見出し画像

ラベンダー芳香浴と日下三蔵編『皆川博子随筆精華Ⅲ 書物の森の思い出』

 11月に入ってから暖かい日が続き、前の日曜なんてもう生暖かさが気味悪いぐらいでしたが、今日の雨で一気に季節が進むそうで、実際朝から冷えてきているのを感じます。
 エアコンのない仕事部屋、冬になるともっぱら石油ストーブが活躍するわけですが、ストーブの魅力は天板の上でお湯を沸かせることでして、ホーローのケトルに直接乾燥ハーブを突っ込むと雑な芳香浴の一丁上がり。今はラベンダーの葉を使用中です。
 なんちゃっていねい生活ならではの、冬の楽しみなのですよ。

 ラベンダーの香りは優雅で強く麗しく。
 まるで皆川博子先生の文章のようです。というわけで、本日のご紹介は先般発売になった『皆川博子随筆精華Ⅲ 書物の森の思い出』です。日下三蔵さんが編者を務めておられる本シリーズも三冊目、今回は幼少期の生活と読書の記憶に始まり、歌舞伎観劇記や生活記録その他諸々多彩な随筆が収めれています。 

 精華とはよく言ったもので、皆川先生の紡ぐ言葉は一つ一つが花のようです。
 小説での研ぎ澄まされた文章は言わずもがな、本書に採られたような日常の断片を、ごくシンプルに、装飾なく書いたものであっても、リズムが心地よい。
 先生には一度お目にかかったことがあるのですが、まるで白い妖精のような、天使のような方だと思ったものでした。
 おかわいらしい。
 おうつくしい。
 妖精や天使の言葉が花であっても何の不思議もありません。もっとも、この花は時に猛毒を含むのですけど。でも、毒花もまた美しいものです。皆川作品のゑひに酔いしれるだけ酔いしれて、そのまま殉ずるのも私にとっては夢のひとつなのかもしれません。

 皆川先生のことになると冷静さなんて吹っ飛んでしまうのが私の常なので、ご紹介の暑苦しさはどうぞご寛恕のほどを。寒くなってきたことだしね。 


この記事が参加している募集

#読書感想文

189,460件

「スキ」を押してくださったら人生で役立つ(かもしれない)賢人の名言が出ます。フォローでお勧め本、マガジン追加でお勧めのお菓子が出ます。シェアで明日のランチをご提案。サポート/記事購入でおみくじができます。