世界では、研修で学んだことを現場で活かすことを「研修転移」と呼んだりしますが、この研修転移を実現するためには、現場の上司が本人と話をすることで、その手助けをしてあげることがとても重要であるということがわかります。

2.社員のレジリエンスを高める”関わり方”とは?

と、ここまでで話をやめてもよさそうですが、これだけだと「モニカのレジリエンス研修を受講していただいて、その後に現場の上司が受講した社員ときちんと話ましょう」という結論になってしまいそうなので(それはそれで弊社としては嬉しい結論)、普段から現場で若手社員とどのように関わりを持てば、若手社員のレジリエンスを高めることにつながるのか、そのポイントについても考えてみたいと思います。

図表はこちら。相変わらず見づらいですが、こちらも入社10か月目の若手社員100名弱に対するアンケートの分析結果です。

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一番右の列にあたる「R17」がレジリエンスの総合指標(目的変数)です。この図表では、総合指標と相関係数が高い(おおむね0.4以上)ものをピックアップしています。ここから、レジリエンスが高い人は、以下の特徴を持っていることがわかります。

①働く目的を自分なりに持てていて(日経新聞の記事とも通じますね)、
②失敗を学びの機会と考えていて過度に恐れず、
③感情に振り回されすぎることがなく、
④自分なりの気分転換の手段を持てており、
⓹困っても、周囲に助けを求めることができている、

これを若手社員と関わる人(上司や同僚など)の立場から見ると、例えば以下のような"関わり方"が考えられます。

①働く目的を持てるようなサポート、例えばキャリア支援につながるような対話の機会を増やすこと
②良い失敗と、してはいけない失敗をきちんと区別したうえで、学習につながる良い失敗はむしろ奨励する空気を作ること。失敗から学んだ経験を積極的に共有すること
③困難な状況におかれたときは、感情をコントロールすることができるように働きかけること。話を傾聴したり、時には愚痴を聞いてあげて気持ちに寄り添ってあげること
④気分転換の手段について自らの経験に基づいてアドバイスしてあげること(あくまで本人が乗り気であればですが、一緒に何かするのもありかもしれません)
⓹職場内で「困ったときには助けを求める姿勢」を奨励するとともに、自らも「困ったことがあったらいつでも相談してね」と声をかけてあげること

上記のようなポイントを押さえた"関わり方"を実践する場としては、たとえば1on1ミーティングやメンター制度のような仕組みが職場にあれば、そういった場を活用することで、上司や先輩が若手社員をサポートする機会を作ることができるでしょう。

またそういった場がなくとも、また上司や先輩に限らず、同僚や部下の立場からであっても実践できることとしては、とにかく折に触れて社員同士が声をかけ合う、ということです。そうすることで、上司・先輩という「点」に留まらない「面」としてのサポートができるようになります。

これらの積み重ねが、やがて社員一人ひとりのレジリエンスを高めることにつながることでしょう。

3.まとめ

以上をまとめると、こんな感じになります。

若手社員のレジリエンスを高める職場とは、たとえばOff-JTで学んだことを現場で実践できるように、上司との適切なコミュニケーションが成立している(=関わりを持てている)職場であること。

そしてレジリエンスを高める、適切な"関わり方"として押さえるべきポイントは以下の5つでした。

①働く目的を自分なりに持てるよう配慮する
②失敗を学びの機会と考えることができるよう配慮する
③感情に振り回されすぎないように心を整えられるよう配慮する
④自分なりの気分転換の手段を持てるように配慮する
⓹困っても、周囲に助けを求めることができるように配慮する

ただでさえ、私たちの仕事を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。さらに新型コロナウイルス感染症の流行によって、ストレスフルなことも多い今日この頃ですが、レジリエンスは仕事をする上でも、そしてもちろん生きていく上でも土台となるものです。

まずは同じ職場で働く仲間同士がお互いを支えあうことで、困難な状況においても社員が折れてしまうことのない、「働き方改革」を実現していきたいですね。

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