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八月(August,Francis Ledwidge)私訳
八月
日の始まりの薄暗がりにやつてくる
刈り入れの歌の黄に重なる光の白さ
露に濡れた虹踏みしめる
その美しさ力強さ
目蓋をもたぬ真昼の瞳が
刈られた小麦を踏む足を焼き
日がな一日、その鳶色へ口づけるに相応しい
落穂に埋もれるコオロギの頭上
積み藁の列の中にゐる
五月の青と十一月の灰白
色違いの瞳を伏せた時そのひととわかる
錆びた大鎌を下ろし、呼ぶ姿を
赤壁の納屋から見て
兵士の墓(A Soldier's Grave,Francis Ledwidge)私訳
兵士の墓
さうして風なき真夜中、優しき腕は
ゆつくり彼を運び死への傾斜に降ろす
戦場の、死にゆく嘆きの、苦痛を訴える呼吸の
恐ろしき警報をもう二度と聞かぬやう
花のための柔き大地に
せめて安らかにとわれらは墓を掘る
やがて訪れた春がこの墓を愛らしく飾り
雲雀は巣を作り露で濡らすだらう
原文(A soldier's grave)
Then in the lull of midnight,