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その時には…ジャガイモ料理を忘れずに

Mに会ったのは、友人の誕生日パーティーだった。

外国人留学生と日本人がだいたい半々ぐらいで、50から60人ぐらいだっただろうか。それともそれ以上だったか。
留学生寮のホールで開催されたパーティーだった。
彼は留学生ではなく、某大手メーカーでインターンをしていたが、また別の外国人の集まりでその友人が知り合って、他の仲間と一緒に招待したのだ。
そのパーティーではMとはほとんど話さなかったが、友人がよく集まりに呼んでいたので、その後も何度となく顔を合わせていた。

スイスドイツ語圏出身で、2歳年下。大きな都市の出身ではないとのことで、具体的にどこの町(村)の出なのかは分からない。スイスの公式言語にはイタリア語も入っているものの、わたしには残念なことだったが、イタリア語はできなかった。3人兄弟の長男だったと記憶しているが、いや、もしかして、姉か妹もひとりいたかもしれない。弟ふたりは彼を訪ねて来日した時に会ったので確かだ。
今、写真を見ても、うん、ドイツ語圏、もしくは、南欧の人ではないという顔立ち。たとえてみると、リヴァー・フェニックスと清水アキラを足して、やや前者の雰囲気を多めでというところか?(リヴァー・フェニックスはWikipedia日本語版によると、ハンガリー系ユダヤ人/ロシア系ユダヤ人とある)。また、イメージ的にヴァンパイア風味もなきにしもあらず。知らない人からすると、微妙な説明ではあるが、基本的に悪くはないのだ。

彼の好きなものは、居酒屋とジャガイモとクラブだった(と思う)。
食事や飲みに行くと、ジャガイモ料理があるかどうかをいつも確認していた。そして、倹約家のイメージがあるスイス人らしく、あまり派手にお金を使いたくないタイプだった。クラブは……どのぐらい好きだったのか、そもそも好きだったのか?は、実のところは聞いたことがないので分からないが、おそらく地元にはなかっただろうから、東京の若者のシティライフの一環として滞在中は楽しんでいたのかもしれない。弟ふたりが来た際に、渋谷のスクランブル交差点に位置するスターバックスで合流して、1度だけ一緒に足を運んだことがあった。わたしに関して言えば、多くはないクラビング経験での感想としては、お気に入りのアーティストのコンサートライブに行く方が好きだと思った。ただ、それも社会経験としては、そういう機会が持てたので悪くはなかった。

友人は、彼女とMは友人だが、わたしは彼の友人ではないと言った。だから、まるでMがわたしの友人であるかのように他の人に言わないようにと釘を刺した。それは、わたしが彼と友人であると言えるほど親しくないということを言いたかったようだ。友人か知り合いか、はたまた、友人と知り合いの間か……わたしと彼の関係は定めなくてもよいが、その友人が呼ばれていない会に呼んでもらったことがあった。どうして彼女が呼ばれていなかったのか?おそらく、彼らがある事情で仲違いしていた時期だったか、もしくは、再来日した仲間の彼のウェルカムパーティだったので、その彼がその友人といざこざがあったかだったか……
その時に、「いつ、イタリアに行くの?」と聞かれたことを覚えている。

英検受験の話をしていたが、面接に通らなかったとメールをしたら、「I'm sorry…」と返信が来たこともあった。

当時、彼がどこに住んでいたのかは覚えていないのだが、高台に位置する西洋建築の会場で友人たちと演奏会を開催した際に、「時間の都合が合って、関心があったら聞きに来ない?」と誘ったことがあった。クラシック音楽が主体で、わたしはメンバーの友人のピアノ伴奏に合わせて朗読をしていた。正直言って、クラシックと朗読の演奏会はどうだろうか?とは思ったものの、わりと会場に近めの場所に住んでいたこともあったので声をかけてみたのだ。空いているので行けるよと、ひとりで足を運んでくれた。それだけでも、いい人だなぁ!と思ったが、帰り際に、同様にひとりで来ていたわたしの母に、「駅に行くなら、一緒に行きましょう」と自ら誘ってくれて、駅までの下り坂を同行してくれたことには驚きだった。多少の日本語は話したものの、それほどペラペラではなかった彼と、英語はほとんど話せなかった母。外国人の20代男子が、そんな親切な行動を自然にできることに感動したものだ。言葉の問題がない日本人の20代男子がそうしてくれたとしてもわたしには意外だったが、言葉の壁があるのでなおさらだ。これが、たとえば「彼女の母親」だったとしたら、そういうこともあり得るだろうと思えるが、まったくそういう関係ではなかったので、彼の親切な人柄をよくよく感じたのだ。

わたしが渡伊した際にも、彼は引き続き日本に滞在していたと思う。その後も日本にいたのだろうか。それとも、スイスに戻ったか、他の国に行っただろうか。

どうしているかなぁと懐かしく思う人のひとりだ。

スイスに帰国していたら、イタリアの隣国だから遊びにおいでと言いたい。



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Jacqueline
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