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土用丑の日は忘れがちだけれど...

土用丑の日と言えば「うなぎ」を食べる日として知られているものの、子どもの頃から家ではうなぎを食べる習慣がほぼなかったため、日本にいる時も「土用丑の日だからうなぎを食べよう!」とはならなかった。食べてみたら、けっして嫌いな味ではないと分かった。ただ、それほど気軽にいただけるお値段でもないのと、1度いただくと、わりと重く感じるところがあったので、1年に1度、いや、それ以上の期間が空いてもわたしにとってはほとんど問題ない食べ物かと。うなぎとお寿司だったら、間違いなくお寿司をリピートしてしまう。
ということで、うなぎ、ましてや、鰻重や鰻丼を食べた経験は両手、いや、片手?で数えることができるぐらいだと記憶するが、そのうちの2回は、20代に勤務した会社のひとつの社長のご相伴にあずかった。
そのため、うなぎの記憶というと、よくもわるくもこの「うなぎ社長」のことを思い出さずにはいられない。「うなぎ社長」とは、今、思い付いたばかりだが、彼はよく茶系のスーツを身に付けていたのと、もしかしたら、風貌もうなぎを思わせないでもないから。

「うなぎ社長」は九州男児だった。実は、新卒で入社した会社の社長も九州男児だった。それで、後に「うなぎ社長」も九州男児だと分かった時、あぁ……と(いうその思いの内容は想像にお任せ)。
その会社でも、新卒入社の会社でも、お茶汲み当番というものが課せられていた。異なっっていたのは、後者ではそれが女子新入社員だけに課せられていたこと(「社長も朝から男性がお茶出しに来る顔を見たくないでしょ?」という理由だそうだが……)。「うなぎ社長」のところは、ごく小さな会社だったので、男女に関わらず早く出勤した社員がお茶、または、コーヒーを淹れることになっていた。

ある日、お茶出しをした際に、「うなぎ社長」はわたしに対しての教育的指導のお言葉として「君ねぇ、たまには社内営業のひとつでもししてみたらどうなの?たとえば、こうしてお茶を出しながら『あら、社長の今日のネクタイ、素敵ですねぇ~。とてもお似合いですよ!』なんて。ホントにそう思っているかどうかは重要じゃないんだよ!そうすれば、僕も朝から気分が良くなって、『Jacqueline君はいいコだねぇ~、そのうち給料でも上げてあげようかねぇ』なんて思うだろ?まあ、たとえばだよ。ちょっと今、練習してみなさいよ。そういう社内営業で培われたスキルが、クライアント先でも役立つんだよ!」と宣われた。そして、即興寸劇的な「あ、社長、今日のネクタイ素敵ですねぇ~!あら、もしかして、床屋さんにも行かれました?今日はお髪もキマッテいますね~」という場面を繰り広げられることになる。そういう誉め言葉を、こう言いなさいと仕向けた社員から言われて本当に嬉しいのかどうか、わたし個人としては大いに疑問ではあるが、対外的な教育としては役立つのだろう。
しかし、わたしは自分が思ってもいないおべんちゃらは、言うのも言われるのも好まない性質なので、本当によいと感じること、誉めずにはいられないことに対して、誉めることにしている。結果として、わたしが誉める時には、より信憑性が感じられるかと思われる。
クライアントのある男性人事の方とお会いしていた際に、その方のネクタイが目に留まった。ドット柄なのかとよくよく見たら、なんとパンダ柄!!思わず「○○さんのネクタイ、よく見たらパンダ柄ですね~!とてもカワイイですね!」と発していた。その方は、印象的にはわりと生真面目で物静かなタイプだったので、「そうでしょ?カワイイでしょ?僕に似合っているよねぇ~」などとノリノリで返して来られるような感じではなかったものの、「ネクタイがカワイイ」(「カワイイネクタイをしている自分」→「カワイイ自分」と脳内変換されているかも?)と言われて、微かに嬉しそうな表情がチラリと見えた。気恥ずかしくなって、逆に気分を害することがなくてなにより。
「うなぎ社長」の教育の効果はそこそこあった。

イタリアでも、郷土料理としてうなぎを食べる地域(たとえば、パヴィアやナポリの方では、クリスマス料理としてうなぎを食べる慣習があったり、ガルダ湖周辺では養殖していて、郷土料理として提供する飲食店があるとネット記事やテレビで見聞きしたが)があるが、全国区ではないので、この辺りではめったにお目にかからない。
唯一、わたしがうなぎをイタリアで口にしたのは、中国人経営の日本食レストランのお寿司でだった。アナゴの代わりにうなぎなのだろうか?こちらの人で、好きな寿司ネタは「うなぎ」という人はほとんど聞かないものの、約1名、知り合いでそういう人がいる。彼は魚より肉派なので、生魚ネタよりも、うなぎのように調理されているものの方を好むのかと思われる。そして、面倒なことに、焼くと肉的風味のするマグロを好むものの、ツナ缶はあんまり……というグルメぶり。

ところで、土用丑の日には、うなぎだけではなくて、「う」の付く食べ物を食べてもよいと言われていることを、ここ数年、日本の方のところで知った。それならば、うなぎが入手できなくてもわたしも参加できそう!ただ、毎年、「土用丑の日」自体を忘れているのが問題で、たいてい終わった後にみなさんのレポートで知ることになる。そして、今年もそうだった。。

しかし、幸運なことに、偶然にも「う」の付く梅干しを使った料理を食べていた!それが、わたしの今年の土用丑の日。


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